初めてを犯された身体の負担は小さいものではなかったが、それを上回る快感に面影は満たされていた。
(凄く……気持ち、良かった……女性の初めては痛いと聞いていたけど、そんなに酷くはなかったし…)
くたりと脱力した身体を雲海の様に白く柔らかな床に横たえ、面影はゆっくりと呼吸を整える。
三日月の神域の中で、此処は恐らく寝所に当たる場所なのだろうけど、周囲は霞で覆われた様にぼんやりと輪郭がはっきりとしない。
目を凝らしてよく見ると、まるで薄布を通した様に遥か彼方に花々が咲き乱れている景色が見える。
「ん……」
ゆっくりと身体を動かして横臥位を取ると、そこで下半身の重怠い感覚が襲ってきた。
原因は……言うまでもないだろう。
「…………」
全ての女性が愛しい男と契りを交わした時、今自分が感じている感覚を経験したのだろうか…とぼんやりと思いながらゆっくりと上体を起こす。
この程度の体動なら何ら問題なくこなせる様だ…と体感で理解したところで、徐に背後からするりとしなやかな二本の腕が伸び、彼…彼女の身体を拘束する。
「っ!?」
どきりと心臓が一際強く跳ねたが、すぐにそれらの持ち主について思い当たり、小さく息を吐き出しながら背後を振り仰ぐ。
「三日月……?」
「…とても好かったぞ、面影……」
あまりに刺激と快感が強過ぎて気を失う時もあるが、コトが済み、こうして密やかな語らいを愉しむのも面影は好きだった。
今もそういうひと時になるのだろうと思っていたのだが………
「ん、あ……っ?」
後ろから回されていた相手の両手が、ふっくらと豊かな面影の胸を覆う様に掴み、ぎゅうと力を込めてきた。
「んん…っ」
「だが、まだまだ食べ足りぬ……お前の全てを味わった訳ではないのでな…」
「ひう…っ!」
掴んだ双丘の頂に実っていた桃色の果実が三日月の指の間から覗く様に突出していたのを、彼が親指と人差し指の指の腹で挟み、くりくりくり…と捏ね回す。
小さい悲鳴を上げてぴくんと肩を跳ね上げ、面影は自らの両腕で相手の前腕を掴んだ。
「ああっ…ああっ……そんな…やめて…」
ゆっくりと首を横に振りながら切なげに訴えるも、身体は既に快楽に流されつつあるのか、相手の悪戯を止めようとしている腕には殆ど力が入っておらず、寧ろ『もっと』と訴えている様にも見える。
「ふふ……止めぬよ…」
そんな面影の反応を目敏く見抜いていた男が、くくっとくぐもった笑みを溢しながらその願いを拒絶した。
「お前の身体もこんなに感じているからな」
力も碌に込められていない面影の腕を振り切りながら、左はそのままに、右腕をするんと面影の下腹部の更に下へと伸ばしていき、くちゅっと先程まで貫いていた秘密の花園を乱し始めた。
快感を生み出していた場所には違いないが、何しろ男を受け入れたばかりの繊細な秘所である事は三日月も重々承知しているので、差し入れた指先達はあくまで優しく愛しむような動きだった。
「はぁ……あぁ…ん」
達したばかりだったが、再び敏感な花園を直接まさぐられた事により再びの快感の小波が身体の奥から湧き上がってきて、堪らず甘い声が漏れてしまう。
その上、雄の白濁液と自らの淫液が混ざった液体が秘扉から溢れだし、三日月の指に絡む度にくちゅくちゅと淫らな音を立ててきて、面影は快感と羞恥で更に顔を紅潮させた。
「や、やだ……そんな、指、動かしちゃ……っ」
何とか三日月の指遊びを止めようと思ったのか、それとも一度身体を引き離そうと思ったのか……
上半身を捻りながら面影は相手の腕から己のそれを離し、身体の動きに便乗して下ろしたその腕はそのまま慣性に従い、三日月の身体を押し戻そうとする形を取る。
しかし、やはり快感に痺れてしまっていた思考では自らの身体の位置感覚を把握するまでには至っていなかったのだろう。
「………っ、あ…」
その手が動いた先は位置的に自分達の腰下に当たり…完全に偶然ではあったのだが、三日月の男性自身に触れる事になったのである。
しかも、掌が男性の熱い楔に触れた事で反射的に手指が屈曲し、優しく相手を手の中に包み込んだ事を面影本人が認識したのは、そうなって数瞬後、肉棒の熱が掌へと伝わった後だった。
「え………っ」
「!………ふ」
自分が仕出かしてしまった大胆な行動に、面影が顔から火が出る程に真っ赤になった一方で、意外な形で相手からの『責め』を受けた三日月はその状況を楽しむ様に笑った。
(あ、あ………こ、れ…………三日月の…っ)
掌に感じる熱はとても熱く、感触もしっかりとした固さを返してきている事と、それを掴んだ際に感じた角度から、既に相手の雄が臨戦態勢になりつつあるのだという事が直に見なくても感じる事が出来た。
そしてそれを感じた途端、ばくばくと激しい動悸が胸の奥で打ち鳴らされ、同時にくらくらと眩暈がする。
(さっき達ったのに…あんなに私の奥に射精したのに………こんな…熱く……)
三日月の興奮を感じた事で、自身の身体もそれに反応する様に動き出す。
面影が掌に感じる触感から相手の今の状況をぼんやりと想像する中で、それを握ったまま、すり……すり……と熱楔を撫で摩り始めた。
熱い………けど…もっと……大きく……もっと……固く………
「ふふ………お前もまだまだ足りぬのだろう…? 一向にこれを手放そうとしないのだからなぁ……?」
「っ…!!」
耳元でそう囁かれた時に初めて、面影は自分が何を無意識化に感じ、何をしようとしているのかを認識したらしい。
びくっと身体を震わせ、愛撫の手を止めた若者は……それでも即座に手を相手から離す決断が出来なかったのは、おそらくは身体が抱く未練だったのだろう。
「ああ、よいよい……素直になれ…互いに気持ち良くなれば良かろう? ほら……」
そんな動揺する面影を宥める様に優しい声音で囁き、三日月は再びしなやかな指で女体の深部へと潜り込み、熱く柔らかく熟れた淫肉を可愛がり始めた。
ぐちゅ……ぐちゅ……っ……ちゅくっ……ぬちゅ………
「あ、あ、ああぁ~~~っ……!」
女の身体になった自分に触れるのは初めての筈なのに、どうしてこの色男はこんなにも弱い場所を的確に責めて来るのか……
(やだ……やだ………気持ち良くて、もうっ、オ〇ン〇ンのコトしか考えられない……っ)
そして己も処女を喪ったばかりなのにどうしてこんなに男性に対して貪欲になってしまっているのか……
その場凌ぎにしかならなくても、この手を相手の雄から離す事は出来る筈なのに……手が、肉体が、それを拒んで離す事を許してくれない、それどころか………
「ん………ああ、好い感じだ………もっと共に…な…?」
「はぁ、ああぁん……っ」
三日月から促され、それに逆らえずに面影の手はしっかりと相手の楔を握り、より成長を促す様に扱く速度を速めていった。
面影の淫液に塗れていた上に、刺激を与えられて新たに先端から溢れ出て来た先走りも交わり、それらが手指に絡んで動かす度にちゅくっちゅくっと粘った水音が響いてゆく。
それが、自らの秘部からも聞こえるはしたない音と合わさり、容赦なく面影の耳を犯した。
(…いやらしい音……頭、おかしくなりそう……っ………それに、三日月のオ〇ン〇ン、どんどん、大きく…固くなって………こんなの握ってたら……ほ、欲しく、なっちゃう……)
初めての時は確かに痛みが無い訳ではなかったし、自分も色々と一杯一杯でいつもの様に快感を追い掛ける事が出来なかった。
しかしその快感は確かにこの身の内に刻まれており、今も三日月から施されている悪戯によって確実に身体の深奥が疼きを覚え始めている。
指先がもたらす快感に対する悦びと……更に奥から這い出て来る雄への欲求……
それらは無情に面影の理性を灼き、本能に忠実な肉欲を露わにしてしまう。
「ん…んっ……はぁんっ……も…も、う……力、抜けて……」
がくがくがくと両膝が笑い、力が抜け、己の身体を支えきれなくなった面影が前のめりに崩れそうになったところを、即座に三日月が後ろから回していた手を腰に移動させてしっかりと支えた。
「大丈夫か? 面影………」
「はぁ………はぁ……っ……う、あ……」
支えられた身をゆっくりと相手側に向けながら、面影はより安心を得る様に両腕で男の首に抱きつくと、殆ど無意識の内に彼の唇を己のそれで塞ぎ強く吸い上げていた。
「ん…んんー…っ! はぁ、はふ…っ、ふぅうん…っ」
いつもの接吻とはまるで違う、噛み付き、呼吸を止めるかの様な激しい求めに応じながら、三日月はまだ余裕を見せつける様にその瞳に昏い悦びの光を宿した。
「よしよし………ここが好いのだろう?」
指を秘蜜の奥へと差し入れながらぐりっと捻る動きで濡れた肉壁を強く擦ると、預けられた面影の身体がびくっと限界まで反らされる。
それと同時に、内の肉壁が細かく痙攣しながら三日月の指に強請るように絡みついてきた。
「そら…可愛いおねだりで応えてきているぞ……そうか、嬉しいか……」
「ふ、う、ううぅ…っ!」
そんな男の言葉は殆ど耳に入らない様子で、切なげな呻き声を上げながら面影は右手を宙で泳がせながら、それを再び男の昂ぶりへと触れさせた。
もう、我慢出来ない……! 欲しい、欲しい、欲しい……!!
「お、ねがい……みかづきっ………もう、これ…ちょうだい…っ!」
きゅうと握り締めると、激しい熱と雄々しい固さが返ってくる。
それを感じるだけで、迎える時を予期した様にとくんと身体の奥から淫液が溢れ出てくるのが分かった。
「おや………限界か…?」
「う……っ……うぅ…っ」
言葉で応じるのも最早困難な状態らしく、目尻に涙液を溜めながらこくこくと何度も首を縦に振る面影の愛らしさに、更に雄が勢いを増すのを感じながら三日月も頷きで返した。
「あいわかった。とは言え、もう自身も支えられぬか……では、俺の上に乗るが良い」
「あ…っ」
その場で胡座をかくように座した三日月の上に、腕を引かれた面影が素直に対面で乗り上がり、両脚を大きく開いて男の胴に絡み付かせると、腰を浮かせて秘部に雄の先端を押し当てた。
「ふぁ……あ…?」
「……ふ」
そのまま腰を沈めて雄を受け入れるつもりが、何処がその入り口なのかが体感的に分からず、暫く面影は腰を浮かせたままに戸惑った様子で身体を揺らしていた。
そんな相手の初々しさに男は優しく微笑み、手を貸すべく己の昂りに手を添えて、そのまま正解の場所へと誘った。
「焦らずとも良い…俺がしかとその身に教えてやる。女の鞘口はそこではなく……此処だ」
ずぷ……っ
「ひあ…っ!」
面影の短い悲鳴にも構わず、三日月は相手の腰を押さえてそのまま下へと沈めていき、同時に己の腰を心持ち浮かせてより面影の下半身と強く密着させていった。
それにより、先端を埋めた肉棒は更に奥へと深く深く肉壺の内へと侵入を果たしていく。
初めての時にはそこの緊張を解すのに時間を掛けたが、今、二度目の接合では侵入直後こそ頑なさが残っていたが、奥を満たしていくに従って徐々に柔らかさを取り戻し、三日月の雄を柔軟に包み込んだ。
「おお、歓迎してくれるか…」
「あ、あ…三日月……みかづきい…っ」
「良い良い……お前が好い様に動け…そら」
くんっと軽く腰を上に突き上げ女体の芯を突いてやると、それが呼水になったのか、面影も甘い声を上げながら積極的に腰を揺らし始めた。
「ふぅ……んっ…あ、あっあっ…!」
上下左右に腰を揺らし、好いところを探す様に円を描く様にくねらせると、それに乗じて面影の上半身もより強く三日月のそれと密着し、擦れ合う。
(ああ……三日月の胸、こんなに逞しかったなんて……私の胸、潰れちゃう……)
男性の時にも胸を重ね合わせて快楽を貪った事はあったが、今の柔らかい胸に受けている刺激はあの時より遥かに強かった。
形の良い乳房をむにゅりと潰され、男性の筋肉の硬さをこういう形で知らされるとは……
その上互いの胸が動く度に、より大きく膨らんだ二つの乳首がくにくにと上へ下へと向きを変え、痺れる様な快感を絶えず生み出し、面影の脳髄を蕩けさせた。
「あぁっ……三日月……」
とろんとした水飴を思わせる様な濡れた甘い声で愛しい男の名を呼び、彼の肩口に顎を乗せて……
「……ふ……ふふ…」
喉を反らせながら、不意に面影の口から微かに笑い声が漏れ出した。
少しだけ場違いな声音に三日月も腰を止めて相手の顔を覗き込むと、確かに恍惚を混じらせつつ、相手ははっきりと喜色を浮かべていた。
快感に囚われていた意識の一部がその柵から逃れ、一時的に清明になった様に………
「どうした?」
自分が与える快感以外に面影の注意を向けさせる何かがあったのかと三日月が問うと、彼女となった者はぎゅうと男の身体により強く抱き着きながら耳元で答えた。
「…ん……女になって、少ししか…経ってないのに………ようやくお前のを、在るべき場所に……納められた気が、する………」
「!」
己が女性に変じた意義は、お前と交わり肉体の一部を受け入れる為……
この身体は他の誰のものでもなく、お前の為だけに許すもの………
そんな宣言にも似た発言を受けて、図らずも三日月は自らの欲望の制御を乱してしまい、より激しい暴走を許してしまった。
ぐぐぐ………っ
「あ、あ、あっ! そんなっ……まだ、おおき、く……っ」
「…っ……お前の、せいだろう……っ」
暴走は許したもののかろうじて暴発は防いだ三日月は、珍しく追い詰められた様な口調でそう返すと再び腰を動かし抽送を始めた。
「そうだ………俺が愛し、交わるのを許すのは……お前だけだ…」
「あーあぁ…っ……そこ、いいっ! あぁ、あぁ、いっぱい擦れて…好い……もっと…もっと……」
「よしよし……もっと気持ち良くなりたいのか?」
「んっ、うん……お、願い……もっと、よくしてぇ…あはぁ、ん…」
ぐちゅっぐちゅっと接合部から聞こえる淫音の中、面影は唯素直に快感を求めて三日月の耳元でそう訴えた。
在るべきものが身体の内に在る事で得られる安心感に加えて、相手の腰が揺れる度に押し寄せる極上の快楽に思うままに酔いしれる。
こんな快感、抗うなんて出来ない………
「そうかそうか……では、叶えてやらねばなぁ…」
愛しいお前の望む通りに、より甘美な快感を………
くち……っ…
「ひぁんっ!?」
突然、悲鳴と共に面影の身体が硬直し、揺れていた腰が止まる。
「あっ!……ひぁっ! そ、そこは、ちがっ…!」
後ろに身を捻り、下半身へと手を伸ばしながら必死に若者が訴えたが、三日月は抗議に構わず、相手の菊座に挿し入れた人差し指を内側で蠢かせていた。
くち…くちっ……つぷぷ……っ……ちゅぷ……
「あぁっ! あぁっ! だめっ、そんな…とこ…っ」
「なに、何も違いはしないぞ? 女体でも此処で悦びを得る事は出来るからなぁ……男の身体での快楽、覚えていよう?」
「っ……で、も…っ…」
「素直になれ……此処はもう、その気の様だぞ?」
三日月の言葉に偽りはなかった。
初めての侵入にも関わらず面影の秘穴はさして抵抗も見せる事はなく、恋人の指を受け入れると歓迎するかの様に包み込み、うねり、奥へと引入れようと蠢き始めていた。
「ん……あ…そんな……勝手に……」
身体の反応に一番驚いているのは他でもない面影本人だったが、よく考えると別に不思議な事ではなかった。
男の時に三日月から与えられていた快感の記憶を肉体が覚えているだけなのだ。
女特有の場所からもたらされる快感は初めてでも、今触れられている場所はそうではない。
性が変わっても、肉体は覚えているからこそ、素直に悦び歓迎しているのだ。
「ふぅあっ…! あっ…くぅっ…! だめ、こんな……こんなの…っ」
「っん……ふふ、もう達くか……早いな?」
女体の奥が激しく蠢き始め、きゅうきゅうと雄を強く締め上げ始めた事で、その絶頂が近づいている事を察した三日月が軽く揶揄すると、面影がひくひくと肩を震わせながら必死に弁明する。
「あっ…だって…だ…って……三日月が、お尻まで、弄るからぁ…っ」
その糾弾に対し、声で応える代わりに三日月が勢い良く人差し指で菊座の最奥を貫いた。
「はあぁぁあっ!!」
刺激に反応し、ぎゅうっと一際強く男根を女壺が締め上げ、雄液を搾り取ろうとする。
「ふ、ぅ……っ!」
肉の要求に対し三日月は望み通り自らの欲棒を解放し、先端から奔流を肉壺の奥へ勢い良く注ぎ入れた。
びゅるるるっ!! びゅる、びゅる、びゅくっ!!
「ん、んん……っ! あぁ…あつい……っ…はぁぁ…いっぱ…い……」
彼の雄々しい男の証が、激しく頭を振りながら肉壁を叩き、私の奥を……生命の源流で満たしていく………
初めての時より明らかに苦痛は払拭され、快感が増しており、面影は脱力した身体を相手の胸に預けながらその余韻に浸っていた…が……
「……まだだぞ…面影」
「え………あっ…」
「ほら………身体を…」
「あっ…! ひゃぁんっ!」
ぬぷりと楔を引き抜かれたかと思うと、上体を倒して横になった三日月に両脇を掴まれ、あれよあれよという間に態勢を変換されてしまった面影の目前に、精の残渣に濡れた雄の証が現れた。
勿論、急に出現した訳ではなく、身体の向きを一気に反転させられ面影の頭がその位置に来ただけの話であったが、急な視界の変換に吃驚した面影は続けて目前に現れた雄の姿に息を呑む。
「…………っ」
これまでも幾度も目にしていた相手の益荒男を見て、びくりと肩を震わせた面影だったが、同時にその両腕が小さく揺れた。
(い、いけない………思わず、ふしだらな事を………)
無意識の内に手を伸ばし、触れそうになってしまった……
そう思いながらも、濡れた楔から目を離す事が出来ないまま、面影は戸惑う。
おそらく……三日月がこういう体勢を取ったのは、自分に『そういう』行為を期待しているからだろう。
目の前に相手の身体の中心がある様に、向こうの視界の前には今、己の恥ずかしい場所が晒されている筈だ。
こういう体勢を取った後、恋人たちが行う行為は………でも………
「ほら………お前も…」
手を出してもいいのか……自分から手を出すのはどうしても憚られていた面影の背を押す様な三日月の声が聞こえてきて、同時に濡れた柔らかい感触のものが自らの花芯に触れてきた。
「あ、くぅぅんっ…!」
猫の様にぴちゃぴちゃと音をたてて赤い若芽を舐め上げてくる男の顔に、ぽたりと白濁の雫が落ちて来る。
先程、面影の奥に注ぎ入れたばかりの己の精を受け止め、三日月がくくっと密やかに笑った。
「おや………折角注いでやったのに…ほら、零さぬ様にもっと力を込めよ…」
「む、り……無理ぃっ…! そんな、こと、されちゃ……っ」
締めようとしても、直近の急所を舐め上げられてはたちまち全身から力が抜けてしまう。
それは、愛撫を受けて肉扉を開いてしまう女性の本能に即したものでもあり、面影の理性で御せるものでもなかった。
「ならば、俺の悪戯を止めてみたらどうだ? 喘いでばかりでは止める事は出来ぬぞ」
「う………っ」
そう来たか………しかし、確かにそう言われてしまっては、こちらとしては少しでも止める為に行動に移るしかない。
「ん………は、む……っ」
くちゅう………ぴちゃっ…ぴちゃっ………
「っ………ふ…」
三日月に煽られるまま、面影が楔に唇を寄せて舌で触れ、そのまま口腔内に亀頭を含み入れる。
岐立する程の固さは失われたものの、それでもしっかりとした感触を返してくるまろみをじっくりと舌で舐め回し、先端の窪みを舌先でちろちろとくすぐると、微かに反応が返って来て遠くで男の呻きが聞こえた様な気がした。
(こんなのが……さっきまで私の内に………考えただけで、おかしくなりそう)
一度口外に出し、舌でじっくりと形を確かめる様に根元から先端までをなぞり、そして今度は根元に向かって舌先を這わせていくと、付着していた精液の味が味蕾を犯していく。
(三日月の………味……)
決して美味しいと言えるものではない、のに、彼の体液だと思うと甘露にすら感じてしまうのだから、人の心というのは不思議なものだ。
(もっと…欲しい………もっと……食べさせて……)
くちゅっ、ぐちゅっと激しい音をたてながら、それをたてているという自覚も無い様子で、面影は自らの口に肉棒を含み、喉奥まで呑み込んでは先端近くまで粘膜で扱く動作を繰り返した。
精液に混じり面影本人の唾液の助けもあり、粘膜と粘膜の摩擦は滑らかに行われていたが、その刺激を受けて再びその昂りが徐々に傾きを持ち始めていく。
「っ、ふふ、なかなかのものだな……ではこちらも本気になるか」
正直、そんな三日月の声を聞くまで、面影は自らに施されていた愛撫の快感を多少はやり過ごせていた事実を忘れてしまっていた。
それだけ、相手の熱棒を貪る行為に夢中になっていたという証左だ。
そこに思い至り、面影は一瞬狼狽したのだが………
くちゅ…っ
「っひぁあっ!!」
ちゅうっと花芯を吸い上げると同時に、三日月の指が開かれた双丘の中心に在った暴かれた秘穴に根元まで突き入れられた。
びりびりっと電流の様な苛烈な快感が脳髄を襲い、面影は一度相手の分身を口から離してしまう。
「ま、また…そこぉ……っ」
後ろを振り仰ぐが、三日月は知らぬ存ぜぬとばかりに答えを返さず、代わりに陰核を優しく舌でからかい、肉壺の内側をなぞり、菊座に食べさせる指の数を二本に増やしてつぷっつぷっと出し入れを繰り返した。
「ふぁっ……! んっ……ふぅうんっ…! はふ……んむぅっ…!」
言葉で男を止める事は出来ないと察し、面影は快感に身を震わせながら必死に相手の楔に再び舌を伸ばし、愛撫を再開させる。
その行動が、相手の悪戯を止めるという目的から来るものだったのか、純粋にその昂りを貪りたいという欲求からなのか、最早本人ですら分からなくなってしまっていた。
止めなきゃ……でもどうして……? こんなに気持ちいいコトなのに………ほら、『彼』だってこんなに悦んで、応えてくれるのに……
舐める事ばかりに集中していた所為か、男の昂ぶりがすっかり元気を取り戻し、十分な大きさと固さを取り戻していた事にようやく気付いたが、それに気付いた面影は尚更熱を込めた口淫を施していった。
(もうこんなに………ああ…やだ……また、欲しく……)
欲望に衝き動かされた様に、びくっびくっと身体が数回痙攣したのが向こうへの合図になったのだろうか。
「ん………」
一際強くぬるりと舌で肉穴の入り口を舐め回した後、三日月は吐息を漏らしつつ口を相手の秘所から離し、同時に自らの身体も動かし移動を始めた。
「そのまま動かぬ様に……な…」
「え……?」
面影の事は今の四つん這いの姿を取らせたままに、三日月は身を起こして相手の臀部へと移り、上から見下ろす姿勢を取った。
そして、ゆっくりと身を屈め……
「あ……っ!?」
三日月の手に支えられた肉棒の先端が軽く触れたのは、今まで蹂躙してきた蜜壺の入り口ではなく、淡く蕾んだ菊蕾だった。
ゆっくりと先端が円を描く様に触れて粘液を擦り付けて来る行為に、面影は嫌でもこれから起こるだろう事を察してしまい、少なからず慌てた。
「そ、そこは……むり…っ!」
「大丈夫………力を抜け…いつもの様に…な」
『いつもの』という言葉に、反射的に面影は男性の時に犯されていた時の事を鮮明に思い出してしまう。
そう……性は異なるが、これからする行為は初めてではない……自分は何度も、彼と………
ずぷ………っ
「ん、ん…っ!」
「そう…良い子だ……」
面影の身体が与えられる快感を期待したのか、持ち主が試みるより先に勝手に脱力し、三日月の侵入を容易にしてしまった。
先端が肛肉の奥へと埋もれた後も、三日月が腰を前後に揺らす度に肉茎が少しずつ続いて奥へと挿入されていき、動きに合わせて面影の甘い悲鳴が響き渡った。
「あ、ああっ! こ、れ……ヘン…っ、だめっ、お尻…だめぇっ!」
「辛いか…?」
「う………ちが……けど……っ」
拒絶の言葉は紡いだものの、三日月から直接的な質問が投げかけられると、それに対して面影は曖昧な返事を返しつつ顔を俯ける。
違う、辛い訳ではない……
女の身体でのこの行為は初めてだが、三日月の繊細な愛撫のお陰で受け入れている場所は然程辛さは感じない。
寧ろ、拒絶を示した理由は逆なのだ。
(お、男の時とは違う……擦られるのも、気持ちいい…けどっ……! み、三日月のオ〇ン〇ンが奥の子宮まで強く突いてきて…怖いぐらい、感じる……っ!!)
肛道の粘膜を荒々しく押し広げて擦られる快感も然ることながら、楔の先端が奥を抉る度に、肉壁を通して女性特有の器官をごりごりと圧してくる感覚………
もどかしくもはっきりと伝わってくる感覚は確かに快楽と呼ぶに相応しい…いや、それ以外の表現などない、明らかな蟻地獄だった。
嵌まってしまったら最早抜け出す術が見出せない………それなのに、もう既に嵌まりかけている………だから、怖いのだ。
「あっ、みかづきぃ…っ! お、く、熱い…! あっああんっ! だめぇ、そんな……ああ、溶ける……! お尻、溶けちゃうぅっ!!」
「はは、こちらも処女なのにもう感じているのか? 素晴らしい締め付けだぞ………そら」
激しく肉楔を打ち込まれる度、喘いでいた面影の声に艶が混じっているのをしっかりと聞き取っていた三日月は、笑みを深くしながら徐にずんっと一際強く最奥へと楔を突き挿れる。
「んああああぁっ!!」
びくびくっと激しく身体を震わせながら、面影が喉と背を反らせて悲鳴を上げ………その滑らかな白い脚の内側にとろりと蠱惑的な光を放つ液体が伝い落ちた。
(あ……あ……すごい………こっちも……きもちい………)
太腿を伝う濡れた感触も感じつつ、強く深く身体内を走り抜けている電流に面影は歓喜の涙を零していた。
男性の時から、既に肛蕾で交わる快楽は知っているつもりだったのに、女性になるとこんなにもその質が変わってきてしまうとは……
(どうしよう、どうしよう………またこんな、恥ずかしくていやらしいこと……覚えてしまって………私……もう………)
もう、男でも女でも……三日月なしではいられない身体になってしまった………!
残酷且つ甘美な事実に震えている面影の耳に、微かに三日月の嬉しそうな声が届く。
「ふ……根元まで咥え込んで達ったか………………だが、まだまだだぞ?」
「あ、あぁ……っ!」
面影は、男の悪戯による渾身の一突きに達かされてしまった訳だが、彼はまだ熱の奔流を解放してはいない。
その熱源を放とうとする様に、三日月の腰がより一層速度を速めて前後に動き、激しい音を立てながら面影の洞穴の肉壁を擦り上げつつ奥の秘部を圧し、突きまくった。
「ああ、好い………好いぞ、面影……っ」
微かに聞こえる三日月の荒い吐息が、彼が大いに昂ぶり、荒ぶり、歓喜している事を教えてくれる。
それについては正直嬉しさもあったのだが、この時の面影は残念ながら気持ちを伝える余裕もなかった。
何故なら……
「ひっ…! はぁ、あっ! あーっ! いっ、また、いくっ!!」
肉の洞奥を突かれる度に頭頂まで響く快感が全身に広がり、抑えられない痙攣が走り、繰り返しの絶頂を経験していたからだった。
(だめぇ…っ!! 敏感になりすぎて…っ、一突きごとに達ってる…っ!!)
こちらの好い処を的確に捉えて容赦なく責め立ててくる三日月に唯々翻弄されるままに、面影の口の端からだらだらと涎が流れ落ち、瞳の焦点もぼんやりと合わなくなってくる。
そんな彼の身体だけは快楽に従順に従い、三日月の腰の動きに合わせて好い場所に楔が当たる様に淫らにゆらゆらと揺れていたが、その速度は徐々に速まっていった。
「あ…っ! そこっ、そこっ…! ああ、またくるっ! すごいの……くるっ!!」
これから訪れる快感がどれ程のものなのか、まるで予想がつかない様子で面影は半ば怯えた瞳で振り返り、自分を変わらず追い詰めている三日月を見上げた。
それでも腰の動きを止めようとしない非情な男は、憎らしい程に優しい笑みを浮かべながら、ゆっくりと上体をこちらに向かって倒してくる。
「そうか……では、共に達こうか?」
ちゅ………
「んっ、ん~~…っ!」
唾液に濡れた唇を優しく塞がれながら悲鳴を封じられ、面影が艶っぽい呻き声を上げる中、三日月の腰が更に速度と強度を上げ始めて双方を絶頂へと導いていく。
(ああ~~~っ!! 固い……大き……っ! 三日月…すごい、すごいっ…!!)
何かが身体の奥から湧き上がってくるのを感じ、面影が心の中で声を上げる。
そして、いよいよ大きなうねりが下腹部からせり上がって来て、全身を覆う様な錯覚が若者を襲った。
「は、あああぁぁ~~~っ!!」
肉棒に突かれる度に感じていた快感とは比較にならない程の大波が五体を呑み込んでいくのを自覚すると同時に、秘部に熱が生じ、ぴしゃあぁぁぁっと勢い良く潮を吹いた。
「ん……っ!」
そして、三日月も面影の身体の奥できゅうっと肉楔を一際きつく締め付けられ、どくんっと白濁の熱を肉奥に解放した。
「く……ぅっ……」
自らの雄が面影の内で己の精液に浸されていくのを感じながら、三日月は激しい胴震いを繰り返す度に白い欲望を更に注ぎ続ける。
「あ…はあぁ~~…っ……んんっ」
激しい絶頂を迎えた所為で殆ど気を失いかけながら身を痙攣させ、突っ伏してしまった面影に覆い被さりながら、愛おしそうに三日月が相手の柔らかな身体を抱き締めた。
「面影………まだ…」
互いに達った後でもまだ足りないのか、女体の面影の抱き心地が気に入ったのか、それからも三日月が面影を求める行動は終わらなかった……
「ふぅ………は、あふっ……」
どれだけの時間が過ぎただろう……
ふっと、面影の意識が僅かに清明になった。
(……あぁ………私、は………)
あれからずっと、三日月に抱かれていたのだった……
ぼんやりとした頭の中で、これまでの二人の行為が思い出される。
派手に達した後からも、面影は繰り返し前も後ろも三日月に犯され続け、女体の悦びを確実に肉に刻まれていった。
その合間には上の口にも楔を挿し入れられたりもしていたが、その時の自分は信じられない程に従順に…いや、寧ろ積極的に『食べて』いた様な気がする………
心の中で弁明すると、その時の記憶は殆ど残っていない。
既にその時点で繰り返し三日月に優しく責められ犯され、快楽の坩堝から逃れる事を許されていなかったのだ、理性などとっくに溶け流れ、性欲という本能だけが己を支配していた様なものだ。
しかし無意識の中での行動とは言え、全てを都合良く忘れているという訳でもない。
少しだけ思い出した中でも、三日月の上に乗り、淫らに胸を揺らし、腰を振りながら肉壺の内を掻き回されてあられもない声で善がっていたり、雌の蜜穴に精を注がれた直ぐ後に自ら肛の穴を拡げながらそちらへも強請っていたり…………正直、それは自分ではないと否定したくなる程の淫蕩振りだった。
しかし己の記憶に残っている自身の痴態、淫声そのものが、皮肉にも自分が行った事なのだと教えてくる。
『み、かづき……もっと……奥っ……激しく、突いて…っ』
『お願い……今度は…こっち………お尻…に、オ〇ン〇ン、ちょうだい…っ』
脳裏の中で乱れる自身の姿を回想していると………
不意に、面影の意識を現実に引き戻す様に頭に何者かの手が優しく置かれ、くいっと前方へと顔を寄せられた。
「んむ……っ」
顔が移動した先で面影の唇に熱い肉の塊が触れ、それを切っ掛けに自分が今どういう態勢で、意識を戻す前に何をしていたのかを朧気ながら思い出す。
(あ………そう言えば……私…)
「ふふ、どうした……? あまりの心地好さに動けぬか…? ほら、続けて……」
頭を押さえてきた手の持ち主の優しい声が上から降って来る……三日月の、声……
「ん……ああ……」
その声に導かれる様に、面影は這いつくばった状態で目の前の男の熱棒を自らの豊かな胸の合間に挟み込み、顔に向かって突き出ている先端をちろっと舌で舐める。
そうだった……自分は足を伸ばして座っている相手の両脚の間に身を這わせ、絶えない快感に煽られる様に昂った雄を口で慰めていたのだった……
絶え間なく突かれ、貫かれる快感に………
(………?)
しかし、今、耳にした相手の男の台詞に面影は違和感を覚える。
違う……自分が意識を戻したのは心地好さに依るものではなく、逆だ。
絶え間なく淫肉の壁を擦られ続けて前後不覚になっていたところで、不意にその波が引いたので状態を把握するまでに意識が浮上出来たのだ。
「……え」
思わず声が漏れた。
少し……いや、かなりおかしくないだろうか……矛盾している………
ほんの数瞬前まで雄の証で蜜壺を貫かれていた筈……なのに、何故、今己の胸の狭間でその雄がこんなにしっかりと存在を主張しているのか………
この胸に存在している雄が……どうして同時に己の花蕊の奥にも……?
脳内が混乱し始めた面影の花唇の奥に、徐にずんっと質量が熱と共に圧し入って来て、若者は久し振りにその快感を思い出し、同時に感じていた違和感が気のせいではないと再確認する。
「は、あぁっ!」
耐えられず声は上げたものの、違和感の正体を確かめたくて振り返った面影の瞳に映ったのは、紛れもない三日月宗近の姿………
三日月宗近が、二人………
普通なら激しく動揺し、混乱する場面ではあるだろう。
しかし面影にとってこの状況は最早見慣れつつあるものであり、言ってしまえばほんの数刻前にも見ていた光景だった。
「若月……眉月…………いつ…」
「………ほう」
面影の瞳の中に理性の光が久方振りに戻ったのを確認し、足を投げ出していた若月が楽しそうに瞳を細める。
相変わらず同じ顔の二人を判別する一助になっている髪飾りが、若月のこめかみの上で控えめに揺れていた。
「どうやら、頭の中の靄が多少晴れた様だな………先程までの夢現のお前の姿も可愛いものだったが……」
言いながら、面影を後ろから犯しているもう一人の三日月の分身に声を掛ける。
「眉月、お前がへばっている間に面影が物足りなくなってしまった様だぞ」
「へばったとは心外だなぁ………それ」
どちゅん…っ!
「ひあぁんっ!!」
へばったとは到底思えない剛直で、面影の最奥を力強く貫き悲鳴を上げさせ、その不名誉な指摘を否定した眉月が笑い言葉を続けた。
「なぁに、本能に従うままに犯される姿も可愛いが、やはり自我がある中で乱れる面影も見たくなったのでな……そうら、此処が好いのだろう?」
ぐちゅっ、ずちゅっ、ぐちゃ…っ!
「あ、あぁ〜〜っ! 好いっ、そこ、気持ち好い…っ!」
「ははは、すっかり素直になってしまったなぁ……さぁ、俺のもしっかり可愛がってくれ…お前のこちらの口でも、たっぷりと飲ませてやりたいのでなぁ」
快感に悶える面影の意識をこちらへと向けさせる様にその頬を優しく撫で、若月は再び相手の口に己の劣情を含ませた。
「は、ぁ………んふぅ…ん…若月のオ〇ン〇ン、おいしい……っ」
意識はある程度戻したままに、その欲求に忠実に動いて面影は若月への奉仕を再開させる。
男だった時には想像も出来なかった程に豊満な胸で昂りを挟み込み、にゅくっにゅくっと肉圧を掛けながら上下に擦り上げると、嬉しそうに肉棒が戦慄き先端から悦びの雫を溢れさせる。
零れ落ちる前に舌先で優しく舐め取り、そのままぬるんとまろみを舐め回したら、肉楔がより一層成長した様に膨らんだ。
そうして面影が若月に口淫で奉仕している最中にも、眉月の雄の証は絶え間なく面影の蜜壺を貫き、擦り上げ、内の肉壁を捏ね回していた。
「はふぅ…ううんっ……はっ、はぁ…っ」
既に内を満たしていた三日月の生命の原液が、楔が出入りする度にぐちゃぐちゃと濡れた音を立てながら掻き出され、とろりと淫靡な光を放ちながら面影の内股を伝っていく。
その感覚を感じながら奥まで繰り返し抉られる快感も刻まれ、面影の身体は歓喜する一方でより大きな快感を出来るだけ感じようと、好い処に雄が当たる様に腰が艶めかしく蠢いていた。
初めての時には唯々三日月に身を委ね、時には怯える様子も見せていたが、幾度も三日月に肉の悦びを教え込まれた成果か、今や自ら快楽を追う程になってしまっていた。
それは三日月の教え方が上手かったのか……それとも面影の素質があったのか………
「んっ…んっ……ああ……すごい……二人とも、熱くて…固い…」
「お前がそうさせたのだ………責任を取って貰わねばな…」
二人が元の三日月に戻った後の事も当然同位体である彼らは記憶を共有しており、その間に面影が三日月と交わった光景もしっかりと今の状態の彼らの目と脳に刻まれている。
三日月の思惑でまた二人に分たれた時、面影は幾度目なのか最早数え切れぬ程に達かされ朦朧とした状態で横になっており、若月と眉月はそんな相手の姿を見て直ぐに昂りが限界近くまで興奮してしまったのだ。
若月は面影の上半身の方へと動き、眉月は下半身の方へ……
そうして二人同時に面影を犯し始め、暫くして眉月が一時腰を止めて今に至ったという訳だった。
恐らく面影はもっと前から自分達二人に犯されていたと思っているのかもしれないが、特に訂正してやる必要も無いだろう。
「……良い子だ」
責任、という言葉を耳にして、元が真面目な若者は素直にそれを受け止めたのか、若月の十分に興奮した雄の証をより強く挟んで擦り上げ、ちゅぷちゅぷと唾液で満たされた口腔内で慰める。
その健気な姿を愛おしそうに見つめ、褒め言葉を投げ掛けながらするりと若月の指先が面影の艶やかな髪を梳いてやり、小さな声で呟いた。
「……そろそろ、か」
若月だけではなく、眉月もおそらくは察していただろう、そしてそれは面影もそうだった。
此処にいる三人ともが確実に限界を迎えようとしている事を。
若月の肉楔は面影の胸元でひくつき、先端の窪みが喘ぐように開閉しつつ白濁が混じった粘液を噴き出し始めている。
眉月は抑えていた荒い息遣いが徐々に露わになり、面影を責め立てる腰の動きも明らかに速まってきていた。
そして二人から同時に責められていた面影は、突かれる度に湧き上がる快感の波が大きく激しくなって全身を襲ってくるのを感じながら、同じく口に含む肉棒への愛撫が濃厚になっていくのを止められなかった。
貪欲に雄を貪るのは純粋な欲求もそうだが、その行為によって背後から与えられる悦楽から少しでも気を逸らす為でもあったのだが、それもいよいよ無駄な足掻きへと変じていく。
「も、もう……っ…ん…~~~~っ!!」
限界を訴えたかったのかもしれない若者の口に、くんっと若月が肉棒を挿し入れて喉奥まで突き入れると、滑らかな粘膜が敏感な先端を刺激し解放を促した。
「…っ…射精す、ぞっ…!」
「んんん……っ!」
びゅるるるっと熱された激流で口腔内を満たされ、含み切れなかった一部が唇の端から白い筋を引いて流れ落ちる中、面影は夢中で喉を動かし熱を飲み下す。
その行為が面影の心身を更に昂らせたところで………
「ほら…飲め……っ」
その一方で若月の後を追う様に、眉月も熱く熟した肉鞘の最奥を力強く抉り、そのまま一気に欲情を注ぎ入れた。
(あ…あああっ、いく、いくぅっ!!)
抉られた感覚と内壁を灼かれる刺激に、面影も二人と共に絶頂へと至り全身を硬直させた。
ぶるぶると震える身体……その滑らかな肌に浮かんだ玉の汗が光りながら流れ落ちていく。
瞳を固く閉じながらも恍惚の表情を浮かべて快楽に浸る面影の姿は、淫らでありながらも清らかさを失わず、穢れる事を知らない新雪を思わせた。
嗚呼、穢したい………のに、このまま美しく清らかなまま在ってほしい………
矛盾した気持ちを抱えながら、美しい神の姿を象った二匹の獣は、力が抜けてくたりと頽れた相手へと身を寄せていった。
「面影……見事な達きっぷりだったな…」
「だが、まだこれからだぞ……?」
「え………っ」
三日月にも散々可愛がられたばかりだと言うのに、今度はこの二人を相手に……?
過去にも経験はあるが、女性の身でそれは可能なのか……?と疑念と不安が面影の頭を過ったが、そんな事にはまるで構う素振りも見せずに二人は淀みなく相手への新たな悪戯を施し始めた。
「おお………やはり柔らかいな…心地好い…」
「女子の身体は柔らか過ぎて、抱き締めると折れるのではと不安になるが……ここなら安心して可愛がれるな」
「や………ふ、二人とも……そんな一緒に……あっあっあん…」
にゅるっ…にゅるん……っ
面影の目の前で、二人は相手の豊かな乳房に己の劣情を擦り付け、小さく頂に実っている果実を先端でからかい遊び始めた。
粘液に塗れていた二本の肉棒は、実に滑らかな動きで乳房に滲んでいた汗の力も借り、白い肌の上を移動しながら支えていた男達の手の力を受けて面影の胸の形を思う儘に変えていく。
「ああ…ん……オ、〇ン〇ン、そんないやらしく圧し付けないで……っ……あっ、乳首、擦っちゃだめぇ…っ」
先端で強く白い椀を押せば、肉棒の先が隠れる程に柔肉の奥に埋もれる。
その力を逃がす様に肉茎を圧し付ける様に滑らせれば、ぬるりとした光を反射しながら粘液が美肌を濡らしていく。
そして滑った先の桃色の果実に先端が軽く触れ、その出会いを喜ぶように雄の切っ先は繰り返しこりこりと果実を刺激し、根元からそれを揺らした。
(ふ……二人とも、いやらし過ぎる……っ……只でさえ女になって、乳首、敏感になってるのに……っ……こんなの見せられたら……わ、私まで…また………)
いけない事を考えて………濡れてきてしまう………
思っている傍から、じゅん…と己の股間に熱い何かが溢れ出すのが分かってしまい、面影は自身の身体の素直さが少しだけ恨めしく思えてしまった。
そんな中でも彼らが思うままに蠢かしている肉楔から目を離す事が出来ず、拒否する事も出来ないのは…結局、自分自身も彼らから与えられる快楽を期待し、受け入れているからだ。
「ん……ん……っ……はぁ……あっ…オ〇ン〇ン………オ、〇ン〇ン…っ…」
視覚と触覚からもたらされる刺激に脳が混乱の極みに至ったのか、面影は目に入る光景にのみ反応し、意志の疎通にもならない淫語を繰り返し呟き続けた。
欲しい、欲しい、欲しい……!
伝える形にはなっていなかったが、『それ』が欲しいのだという事は面影本人の様子を見たら一目瞭然だったので、無論、二人がそれを察せない筈もなかった。
「これが欲しいのだな…?」
「此処ではない……別の場所を埋めてほしいのだな?」
若月と眉月の流れる様に続いた問いに、面影は惑う事もなくこくこくと素直に首を縦に振った。
二人に迫られた時には身体の不安を感じていた筈なのに、今や取り繕う時間も余裕も無かった。
淫欲に支配されている若者を見下ろした二人が視線を交わし合い、互いに小さく頷く。
元が同じ三日月宗近という個体というだけに、その思考も共通している場合が多いのかもしれない。
「では、お前の望みを叶えてやろう…」
最初に動いたのは若月だった。
「さぁ…こちらへ」
「あ…っ」
仰向けで二人の悪戯を受けていた面影の隣に、若月が相手と同じく仰向けに寝転がる。
続いて、面影の肩を掴んで引き寄せながらその身体を反転させ、自らの身体の上に乗り上がるような姿勢を取らせると、勃ち上がっていた己の肉刀の切っ先で優しく相手の雌洞の入口を擦った。
「ああ……お前のここも、すっかり熱く蕩けている様だな…」
しかしそれから若月が動く様子を見せないのにじれったさを感じたのか、面影が首を左右に振りながら物欲しげに腰を揺らす。
「ん、あっ……はやく……挿れて……」
「ふふ……食べたいなら己の口に運ばねば……もう、やり方は分かるな…?」
若月から許しを受けると、面影は直ぐに手を背後に伸ばし男の岐立したものを握り込んだ。
こんなに大きく、固いものが、己の内に全て挿入っていたなんて信じられない…けど……
これが……自分の飢えと疼きを鎮めてくれる………
そう考えるだけでぞくぞくと背中に甘美な戦慄が走り、それに押される様に腰を落とす。
ずぷぷ……
「ふぁ、ああぁ……」
空虚だった内を、逞しい質量と熱が埋めていく……
最初は三日月に指導してもらわないと場所が分からなかったのに、今はもう迷う事もなく自ら呑み込める程に『成長』していた。
すっかり敏感になってしまった肉壁を擦られるだけで声も出せない程の快感が生まれ、肉体が悦んでいるのが分かる。
(きもちいい……きもちいい……っ! もっと、いっぱい……!)
人の欲は底無し沼だと聞いた事があるが、今の自分が正にそれだ。
あれだけ三日月に愛され、二人にも蹂躙されたばかりだというのに、それでもまだ身体は欲しいと貪欲に声無き声を上げて、自分の意識も完全にそれに引っ張られている。
若月の肉楔を切っ先を残して抜き、そこから一気に腰を落として根元までを呑み込む度に悦楽が身体を走り、止められなくなってしまう。
じゅぷっ、じゅぷっ、じゅぷっ……!!
「はっ……は…っ! くぅ……はふ…っ…!」
休む間もなく腰を上下させて快感を貪り、呼吸も覚束なくなった様にだらしなく口を開き、舌を突き出しながら喘ぎ声を漏らす面影の背を、不意にとんっと軽く押す者が現れた。
「は、ぁ………っ?」
本当にささやかな軽い力だったのだが、行為に没頭していた面影は完全に不意打ちを食らう形になり、そのままとさりと若月の上半身に身を預ける形で伏せてしまった。
「え…?」
何が起こったのか一瞬混乱して振り返った面影だったが、そこに立っていたのは言うまでもなく、行為から外れていた眉月だった。
「ま、眉月………」
自らの欲求を最優先にした為、少しの間ではあったが相手を放置してしまった事に思い至った面影は、どう反応したら良いのか分からずその時だけは快楽を追うのを忘れた様子で眉月を困惑の表情で見上げた。
しかし自分の薄情な態度を非難されるかと思っていた若者の不安とは裏腹に、眉月は寧ろ上機嫌な表情で相手に近づいていくと………
つぷり……
「ひぅ…っ!」
「おお………もう十分に解れているな…」
若月に犯されていない菊門の方へと指を伸ばし、一気に根元までを埋め込んで来た。
「や、やだ……っ…それ、へん……っ」
若月に女洞を塞がれていながら、菊座にまで指を挿し入れられ、更に内で関節を曲げたり指を捻られたりと蹂躙され始めると、その初めての感覚に面影は明らかに狼狽し始めた。
苦痛ではない……が、何故だろう、胸騒ぎがする………これ以上それを許してしまったら……私は………
「何故、三日月が再び俺達二人に変じたか、分かるか…?」
「え…?」
いきなりそんな問いを投げ掛けられ、再び混乱した面影が思わず聞き返したが、眉月はそれには言葉で返す事は無く……
ずぐ、ぐ……っ
「ひゃ…あああっ!」
面影の上体に覆い被さる様に身体を重ねながら、自らの昂った雄を指を引き抜いたばかりの菊門に埋めていった。
指で弄ったばかりというのもあるが、その前から三日月にも犯されていた事実と、彼によって注がれた精の残渣が潤滑油の役目を果たし、挿入は驚く程あっさりとしたものだった。
しかし、動作こそスムーズに行われたものの、結果として体内に二本の怒張した雄を迎える事になった面影はその圧迫感と、初めて経験するあまりにも大きな快楽に激しく慄いた。
「ああ、そんな……っ、お尻も一緒、なんて……ひぁっ! 動いちゃ…やあああぁっ!!」
ぬちゅっぬちゅっ…!
ずちゅっ、どちゅ…っ!
微妙に異なる律動で、二つの穴を塞がれ、擦り上げられる感覚に、唯々面影は翻弄され淫らに踊る。
快楽を逃そうとこの身が捩られる度に、二本の凶悪な楔が肉襞を刺激し、肉壁を挟んで擦れ合う感覚は、経験がなかっただけに面影の脳髄を溶かし崩す程の快楽をもたらした。
(これ、すごいっ! 二人の大きいオ〇ン〇ンが、内で暴れてっ……壁越しにごりごり擦れて……ああ、おかしくなっちゃう……!!)
若月と交わっていた時に感じていた底無し沼などまるで子供騙しだというかの如く、更に一層深い沼へと突き落とされた様だった。
落ちた沼には何もない……逃れられない快楽以外、何も………
救いはないが、与えられる快楽に縋る事が唯一の救い。
二本の楔に交互に貫かれ、悦びに腰を振っていた面影の乳房に載っていた果実を若月の両手の指達が摘むと、より一層花蕊と肛洞の締め付けがきつくなり、男達を大いに悦ばせた。
「はは、ここもお前の好い処に繋がっている様だな……好い、好い締め付けだ…」
若月が僅かに上ずった声で悦びを表し、それを聞いた面影はふるふると首を横に振った。
「そ、んな………知らな…っ……ああん、もう、もう、達くぅ…っ!」
限界を訴える可愛い想い人に、眉月が背後から悪戯っぽい声で尋ねた。
「おやおや、どちらで達きたいのだ…? 俺のか? 若月のか?」
どちらが好いのかと迫る様に二人の腰の動きが一層速まり、面影をより激しく蹂躙する。
「んあぁぁっ! い、いい…っ! どっち、も……どっちでも……いいぃっ!!」
自分にとっては二人のどちらともが『三日月宗近』であり、二人共に犯され快感を感じているのだから、選ぶ必要もない。
今は唯……どちらでもいいから………!
「は、はやく…っ…はやくぅ……っ!」
今感じている快感も好いが、もう身体はそれで満足してくれない。
もう一歩、いや、半歩先に在る絶対的な快感を求めて、腰が激しく揺らいでしまうのを止められない…!
「おやおや…欲張りな姫君だなぁ。すっかり甘やかされてしまって……」
「俺達が達くまで我慢だぞ? ふふふ……」
これ以上どれだけ我慢したら良いのか…最早一秒でも永遠と思える程にこの身は限界に来ているというのに……!
「もうっ…! ああっ、もうだめ…っ! 若月っ、眉月ぃっ…お願い、達かせてぇっ!!」
若月の窘めの言葉に涙声で訴え、身をくねらせる面影の痴態に、いよいよ相手が限界なのだと察した若月と眉月は、互いに目配せをして頷いた。
本当はもう少し焦らすつもりだったが、面影が余計に苦しむ事はどちらの男も望んではいない。
眉月が言った通り、今の面影は『三日月宗近』にとっては何より大切な姫君であり、甘やかすのを是としているのだ。
だから……望まれたならばそのままにそれを叶えるのが二人にとっての不文律。
面影本人が何処まで理解しているのかは知らないが、それ程までに、三日月宗近は面影にベタ惚れなのだった。
「ああ、仕方がない…」
「可愛い姫君には敵わぬなぁ…」
譲歩する形ではあったが、面影に名を呼んで強請ってもらえたのが殊の外嬉しかったのか、二人は唇を歪めながら相手が求めるものを与えようと同時に腰の動きを加速させた。
動きを抑えていたらもう少しの間は持っていた筈だが、既にその必要性は面影の懇願によって失われている。
二人の腰の律動で、二穴を灼け溶ける程に刺激された面影は瞬く間に絶頂へと駆け上がる。
女体の反応で、雄達の楔も肉壁に煮え滾る精を搾り上げられる様に締め付けられ、二人もまた面影の願いを叶えつつほぼ同時に欲棒を解放する。
「射精すぞ…っ!」
「…っ、俺も…!」
「あああんっ! いくっ!! わ、たしも、いくぅぅっ!!」
どちらの肉刀からも激しい熱が生じ、一気に内側に広がり満たされていくのを感じながら、面影は身体を支えられず若月の身体の上にぐたりと倒れ込む。
そうしている間にも男の身体とは異なり快楽は直ぐには引かず、臀部の筋肉が余韻で痙攣しており、その反応はまだ内に埋めていた楔に伝わっていた。
「ああ、余程好かったのだなぁ…」
「うむ…まだ内が震えて健気に締め付けて……」
まこと、女性になっても相変わらず抱き飽きぬ身体だ……
最後の言葉は声にこそ出なかったものの、男二人の心中で同じ様に呟かれていた。
そう…まだ抱き飽きていないのだ……二人とも、満足していない。
「………神域の収束までにはまだ時間がある」
「これからは俺達二人、刻限を迎えるまで骨の髄まで愛してやろう…」
「あ……だめ……すこし…休ませて…っ」
達ったばかりなのに早速次の行為に耽ろうとする男達に、縋る様に面影が訴える。
この時点で、やる気しか感じられない台詞に彼らを完全に止める事は不可能だと察したが、それならばせめてと休息の時間を望んだ面影だったが、残念ながらその訴えは聞き届けられる事はなかった。
「そればかりは…聞けぬなぁ」
「次に女のお前を抱けるのはいつになるのか分からぬのでな…」
三日月の神力の供給が絶たれると、当然神域も失われる。
そうなると神域のみに許されていた面影の変化も解かれるのだ、それは当初三日月本人からも聞かされていた。
しかしまさか………まさか三日月個体だけではなく、この二人からも続けざまに求められる事になるとは……!
「そ、んな……」
これから起こるだろう…そして決して逃れられないだろう快楽の責苦を思い、面影は微かに震える。
「大丈夫、これよりもお前が受けるのは快楽のみ…」
「案ずる事はないぞ」
それが一番大丈夫ではない!!と心で叫んだものの、それを実際に声に出す程の気力も最早無かった。
間違いなく彼らはその言葉を違える事無く自分に快楽を与え続けるだろう……
困るのは、自分がどんなに拒んでも、過去の経験から最終的にはあっさりとその快楽に流され…相手を求め、善がり、達くのを繰り返してしまうのだろうと予想出来てしまう事だった。
(み、三日月が……若月と眉月が悪いんだ………! あんまり……う、上手い、から…っ!)
どんなに疲れていても彼らの手管に掛かってしまうと、見る見る内に理性が溶かされ、本能を剝き出しにさせられ、自ら相手を求めるまでになってしまう。
これまで幾度も幾度も流されまいと心に誓い…その度に悉くその決意は粉砕されてきた。
いつしか、その努力は無駄なのだと半ば諦めの境地に至ってしまった感もあるが…………
(でも……それは…私の所為じゃなくて………三日月達が私に…そうなる様に……散々悪戯をしてきたからで…っ)
それでも最後には自ら彼らを求めたのなら、それは自己責任という事にもなるという非情な事実に、本人も気付いてはいるのだろう。
心の中での訴えも何処か弁明地味ているし、声を出せる程度に回復してきていても、実際行動に移す事は出来なかったのだから………
そんな若者が心中で葛藤している間にも、若月と眉月は優しく面影の身体に触れてくる。
「何やら下らぬ事を考えている様だな…? 俺達だけを感じていれば良いものを…」
「これは…まだまだ躾が足りぬ様だ……覚悟せよ…」
迂闊に思案に耽っていた所為で、彼らの本気度が上がってしまったらしい。
伸ばされてきた彼らの手が優しく全身を這い回り始め、面影の性感を確実に高めてくる。
「次は俺が前だ……」
「その前に胸だけで達かせてやろう。啼き声も好いが、達く時の愛らしい顔が見たい」
「あぁっ……や、ぁ…許してぇ…っ!」
せめてもの慈悲を願ったものの、既に獣の性を纏った彼らに届く筈もなく……
そして程なく、面影の甘い嬌声が辺りに響き始めていた…………
「三日月が悪い!」
「すまぬ」
あれから恙無く神域は解かれ……二人の付喪神は現世へと帰還した。
面影も女性から元の男性の身体に戻り、その形にも寸分の変化も見られなかった。
形式上は、全て元通りだったのだ……そう、形式上は。
しかし神域から解放された面影は、男性の姿に戻ったとほぼ同時に、珍しく発熱し寝込んでしまったのだ。
帰還したのは翌日の朝。
神域と現世の間には時間軸の歪みが生じる事もあるのだが、今回は特に大きな時間のずれは感じられなかった……あくまで面影の体感的なものだが、三日月も特に言及しなかった事からあながち誤りでもないのだろう。
神域が解かれ、元の部屋の造形が確認出来たところで面影は一度自室に戻ろうと立ち上がろうとしたところで……ぱたりと倒れてしまった。
それを目の当たりにした三日月は慌てて彼を布団へと寝かせ、以降看病の為に付き添う事にしたのだ。
今も疲労した身体を布団の中で横たえ、額には水に浸され冷やされた手拭いが載せられ、それでも熱の所為か赤い顔をした面影が強い口調で枕元に座している近侍を責めている。
肝心の不調の原因は複数あるが、想像に難くなく、主に神域での性の変換と……激しいまぐわいで身体を酷使してしまったかららしい。
だからこその若者からの直球の非難に、流石の三日月も弁解する事無く謝罪を述べたのだ。
神域の中での出来事は無論二人だけの秘密であり、他の刀剣男士にとっては単に一日が過ぎただけの話。
急に若者が熱を出して寝込んでしまったという話は他の男士達にも伝わり、何事だと心配されたのだが、そこは流石年の功、三日月が上手く誤魔化してくれたらしい。
『俺が不在の間に長いこと本丸を守ってくれていたが、年が明け、その緊張が解けてしまったのだろう……任せた俺にも責任があるので看病は引き受けよう。なに、人間で言うところの軽い過労の様なものだ』
「その『軽い』過労の原因のお前が、どうしてそんなに血色が良いんだ…!」
そもそも神域を展開し、この身を女性に変えてしまった彼の方が神力を酷使し、疲弊していた筈だ。
女性の身に変わった直後は自分の方が、顔面蒼白の相手の体調を危惧していた程だったのだから。
それなのに……何故か今、立場が真逆になっているのはどういう事だ。
「それはまぁ……女子のお前があまりにも可愛らしかったので、年甲斐もなくつい『はっする』してしまってな……そのお陰か、新陳代謝が上がり、欲求も満たされて、身も心もすっきりと…」
「この、すけべじじい~…っ!」
「最早、様式美になってきたなぁ、その罵言」
ふるふると怒りに震えながら悪態をつく面影の非常に珍しい姿に、三日月は恐れるでも慌てるでもなく、寧ろ感慨深げに頷きながらそう返す。
そしてそっと面影の額の生温くなってしまった手拭いを取り、傍の手桶の水に浸し直し、軽く絞って再び優しく面影の額に載せてやる。
「…あいすまぬ。俺の抑えられぬ欲求でお前に過分な無理をさせてしまった……女子の身体は、斯くも弱きものだったとは……」
そう詫びながら若者を覗き込んでくる三日月の表情には明らかに憂う色が宿っており、その場を上手く誤魔化そうとする様な不誠実な気配は微塵も無かった。
三日月宗近の性格を知っていたら、それはそうだろうと素直に思える彼の態度である。
(う………)
本当はもっと反省させようと訥々と説教をする心積もりだった面影だったが、そんな様子の相手を見て途端に決心が揺らぎだす。
(……ず、狡くないか……そんな顔して謝られたら……)
只でさえ懸想している相手なのだから、それ以上責める事が出来なくなってしまうだろう……!
それでもせめてもう一言、二言…!と思って三日月を見上げたものの、結局面影の口から出たのは……
「……反省、しているのなら……いい」
という、甘い裁定だった。
駄目だ、結局惚れた弱みで許してしまう……どれだけ自分は彼の事を好いてしまっているのだろう。
はぁ……と小さく息を吐き出したところで、面影は昨日の神域での事を色々と思い出す。
結局、何度、女性の自分は彼に抱かれたのだろう……
三日月だけならまだしも、それから若月と眉月に分かれてからも彼らは飽くことなく自分を蹂躙してきた。
最後は…完全に快楽だけを追い掛ける淫獣になってしまっていた様な気もするが、勿論、己の胸の内にのみ留めておくことにする。
あの二人が言っていた通り、確かに神域の中でしか女として存在出来ないのであれば、限られた時間の中で出来得る限りこの身と交わりたいと思う気持ちは理解出来るのだが………
「三日月……」
「うん?」
そこで面影は、密かに疑問に思っていた事を三日月に尋ねた。
「私の身体は……女の私の身体は…好かったか?」
「!」
尋ねる内容が内容なだけに、顔の朱が一層増した様子の面影は口元を手で覆って隠しつつ、身体も三日月に背を向ける形に移動させる。
「その……女になって抱かれたのは初めてだったから………わ、私ばかりが好すぎて、お前を…本当に、ちゃんと悦ばせてあげられたのか…分からなくて……」
「…………」
そういう質問がどれだけ男を歓喜させるか分かっていないのだろうか……
面影がこちらから視線を外しているのを幸いに、三日月もそっと顔を相手から逸らしたが、微かにその顔に朱が差していた。
(こんな状態でなければ、問答無用で抱き潰していたぞ…!!)
初めて身を捧げる状況では不安も大きかっただろうに、男が悦んでくれたかと気遣ってくれるなど……しかもそれを素直に尋ねてくる時の憂いた表情の色香……!
この者は何処まで自分を狂わせるつもりなのか………!!
「……お前は、あれだけ俺に抱かれていて尚、俺が不満だったとでも?」
ともすれば溢れ出しそうな欲望を必死に、全力で抑え込みながら、平静を装って三日月が返答すると、少なからず安心した様に面影がほっと息をついた。
「そう、か………なら、良かった……」
心の奥底に抱いていた懸念が消えた事に満足し、面影はきろ、と視線を再び三日月に移す。
「取り敢えず、お前にはしっかり看病をしてもらうからな……そもそも生娘を傷物にした様なものだろう……私が本当の女性だったなら、もっとしっかりと責任を取ってもらうところだ」
「責任?」
問い返され、うっと一瞬言葉に詰まった面影が、少しだけ照れながら小さく答える。
「それは……め、娶ってもらう、とか……」
男の…刀剣男士である自分が何を言っているのだろう……けど、内心そうであったら良かったのに、と残念に思う気持ちがあるのも事実だった。
しかしそれは叶わない夢だ。
刀剣男士は刀剣の付喪神、審神者によって顕現させられた歴史を守るための『存在』。
そんな自分達は建前上は政府の管理下に置かれており、審神者という主人に従っている。
そう、自分達が従い、主と仰ぐのは、この審神者という立場に立つ人物なのだ。
だから政府は、刀剣男士同士の婚姻は認めていない。
同性だから、という安直な理由からではなく、彼らの認識に相違が生じる事を防ぐ為に。
婚姻を結べば、当然その二人には他より強い絆が生まれる。
仲間や戦友としての絆ならば、本丸を守る為のより堅固な壁となってくれるだろう…しかし、特殊な絆となる婚姻を結んでしまったら、彼らは何を最優先として動く?
本丸や審神者ではなく、娶り、娶られた相手を第一に考え、行動するのではないのか?
それは何れ、本丸と審神者の安全を脅かす、蟻の一穴となってしまうのではないか?
絶対ではないだろう、二人ともが所属する本丸を最優先に行動する可能性も十分にある、が、そんな不確かな予測に、紡がれてきた歴史を載せる訳にはいかないのだ。
だから、政府は決して刀剣同士達の婚姻は認める訳にはいかないのだ。
三日月と面影がこういう関係になってそれなりの時間が経過しているが、未だに秘匿されているのもこういう事情があるからだった。
こんな不文律がなければ三日月はとっくの昔に面影の手を引き、己の伴侶だと喧伝していただろう。
他の全ての者達に面影が自分だけのものだと知らしめるのは、彼の望むところでもあるのだから。
それをせずに密かに面影と愛を交わすのは、政府側の余計な干渉を避ける為と、何より面影の安全を守る為だった。
面影はプロトタイプの刀剣男士という極めて希少な立場の付喪神であり、政府直轄の刀剣男士だったのだが、あの夢の事件の後に連れ戻したのがこの本丸の審神者だったという事もあり、今は此処に所属という事にはなっている。
しかし、もし政府にとって不利益な問題が生じれば、彼の立場は一気に危ういものになってしまうだろう……それは絶対に避けなければならない。
面影本人もそんな三日月の心遣いは十分に理解しているし、元々目立つのが極端に苦手だった性格もあり、彼との密やかな逢瀬だけでも面影は十分に幸せだった。
「…少しな、企んでいる事があるのだ」
「……?」
不意に物騒な事を言い出す相手に、きょと、と面影は目を見開く。
そんな相手と視線を交わしながら、三日月はいつもの柔らかな笑みを浮かべながら続けた。
「俺はもう神力はそのままで良いと思っていたが……今は違う、もっともっと神力を高めたいと思っている」
「神力……を?」
「この下らぬ戦いをさっさと終わらせ、政府などの全ての軛からお前を解き放ってやりたいのだ。何の制約も無く、お前を娶る為にはそうするしかない」
「!!」
「時間は掛かろうなぁ、神力が極まるまで何千年になるか……はは、流石にその時までには遡行軍との決着も付いていてほしいが」
「………」
壮大過ぎる計画の筈なのにそれを少しの企みと言い切る相手の器の大きさに、暫し唖然としていた面影は、そのままくすりと笑った。
「気が長過ぎる……その前に本体の寿命が尽きるぞ」
「構わぬさ、もし刀剣男士にも彼岸というものがあるのなら、俺はお前と共に逝くつもりだ」
「…………三日月の気紛れに付き合えるのは私ぐらいだろうな」
やれやれと苦笑しながらも、面影はこくんと頷いて三日月の提案を承諾した。
「……私で良いのなら…彼岸でも此岸でも、お前の隣を歩こう」
「うむ…お前以外は考えられぬ」
「但し」
明らか、喜色に満ちた顔をした三日月に間髪入れず、面影はこの日最大の爆弾発言をする。
「…この三が日の残り二日は、三日月との、その……まぐわいは断固拒否する」
「!!!!」
一転、絶望した表情の三日月が縋る様に面影の目を見つめてきたが、面影はこれについては断固譲歩する様子は見せなかった。
この男……やはり自分が復調したらまた身体を重ねるつもりだったか……
「お前は………半ば強制的に女性にさせられ、夜通し抱かれ、足腰立てなくなり、挙句に熱まで出した私に更に行為を強いるつもりか?」
「ううう、言葉に出す程にいや増す己の鬼畜振り……」
申し開きの仕様もない……とがっくりと首を項垂れ、三日月は渋々ながらも面影の下した罰を受け入れた。
実際に面影の身体に負担が掛かって寝込んでいるのだから、これ以上相手を過度に疲弊させる事は憚られたし本意でもなかったので仕方ない。
「あなや………」
それでも、相手に暫く触れられなくなってしまった衝撃に完全にしょげてしまった三日月を見て、仕方ないと面影は苦笑し、布団からごそりと右腕を出してそのまま相手へと差し出した。
「ふ、二日我慢したらまた……いいから。私が眠るまで、手を握っていてくれないか…」
「……面影…」
若者の申し出に瞳を見開いた後、三日月は嬉しそうに笑って頷き、請われるままに面影の右手を優しく包み込む様に握り締めた。
「有難う……ーーーー」
温かく、優しさと力強さを兼ね備えた手が、守護する様に自分のそれを包んでくれた事で、面影は横たえていた身体からふっと余計な力が抜けていく様な心地よさを覚えた。
眠るまで、とは言ったけれど。
きっと自分が眠った後も、彼はこの手を離す事はないのだろう。
そんな相手が見守ってくれている安心感に包まれながら、面影は夢の中へと沈んで行った………
そしてこの年の三が日、面影にとって後半二日間は非常に平和な年始となったのはいうまでもない………