祭り終わりて褥に狂う



 三日月と面影
 二人が本丸に帰還を果たした時には、その地は既に深夜とあってしんと静まり返っていた。
 本当ならもう少し早く帰る事も可能だったのだが、誰にも二人の逢瀬を邪魔されたくないという三日月の我儘で、帰還予定時刻を若干ずらしての結果である。
 流石は筆頭近侍の面目躍如……褒められる動機かどうかはさておいて。
 勿論、帰還の前に通信機でその旨の連絡は入れてあるが、それでも申し訳ないという気持ちは払拭できるものではない。
 遅れた本当の理由が理由だけにあからさまに申告する訳にもいかず、途中で遭遇したアクシデントも利用させてもらった。
 色々と予定が狂ってしまい遅くなるから気にせず先に休んでいてほしい、おつかいの品は明日渡す、という事を述べると、あっさりとそれは受諾された。
『君はいつも真面目に任務にあたっているからね、少しは骨休みをしてほしいと思っていたところなんだ。三日月さんも一緒なら安全面でもそんなに心配は要らないだろうから、ゆっくりと戻っておいでよ。おつかいの件については僕から歌仙に伝えておくし、急ぎのものじゃないらしいから明日でも全然問題ないと思う』
 向こうから聞こえてくる燭台切の言葉に改めて丁寧に礼を述べ、そこで通信は切られ、それから二人は特に以降はトラブルに見舞われることなく、本丸へと戻ったのだった。
 正面玄関から入っては誰かを起こしてしまうかもしれないと、三日月達は庭から回り込む形で直接自分達の部屋がある棟へと移動した。
 本丸の廊下や縁側には所々、直接外に出ることが出来る様に式台が誂えられている。
 某刀剣男士は色々と悪戯を仕掛ける為にそういう場所を時折利用したりしているらしいが、本来の用途は勿論違う。
 どんな場所に在ってもこの本丸が襲撃された際に真っ先に審神者を守り、即座に迎撃の体勢を整える為に、式台を使って目的への最短距離を更に縮めるというのが主な理由だ。
 式台があってもなくても、刀剣男士達にとっては大きな差違は生まれないかもしれない。
 しかし、ほんの僅かな差が積み重なる事で結果は大きく異なることもある。
 命のやり取りが常である戦では、決してそれは小事ではないのだ。
「…皆、眠っている様だな。起こさずに済んで良かった」
 寝所に近い式台に辿り着いて、草履を脱ぎながら面影がほっとした様子で胸に手を当てる。
「俺達には当然、纏う殺気もないし気配も最小限に殺しているからな……特に今は起きて来てもらっても困る」
「…………」
 言外に『これからの二人の時間を邪魔するな』という意志を示した三日月に、面影が沈黙すると同時に顔を赤くして俯く。
 そして少し考えた後で、そろそろと顔を上げて控えめに提案をした。
「その……先に身体を清めるだけでも」
「駄目だ」
 最後まで言わせず、三日月は速攻で相手の申し出を却下したが、珍しく今回は面影も引き下がらない。
 三日月の寝所に足を向けながらも、部屋の持ち主について行きつつ尚も訴えた。
「外に出て、埃や汗で少なからず汚れている……このまま抱かれるのは、嫌だ」
「………」
 丁度寝所の前に到着したところでそう言ったところ、ぴたりと三日月の足が止まったが、その手はまだ襖には掛かっていない。
 沈黙したまま佇む相手に、面影は慌てた様に誤解を解くべく更に口を開く。
「あ…お前に抱かれるのが嫌な訳ではない…! ただ……三日月に抱かれる時は……綺麗な身体でいたいだけ、で…」
 それは誤魔化しでも何でもなく確かに自分の本音だったのだが、いざ口にすると物凄い告白の様な気がして、徐々に言葉尻が小さくなってしまった。
「………その…」
「面影」
 襖をまだ開かないまま、三日月がくるりと身体の向きを変え、面影と対峙する形で相手を見つめた。
「お前の気持ちは理解した、では嘘偽りない俺の考えを述べよう」
「…お前の考え…?」
 問い返した面影に静かに頷き、三日月は訥々と語りだした。
「埃だの汗だの瑣末な事をお前が気にする必要は無い。お前が美しい事は俺が一番良く分かっているし、俺以外の者が知らなくても一向に構わぬ、俺だけが見ておれば良い」
「!!」
 相手は相手で更に物凄い事をさらっと言ってきて、面影が一気に赤くなったが、向こうは気にせず続けてきた。
「そもそも、お前の全ては俺のものだ。身も心も俺だけの。お前がかいた汗すらも、俺の許し無く洗い流す事などゆる……」
「わかった! もう止めてくれ、私の負けだ!」
 湯気が出そうな程に赤くなった面影が、堪らずぱふっと相手の口を自分の掌で塞いでそれ以上の発言…暴言を止めた。
 これ以上聞いていたら、間違いなくこちらの心の臓が破裂する!
「…………」
 口を塞がれた男は、特に反抗する様子もなくそのままにさせた状態で、面影を見つめていた。
「………ああ…もう…」
 何とか三日月の暴走を止めた面影は、掌を離すとそのまま自分の顔をそれで覆って溜息をつく。
 別に張り合っている訳でも無いのに、どうして彼には毎回敗北感を感じてしまうのだろう………
「お前には敵わない……三日月…」
 面影の敗北宣言に、三日月はふ、と微笑み相手を優しく抱きしめた。
「では…観念して大人しく俺に抱かれてくれるか?……正直、俺ももう限界でな」
「……わ、わかった…」
 返した後になって、心許ない返事だと思ったのか、抱きしめられたまま面影は相手の袂をぎゅ、と握って付け加えた。
「…お前に抱かれるのは……好きだ…」
「!……お前は…」
 敵わないのはこちらだ!と内心叫びながら、三日月は襖に手をかけると滑らかにそれを開け放ち、面影を腕の中に捕らえたまま中に進み入る。
 そして部屋へ入ってすぐに襖を閉め、ようやく二人だけの、誰の目も気にする必要のない空間が創られた。
「面影……」
「あ……っ」
 限界だと言ったのが真実であると示す様に、三日月がその場で面影の唇を奪う。
 てっきりそのまま布団へと誘導されるのだろうと考えていた面影は、不意打ちという形でそれを受け、その激しさに翻弄された。
 舌で強く歯列を割られ、有無を言わさず侵入を果たされると、後は最早向こうの蹂躙にされるがままだった。
 強く吸われた舌をそのまま伸ばすと優しく歯列で挟まれ、一瞬、怯んでそれを引こうとすると、今度は向こうの舌が追いかけて来て絡み合い、その度にくちゅくちゅと淫らな音が響く。
 そうしている間にもどちらのものか分からない唾液が口の中に溢れ、端から一筋のそれを零しながらも、面影は朦朧としながらも受け入れ、飲み下した。
「……っは………み、か、づき…」
 あまりに熱烈な口吸いに呼吸の調子を乱した面影が、僅かに唇を離したところで、ほんの少しだけの自由を得た口で相手に願う。
「お願いだ……ここじゃ…いや…」
 襖のすぐ傍など、確かに落ち着ける場所ではない。
 尤もな想い人の懇願に、三日月は苦笑しながら頷いた。
「すまぬ……つい気が急いてしまった……さぁ」
 手を取られ、面影は導かれるままに相手の寝所に整えられていた布団へと移動して、そっとその上に寝かされた。
 布団の側に置かれていた行燈に、三日月がそっと手を翳して神気を熱源として与えると、ほんのりと温かな光が控えめに周囲を照らす。
(…こればかりは、慣れるという事が想像できない、な…)
 毎回、相手に求められ床を共にする時に感じる動悸は、どんなに鍛錬しても治まる事を知らない。
 期待…不安…羞恥…恐怖…そのいずれでもあり、いずれでもない……全ての感情がないまぜになり、自身でも分からなくなってしまう。
 ただ確信が持てるのは…最後には、『渇望』のみが己を支配してしまうということ。
 目の前の男の全てが欲しくて、溶け合いたくて……求めてしまう。
(……本当に、夢かと思う事がある…こんなに美しい男が…)
 千年もの長きに渡り、人々からその美しさを称えられてきた刀の付喪神。
 自分も神ではあるが、彼ほどの神位には到底至らない……なのに。
「どうした……?」
 思案に耽っている面影の様子を訝りながらも、三日月は上から相手に覆いかぶさると、しゅるりと彼の帯を解いてはらりと浴衣の前をはだけさせた。
 神社での交わりの時にもほぼ全裸に近い状態まで脱がせていたが、今回は袖なども全て腕から取り去り、生まれたままの姿にしてしまうが、その行為の中で面影がそっと手を伸ばして三日月の帯に触れてきた。
 この男が夢ではなく、現実に存在するのだと確かめたくなった。
「…?」
「……私が…脱がせてもいいか?」
 一瞬、意外そうな表情をした三日月だったが、それはすぐに嬉しそうな笑みに変わり、勿論だと頷く。
「では頼む…」
 許しを得た形で、面影はそろりと帯を解くと、するっと相手の浴衣を肩から丁寧に引き下ろした。
(………綺麗だ)
 白く艶めかしい肌…自分の肌もよく三日月本人から美しいと褒められるが、この男こそ、美の極致に居る者だと思う。
「腕を、抜いて…」
「ああ…」
 相手の浴衣を傷める事がないように、丁寧に願いながら脱がせてくる面影の望むままに動き、三日月も全ての布地を取り去った。
「…ふふ」
 小さく笑みを零しながら、礼をするかのように三日月が面影の首筋に唇を這わせ、きつく吸い上げる。
「ん…」
 ぴくんと喉を反らせて僅かに身を捩り、色好い反応を示した相手に、三日月が察した様に頷いた。
「……まだ火種が残っているな」
 既に神社でも一度交わり、熱い愛撫も受けている。
 多少の時はおいているものの、一度熱く燃えた身体はそう簡単に醒めることは無く、相手の口づけで再び面影の欲望の炎は燃え上ってしまった。
「あ……身体…熱い…」
 はぁ…と熱い吐息を零す面影の胸の蕾達が早くも勃ち上がりつつあるのを認め、三日月はその二つの突起に指を伸ばす。
 同時に軽く摘まむと程よい弾力を返すと共に、面影の甘い声が上がった。
「はぁ…ああん…」
 夜も更け、他の男士達とは棟が離れている此処なら、声を上げても聞かれる心配はない。
 無意識の内にそれも理解していたのだろう、面影の声は神社の時よりも明らかに大きく、更に艶も増していた。
「…味見をさせてもらうぞ」
 ちゅぷ……っ
 左の乳首は指先でこりこりと捏ね回しながら、右の乳首を口に含み、舌で転がしながら吸い上げると、面白い程に面影の嬌声が上がった。
「そうだ……もっと聞かせよ」
 ほんの少し力を込めてかり…と乳首に噛み付くとびくびくと相手の身体が戦慄き、悲鳴にも近い声が上がったが、そこには苦痛の色は混じっていなかった。
「あ、ああ…し…びれる…っ、これ……なに…っ…」
「……もっと、苛めてほしいか?」
 面影は手を口元に当てて必死に声を耐えながらも頷く。
「ん…っ……あっ……い、じめて……もっと…乳首…噛んで……」
「…っ…本当に、煽るのが上手くなったな……」
 これが計算でないのだから恐ろしい、と思いつつも、素直な恋人に喜びを覚えて三日月は願われるままに快楽を与えていった。
 右から左へと唇を移し、ちろっちろっと舌先で膨らんだ蕾を突き、誘う様に濡れ光るそれをじっくりと噛んで弄んでいると、声を上げながら面影が腰をこちらのそれへと押し付けてきた。
 夢中なのだろう、半勃ちになりつつあった己の分身を三日月の腰に押し付け、擦り付けて快感を求めている姿に、三日月もぞくぞくと背に走る興奮を自覚した。
「そんなに焦るな………ほら、『ご挨拶』だ…」
「…?」
 覆い被さっていた男が手を付き膝を立てて四つん這いになると、自らの分身に右手を添えて、相手の岐立したそれと先端同士を擦り合わせた。
 互いの先走りで濡れた敏感な粘膜同士がにゅるりと擦れると、そこから全身に痺れる様な快感が走り、面影は思わず仰け反った。
「ひあっ…! あああっ…」
 声を上げる相手に構わず…いや、寧ろ見せつける様に、三日月は何度も先端同士を擦り合わせ、その淫靡な光景を晒してくる。
 ちゅっくちゅ…と重なり、離れる度に、先端同士の間に銀の糸が掛かっては切れてゆく…
「んっ、んあっ…! はっ、ああ…あう、ん……っ」
 目を逸らさず、いつしか腰を揺らして自らの先端を相手のものに突き出して重ねようとしている面影に、三日月が悪魔の様に囁いた。
「ふふふ……そう、お互いに気持ち良くなるには『仲良く』しなければな……ほら、お前も手で支えて」
「う……んっ……」
 あまりに快感を追うのに夢中で気付かなかったのか、面影は指摘されてようやく両手で己の岐立を支え持つと、より確実に相手のそれへ擦り付けて快楽を貪る。
「あっ……好いっ…! 先っぽの、口吸い…きもちい……」
「素直だな……お前の身体は…」
 三日月が、器用に腰を揺らして相手の肉棒を慰める傍ら、再び唇を胸に寄せて乳首を弄び始めた。
 固いそれらを解そうとする様に、舌や指先で揉みしだき、捏ね回し、舐めしゃぶるが、その小さな蕾たちは一層固さと大きさを増し、より鮮やかに存在を主張していた。
「……こんなに立派に勃ち上がっているのなら、本当に乳でも出そうなものだが…」
「っ…! そ、んな事…ある訳、ない…っ」
 くすくすと笑みを含んだ口調でそう言われた面影は真っ赤になって当然それを否定するが、身体の反応については反論の余地はない。
 先程から淫らな悪戯を仕掛けられていたそれらは、膨らむ程にじんじんと痺れる感覚をもたらし、面影の冷静な思考と理性を完全に奪い、より素直に快感に反応する様になってしまっていた。
「それは…残念だな」
 本気かどうか分かり兼ねる言葉を言うと、徐に三日月は伏せていた身体を起こし、横になっていた面影の上体へと膝を使って進んで行く。
 そして……
「では、代わりにこちらのを浴びてみるか…?」
「あ…っ!」
 先程まで面影の分身と戯れていた己の昂ったそれを支え持ち、ぐいと相手の紅く育った蕾へと押し付けてきた。
 三日月の唾液で濡れた蕾と、二人の先走りで濡れた肉棒の先端が邂逅を果たし、ちゅくりと小さく音を立てる。
「んああっ…! やだっ、それ、止め、て…っ」
「…そんな顔で言われてもな……」
 三日月の声には笑みが含まれ、彼は行為を止めることは無く、寧ろより強く何度も先端を相手の右胸の乳首に擦り付け、先走りを塗り付けていった。
 彼に指摘された面影の顔は、確かに拒否する言葉に反して明らかにうっとりと上気し、瞳は快感に応える様に潤み、はぁはぁと激しく吐息を漏らす口からは涎が流れ落ちている。
「本当は好きなのだろう…? こうして雄に乳首を犯されるのが…」
「ああ…だって……三日月の…すごく、熱くて……乳首、ヘンになっちゃ…うっ…あ、あ、気持ち…よすぎ…っ」
「…ああ……俺も、とても好い……お前の顔も、応えてくれる身体も…」
 だから、止めるのは無理だ、と、三日月はより一層強く激しく肉棒を擦り付け、右にも左にも、乳首から垂れる程に先走りを受けた面影は甘い悲鳴を上げ続けた。
 達するまでにはいかないまでも、その視覚的、感覚的な刺激で、面影もまた触れられてもいない雄の証を岐立させ、雫を溢れさせ、欲情の炎に焙られていた。
「だめ……もうっ……三日月…っ!」
「…っ…かける、ぞ…面影…っ」
 宣言の直後に三日月が息を詰め…力強く己の怒張を扱き下ろした途端、先端から白濁した甘露が勢いよく迸った。
 それは面影の乳首に激しい勢いでぶつかり、辺りの肌に飛沫をも散らしてゆく。
「んあああっ! 三日月のミルク…熱い…っ! あ、あ…っ! オ〇ン〇ンで、乳首、犯されちゃっ…! はあぁんっ!」
「…ほら…こちらも…な…?」
 射精は幾度も、長くに及び、三日月は右だけではなく左の乳首にも精の迸りを向けた。
 びゅくびゅくと噴き上がっていた精がようやく収まった時には、面影の二つの小さな赤い蕾は、白くねっとりとした露に彩られ、実に淫らな姿を晒していた。
「…面影…」
「ん…あ……みか、づき…っ」
 額にじんわりと汗を浮かべながら三日月が呼びかけると、相手はゆっくりと視線を彼に向け…救いを求める様に手を伸ばして縋り付いてきた。
「お願い…っ…私ももう…達きたい…っ…み、かづき…気持ち好く、して…っ」
「……ああ」
 そっとお面影の下半身に視線を移して、納得の態で三日月が頷く。
 つい先程まで、お互いの肉棒を擦り合わせて高め合っていたところに、相手への乳首への愛撫で更に欲情を昂らせてしまったからだろうか……
 面影の分身が今にも爆ぜそうな程に怒張し、びくびくと跳ねる様に震えていた。
 それでも自分で勝手に達するまでにはいかないのか、まだ絶頂までには至れず、面影は快楽を超えた苦痛に眉を顰めて三日月に助けを求める。
「はや、く……もうっ…げんか、い…っ…」
「すまない……すぐに好くしてやる…な?」
 幼子をあやすようにそっと相手の頬を撫でて気を紛らわせてやり、三日月は面影の両脚の間に身体を割り入れると、自分の顔が相手の雄の目前に来る形で寝転がった。
「さて……お前の胸にたっぷり射精した分、こちらのミルクで補充させてもらうか…」
 左手で優しく亀頭を包み込む様に握り、舌でゆっくりと根元から先端までを舐め上げる傍ら、右手は彼の密やかに息づいていた後蕾に伸ばし、指先で優しく侵入を果たしてゆく。
「ん…ああああ…っ…」
「我慢はするな……好きな時に達って良い…」
 そのままくぷりと先端から雁の根元までを一気に口腔内に呑み込むと、三日月の滑らかな舌が咥えた肉棒の周囲をねるっと舐め回した。
「はああんっ…! あっ…い、い……もっと…なめ、て…っ」
「ふふ……いやらしい蜜が溢れてくるな…」
 じわじわと先端から滲む甘露をその都度舐め取りながら、三日月は自由になった左手の掌で相手の二つの宝珠を包み込み、優しく揉みしだいた。
「此処に溜め込まれているお前のミルク……早く味わいたいものだ…」
「ひぅ…っん! あああっ! いっ、ああっ…! そ、れ…そこっは…だめ…っ!」
「駄目なものか……後ろの口をこんなに濡らすほどに涎を零しておいて……ほら、指も美味しそうに呑み込んでいくぞ…?」
 ぬちゅ……ぬちゅ……と……
 先走りが垂れて濡れた指先は、ゆっくりと細心の注意を払われながら面影の奥へ奥へと進み入ってゆく。
 すんなりと人差し指の全てが根元まで挿入されると、そこに今度は中指が加わった。
 それでも尚、殆ど抵抗なく進めていけるのは、既に神社で一度己を迎え入れていた事も影響しているのだろう。
 その時の悦びを身体が思い出したのか、指を迎え入れた肉壁がうねり、更に奥へと導くかの様に蠢き出す。
「ん、あああ……っ…い、い……もっと…オ、〇ン〇ン…つよく、吸って…」
 ひくんひくんと腰が浅ましく痙攣するのを止められないまま、面影は朦朧とした意識で快感を貪欲に求めていた。
 最早自身が何を口走っているのかも分かっていないのかもしれないが、三日月にとってみれば、自分だけが彼の媚態を見て、聞けているのならそれで良かった。
「よしよし……直ぐに射精させてやるぞ…」
 面影の限界が近い事を悟った三日月が、相手のものを含んだまま一気に激しく頭を上下に動かし、口の粘膜で刺激を与え始めると共に、後蕾の奥を探っていた指先達も縦横無尽に蠢かし始める。
 そして宝珠を揉んでいた掌に力を強めに加えていくと、一際大きな嬌声が部屋に響いた。
「んっ、あっ! あああああっ!! ひっあっ!! それっ、すごいっ! いっく…! 達くうううっ!!」
「……っ!」
 激しく仰け反り、引き攣るような声を上げた面影がびくんと身体を硬直させた瞬間、察した三日月がぐっと深く深くその肉棒を咥え込み、きゅうっときつく吸い上げ、引き金を引いた。
「うっあっ…あああああ~~~っ!!」
 どくっどくっと鈍い衝撃が下半身を走り抜け、そのすぐ後から凄まじい快感が襲ってきた。
 熱の奔流が楔の内側を走り抜け、身体の外へと一気に迸り……絶頂が訪れた。
「ああ、あああああっ!! 射精て、るっ!! いっぱい…っ!」
 潤んだ瞳から涙を零し、口からは涎を流し、面影は自分が放った精を三日月が口で受けるのを目の前で認め、激しく狼狽した。
「い、やっ! み、かづきの口にっ……いっぱい、射精しちゃって、るっ! ああ、だめ、止まらなっ……! ゆるして、みかづきぃっ!」
 止めようと思っても尚、射精は続き、三日月は一向に口を離す素振りもなく、小さく喉を上下させて全てを飲み下しているのが分かった。
(あ、あ……飲んで、る……三日月が……私の、いやらしいミルク……ぜん、ぶ…)
 射精がようやく落ち着いても、その光景を見た面影の動悸は一層速まってしまう。
 愛しい男の口を穢した背徳感と、相手が自分のものを飲み下した悦び…どちらによるものなのかは分からなかった。
「ああ………美味だ」
 ぺろっと舌を覗かせて笑った三日月の表情はいつもの朗らかなそれではなく、何処か妖しげな雰囲気を纏わせており、思わず面影はその姿に見入ってしまった。
 そしてその隙を突く形で、三日月は流れる様な動きで相手の腰を抱くと、器用にその身を反転させてうつ伏せにし、ぐいっと下半身を上へと掲げさせた。
 臀部とその奥の秘密の蕾が露わになる格好。
 面影が慌てて三日月の方を振り返り…その彼の雄々しい昂りを目にして息を呑む。
「あ…うそ……さっきあんなに射精したのに、もうっ……」
 自分の胸を穢したばかりだというのに、相手の雄が既に十分な大きさと固さを保っていると認め、知らず面影の身体が震える。
 しかしそれは恐怖によるものではなく……期待によるものだった。
(どうしよう………抑えられない……)
 あの大きく立派なもので貫かれたら…内を蹂躙され、擦られたら…それはどんなに凄まじい快感をもたらすだろう……
 神社でも抱かれはしたが、あの時はやはり周囲の様子が気になったし、今の様にじっくりと時間をかける事も出来なかった。
 しかも此処なら……三日月が、自分の身体の奥に精を注ぐことを躊躇う必要もないのだ。
 そんな事を考えているとどんどん動悸が速まっていき、はっと自分の浅ましさに気付いた面影は思わず枕に顔を埋めてそれを相手から隠していると、ばれているのかいないのか、笑みを含んだ向こうの声が聞こえてきた。
「そうだな……お前相手だと回数など関係ない様だ……本丸に戻ってから…いや、その前から、俺の『これ』はお前の奥の鞘に埋まりたくて堪らぬのだ…お前の淫らな肉鞘に包まれ、互いに貪り合い、溶け合いたいと暴れている……」
 それを聞いた面影の肩がひくりと震え、彼は再びゆっくりと振り返り…密かに喉を鳴らす。
 相手のあからさまな表現が、自分の欲望にも火を点けてしまったのを感じる。
 三日月が望んだこと…それは自身が望んだことでもあった。
 互いの欲望が明らかになり、それが同じなのだと知った以上…もう何を躊躇う事も遠慮することもない筈だ。
「あっ……わ、たしも……もう、我慢できな、い……っ」
 腰を高く掲げたまま面影がそれを淫らにくねらせ、自らの右手を秘蕾に伸ばしてくい、と広げながら三日月にねだった。
 ここまで淫らな姿を晒して相手を求めたのは、初めてだった。
「三日月……はやく………挿れて…っ」
「っ…! 面影…」
 獣の目をした三日月が密かに息を荒く乱しながら、そっと人差し指で相手の秘蕾の周囲をなぞると、そこは待ち焦がれている様にひくひくと細かく痙攣を繰り返した。
「ああ……こんなに愛らしい彩をしていながら、いやらしくひくつかせて…」
「い、や…っ…もう…焦らさない、で……っ」
 指で弄られる刺激にも物足りなさしか感じなくなってしまったのか、微かに嗚咽すら混じった声で面影が哀願すると、三日月は優しく頷いて己の先端を秘蕾にあてがった。
「では、ゆくぞ…?」
 ぬぷ……っ
「は、あ、ああぁ~~~…!」
 熱く灼けた肉の楔が、ゆっくりと、しかし確実に己の内へと侵入を果たす。
 熱した刃が牛脂(バター)を切る様に、ゆっくりと深く埋まってゆく……
「あ、あ……いい……みかづき……」
「…っ、少し緩めよ、面影……食い千切られそうだ……ふふ」
 嬉しそうに、待ち侘びた様に、己の分身をきゅうきゅうときつく締めつけてくる淫肉の誘いを躱しながら、三日月はくぐもった笑みを零しながら腰を揺らし、進めてゆく。
 そして根元まで全てを埋めたところで、三日月は面影の耳元で囁いた。
「俺を覚えてきたな……お前の『ここ』は」
 一番好いところへ導こうと蠢く内を感じながら、ゆさゆさと腰を揺らすと面影の甘い声が響いた。
「んっ、は、ああぁぁ…! そ、れ、ひびく…っ、あああ…っ」
「もう達きそうな声を出して……まだこれからだぞ?」
 ぐっと相手の腰を抱えた三日月がぺろっと紅い舌を覗かせて笑う。
 そこには、昼間皆に見せている好々爺然とした彼の姿は微塵も無く、ただの雄としての存在があった。
「さぁ…好い声で啼いてくれ…」
 亀頭の部分のみを残してゆっくりと肉棒を引き抜き…一気にどちゅっと最奥までを貫くと、びくんっと面影の背中が跳ねた。
「あ、あぁ~~~!」
 最後は掠れた声で快感に悦んだ若者は、反射的に内で相手の楔を締め付けるが、楔はその誘惑を振り払う様に力強く淫肉を擦る形で再び雁を残して引き抜かれる。
 体内を満たしていた熱い質量を失い、切な気な表情を浮かべた面影だったが、直後、勢い良く肉刀を突き込まれ、再び歓喜の悲鳴を上げた。
 それからは蹂躙だった。
 最初こそ抜き挿しの動きはゆっくりだったが、面影の秘蕾とその奥が柔らかく馴染んでふっくらと息づいてきたのを確認すると、三日月は徐々にその律動を速めて内を思うままに犯し始めた。
 ずちゅっずちゅっと粘膜が激しく擦れ合う音が内から響き、それに加えて互いの腰がぶつかり合う小気味良い音も聞こえ、更に二人の激しい息遣いと面影の啼き声も加わり……その空間は正に淫欲の世界となっていた。
 三日月が律動を止め、最奥まで貫いたところで腰をゆっくりと回すと、既に岐立していた面影の分身がびくっと跳ねる。
「んっ、ああああっ! それっ、好いっ……! もっと奥、捏ね回して…っ」
「はは、好いところに当たったか……よしよし」
 愛しい相手の望むままに、三日月はより一層激しく奥を穿ちつつ、腰を動かしてぐりぐりと肉壺を捏ね回す。
「ひっ! ああああんっ! 好いっ、好いぃっ! い、く、三日月のオ○ン○ンでっ、もっ、達きそ、う!」
「ああ……お前の激しい締め付けで、俺ももう達きそうだ…」
 そんな三日月の言葉に、面影が不意に振り返った。
「あ……三日月……」
「ん…?」
「その……今度は……今度こそ、ちゃんと、私の内で射精してくれ…」
「!!」
「…神社では、射精してもらえなくて……あれからずっと、奥が渇いて、疼いて……堪らないんだ…だから今度は…」
「ああ……そんなに切ない思いをさせてしまっていたか……すまぬ、面影…」
 内を犯しながら、三日月は謝罪の証だとでもいう様に、更に相手の胸の蕾をくりくりと優しく弄りつつ詫びる。
「心配するな……あれから俺もずっとお前の内に射精したくて堪らなかった。直ぐに、お前の一番奥に、たっぷりと熱いのを注いでやる…」
「あっ……ああ、ん…みかづ、き…っ」
 三日月の宣言と、加えられた乳首への愛撫で、面影が悦びの声を上げて腰を揺らす。
「さぁ…共に達こう…」
「う、ん……うんっ…!」
 それから、三日月は更に激しく抽送を始め、面影の内を思うままに犯し抜いた。
「あああっ! ああっ! はげしっ…! もっ、達くっ! 達くうぅっ!!」
「良いぞ……さぁ、達け」
 許しの言葉と同時に、一番強く激しく、ずちゅっ!と最奥を突かれ、面影はあっさりと絶頂へと追いやられた。
「あ、あ〜〜〜っ!!」
 同時に、きゅううっと三日月の肉棒をきつく締め付け、共に達きたいと搾り上げると、彼は眉を顰めながらその誘いに乗じた。
「っ! 射精す、ぞ…っ!」
 どくっ…どぴゅっ……びゅくっ!
「んんっ! あ〜っ!」
 体内に一気に迸る熱い奔流……求めていた相手の欲情の証を注がれ、面影もまた自らの楔から勢い良く樹液を放っていた。
「……っ!」
 強く面影の腰を掴み、ぐぐっと三日月は一層深く楔を埋めながら射精を繰り返した。
「あ、あ…っ……あつ、いっ……これっ…ほし、かった……!」
 息も絶え絶えに、面影の口から渇望していたものが与えられた歓びが滲んだ言葉が漏れ、それを聞いた三日月が薄く笑みを浮かべながら背後からちゅっと耳朶に口づけをした。
「そうかそうか……待たせてしまったな………どうだ? 満足したか?」
「あ…っん…」
 尋ねながらぬぷりと挿入されていた肉棒を引き抜かれ、その感触に小さく声を漏らした面影は暫しの間肩で息をしていたが、やがてゆるゆると顔を上げて三日月の方へ振り返った。
「……ま、だ……ああ、どうして……」
 一度達したことで少しだけ理性を取り戻した様だったが、そんな若者の瞳の中には未だ消えない欲望と困惑の色が混じり合っていた。
 神社で一度激しく燃えた情欲の炎は、時間をおいて一度は小さくなり、火種として燻ぶっていた様だが、今の三日月との交わりで油を注がれ、より一層激しく燃え上がってしまった様だ。
「三日月……もっと…抱いて……達かせて…ほしい…っ」
 達かされたのにまだ消えない疼きに心が乱れている様だったが、既にそんな相手の反応を予測していたのか、三日月は誘う様に彼の唇をそっとなぞりながら囁いた。
「では……今度はお前のこちらの口で、俺のを愛してくれるか?」
「……っ」
「もっと…注いでほしいのだろう…?」
「あ……ああ…」
 魅惑的な声でそんな事を囁いたりしないで……身体が勝手に応えてしまう……
 違う、身体が、というのは詭弁だ……本当は心も…求めている……
「…面影?」
 背後から優しく名を呼ばれ……結局、面影はこくんと頷いた。
 それを受け、三日月はゆっくりと彼の身体から一時的に身を離すと、相手を仰向けにさせて布団の上に横たえる。
 そして続いて相手の胸の上に自身が跨る形を取り、結果、面影の口元に己の分身を突きつける体勢となった。
「あ……っ」
 目の前に至近距離で迫る三日月の欲棒を見て、一度は戻りかけていた理性が、また霧散していくのを感じる………
(こんな……三日月のオ〇ン〇ンがこんな近くに…っ…ああ、精液でぬるぬるに光って……おいし、そう……)
 ぼんやりと思考に霞が掛かった様な感覚を覚えながら、面影はただ真っ直ぐに相手の楔だけを見つめていたが、その内に徐々に彼の瞳の中の欲望の彩が強くなってきた。
 こちらに向けている相手の雄を凝視する内に欲しくなったのか、くっと首を前に曲げて頭を起こし、舌を伸ばしてちろっと零口を舐めると、ぴくんと向こうが反応を示す。
 自分の愛撫で感じてくれている……
 それが嬉しくて、もっと感じてもらいたくて、面影は夢中で舌を伸ばしてぴちゃぴちゃと相手の亀頭を舐め回したが、やがて物足りなくなったのか三日月に哀願した。
「三日月…っ、もっと、こっちに…きて」
 より深く呑み込みたいのだという意志を汲み取った三日月が、ほんの少しだけ困った表情を浮かべて微笑む。
「…辛かったり、苦しければ、すぐに止めるのだぞ?」
「うん……だい、じょうぶ…」
 頷いた相手の方へと更に下半身を寄せ、三日月が先端をちゅぷりと面影の唇に押し付けると、彼はすぐに口を開いて楔を呑み込んだ。
「んんっ………ん、ふっ…」
 精の残渣の残り香を感じながら、夢中で舌を這わせて形を確かめつつ口腔内の粘膜で擦り上げると、微かに向こうがぴくぴくと反応を返してその固さを増してくる。
「ん…っ…み、かづき……好い、か? 私のおしゃぶり…気持ち好い…?」
 そっと唇を離して、代わりにくちゅくちゅと手で茎を擦り上げ、息を整えながら尋ねてくる愛しい男に、三日月はうっすらと汗を浮かべながら満足そうに頷いた。
「とても好いぞ……そんなに美味そうにしゃぶられると、また直ぐに勃ってしまいそうだ…」
「ああ…嬉しい………三日月…もっと、もっと気持ち好くなって……」
 さわり……
「っ!?」
 徐に臀部に触れられ、その奥へと触れてくる何かの感触に、びくっと三日月の背が反った。
「面影……っ?」
「んん……」
 再び深く肉刀を呑み込んだ面影は、口淫に耽りながらその濡れた指先を相手の秘蕾に這わせてつぷっと埋め込んだ。
「っ!!」
 今まで面影に対しては行った事がある、前と後ろへの同時の愛撫を初めて己の身で受け、三日月が息を呑む。
 面影以外とは誰とも身体を重ねた事はないので、無論、後ろへの悪戯を許したのもこれが初めてだった。
(三日月の内…凄くきつい……でも指挿れたら、オ○ン○ン、びくってなった……)
 ゆっくり…ゆっくりと…指を奥まで埋め込んでゆくと、どんどん三日月の分身が固さを増し、角度を持ってくる。
 それを見て、更に感じて欲しくて、面影は激しく相手を吸い立て、指の後蕾への抽送を繰り返した。
「ふ………あんっ!」
 そうしている内に、更に三日月の怒張は反り返り、遂に面影の口の中から飛び出しその鼻を打った。
「この……食いしん坊の悪戯っ子め…」
 糾弾しながらも、三日月は楽しそうにそう言いながら身体を離したが、殆ど反射的に面影が彼に取り縋っていた。
「あっ……いや、まだ……なめた、い……」
 口の中を埋めていたものが無くなった切なさで、身の置きどころがなくなった様子の相手に、三日月が耳元に唇を寄せる。
「これ以上は俺も少々厳しいのでな……先ずは…こちらに、な?」
 ぬぷり、と濡れた秘蕾をいきなり三本の指で犯され、押し広げられて息を詰めた面影に、相手がひそっと小さく付け加えた。
「……達かせたら、今度はお互いに飲ませ合おう…」
「!!……あ…」
 魅惑的な提案に一瞬、身体を歓喜に強張らせている内に、面影の左脚が相手の手によって抱え上げられる。
「さて……獅子を起こしてくれた悪戯っ子を、どう喰らってやろうか……?」
 おそらくは後蕾を弄ってくれた事を言っているのだろう、その刺激で己の刀が最早歯止めが効かない程に昂ってしまったらしい男は、抱え上げた若者の左脚にぴちゃっと舌を這わせながら、相手の開かれた両脚の間に身を滑り込ませた。
 そして更に大きく左脚を持ち上げる形で股間を開かせ、その奥の蕾に怒張した先端をあてがった。
「お前は……恥ずかしがっていながら、見られる事が好きみたいだからな…」
「あ……っ!」
 右側を下にする形で横向きの姿勢を取らされた面影が、大きく左脚を抱えられた事で秘部を露わにされ、激しく首を横に振った。
「いやっ…! またこんな……っ、全部見えちゃ…っ!!」
 ずぐんっ…!!
「ひああんっ!!」
 今度はゆっくりではなく、最初から一気に根元まで突き入れられ、面影は涎を零しながら声を上げた。
「ああ、好いぞ……腰が止まらぬ…!」
 ずぷっ! じゅぷっ! じゅぽっ…!!
 左脚を抱えながら膝立ちになり、激しく腰を前後に動かして自分を犯す相手に、面影はあんあんと自分のものとは思えない甘い声を上げながら、精一杯の恨みがましい目を向けて言った。
「ああ、ん! はげしすぎ……っ! こんなっ格好、ば、かりさせて……み、かづき…の…すけべ…っ」
「! ふふ」
 何とも可愛らしい非難に、三日月は腰を止めずに頷いた。
「そうだな……俺はお前の前ではただのすけべじじいになってしまうらしい…」
 刀剣男士としての風格だの矜持だの…そんなお為ごかしなどどうでも良くなり、ただ、抱きたいと願ってしまう……何度でも、飽き足らず……
「しかし……」
 くっと唇を歪めながら、三日月は先ずはぴんっと相手の左胸の蕾を指先で弾き…続いて股間ですっかり勃ち上がっていた相手の分身の先端を同じく弾いた。
「あっ、はぁ…!」
「お前も俺に負けず劣らず、なかなかのすけべ振りだろう? 見られて嬉しくて先程から暴れ馬の様に跳ね回って、涎で布団がぐっしょりだ……」
 言いながら、ぐちゅりと相手の濡れた怒張を握ってゆっくりと上下に動かして見せる。
「あ、んっ…いや…強く握っちゃ………」
「おまけに身体の内は雄を欲しがっていやらしく絡みついてきおって……そうら、此処が好いのだろう?」
 ずちゅんっ!
「はあぁぁぁんっ!! い、い……好いっ!!」
 最奥を強く抉られ、面影が歓喜の悲鳴を上げた。
「……わかっただろう? 面影……お前は自分が思うより遥かに貪欲で、淫乱なのだ。相手を出来るのはそれこそお前からお墨付きを貰った俺ぐらいだ……ふふ、名誉な事だがな」
 ずっちゅ……ずちゅっ……と繰り返される挿入の音を遠く聞きながら、面影は三日月の言葉を思い出していた。
 あれは…本丸に戻るときに、お手柔らかにと願った時だったか……
『…こちらの台詞だ』
 彼はそう答えて困ったように笑っていた。
 おかしな反応だと思った、いつも蹂躙してくるのは明らかに向こうなのに…と。
 いや、しかし………
 本当に…そうなのだろうか……
 ああ、でも確かに……自分も三日月が相手だからこそ、こんなに乱れてしまう。
 いや、そもそも自分はもう、三日月以外の誰にも身体を許すつもりはないし、生涯の相手は彼だけだと己に誓っている。
 恥ずかしくて、相手に口に出して言ったことはないけれど。
 だとしたら………
(相手が三日月で……良かった……)
 自分をこんなに優しく激しく愛してくれて…淫らでも受け入れてくれる……美しい神で、良かった……
「……ああっ……みかづき……私、が…」
「面影…?」
「こんな、に、いやらしいのは…おまえがみかづき、だからっ…! ちゃんと、責任、とって…」
 見られるのは確かに恥ずかしい……けれど、どれだけ自分が相手を求めているか、それもちゃんと知ってほしい……
「…み……て…っ…」
 ぐいっと横向きだった己の体を仰向けに倒して、面影はびくびくと淫らに首を振る己の肉棒を相手に見せつけた。
「わ、たしの……いやらしいオ○ン○ン……触ってほしくて、こんなになって……切ないんだ……慰めて…三日月……」
「!!………勿論だ」
 身も心も、蕩けるほどに愛してやる………
 にゅちゃっと昂りを握り込み、激しく手を上下させて扱き上げながら、再び激しく律動を再開する。
「んあ、あああっ! すごっ……! と、けそうっ……溶けちゃ、う……オ○ン○ンもっ……奥もっ…! あああ、達くっ! こんなの、すぐに達っちゃうぅ!!」
「良いぞ……ほら、好きな時に…」
「あぁ〜〜っ! み、かづきも一緒にっ! またっ、たくさん、ミルク射精してっ!!」
 びくっびくっと腰を痙攣させながら、相手の絶頂を導く様に肉楔を締めあげる面影に、三日月がぐいと挑む様にそれを強く激しく突き立てた。
「ひっうっ!! ああぁ~~~っ!! いっく、ううぅぅ!!」
「…っく!」
 どくっ…! どぴゅっ! びゅくんっ!!
 幾度目かの絶頂を迎えながらも尚、その勢いは激しく、面影の雄から白い奔流が迸った。
 それとほぼ同時に、三日月もまた相手の身体の最奥に再び欲情の白濁を注ぎ込む。
 幾度も、繰り返し、相手の内側を全て犯す様に……
「い、いっ! あっ! た、くさん…くるっ! 三日月の、ミルク…っ、あああ…どくどくって……っ! く、ううんっ…」
「はは……本当に欲張りな身体だ…」
 ここまできつく搾り取るとは…と思いながら、暫くの間相手の身体の内を愉しんだ後、三日月はゆっくりと肉楔を彼の秘蕾から引き抜いた。
「はぁ…っ…はぁ…っ……あぁ…と、まらな…っ…」
 ふるふると首を振りながら、余韻に浸っていた身体を起こした面影が三日月へと濡れた視線を向ける。
「みかづき……やらしいの、が、とまらない…っ…さっきの…やくそく……早く…」
 挿入の直前に三日月が提案していた飲ませ合い、の事を言っているのだろう事はすぐに察せた。
「!…あいわかった…俺もまだ、お前を貪り足りぬ…」
 じじいと名乗りながら、彼はまるで疲れも底も知らぬように相手の欲求に難なく応じ、横臥位になっていた相手に合わせて、真逆の向きの姿勢で自らの股間が相手の顔の前に来るように横臥位の姿勢を取った。
「さぁ…今度はその口で好きなだけ味わうと良い…」
「あ……ああ…三日月、の…」
 精液に塗れたそれを両手で包み込む様に支えると、面影は急くように唇を寄せてくちゅっと雁の部分までを呑み込み、その下の茎の部分を両手でゆっくりと扱き始める。
「…三日月の、味………ふあぁっ」
 うっとりとした表情で味わっていたところで、己のも相手に含まれた快感に声が上がった。
「お前も…まだ、射精せるだろう…?」
「ん……射精、すっ…射精すから…あっ……いっぱい…オ○ン○ンしゃぶって……」
「はは…やはりお前も相当すけべではないか」
 そんないやらしいおねだりをするのだから…と揶揄しながらも、三日月は望まれるままにぐぐっと喉の最奥まで深く相手を呑み込んだ。
(あっ……すごい……先っぽ、喉の奥に当たって、る…っ)
 こつんこつんと先端が喉奥に当たる感触に腰が震える。
 そして自分も相手のものをより深い場所で感じたくなり、彼に倣って深く深く咥え込んでゆくと、口蓋の奥を肉棒で擦られる度にざわざわと肌が粟立つような快感が走り、その刺激に反応した様に一気に唾液が溢れてきた。
(喉でも感じるなんて……私は、どこまでいやらしく……)
 しかしそう思っても身体の欲求は止められず、面影はそれからも喉の奥まで何度も相手を受け入れつつ、舌で望むままに味わった。
 そして互いに貪り合いながら各々の雄を高め合い、共に爆ぜる様に導いてゆく…
「んっ…三日月…っ…もっ、射精る……」
「ああ…俺も、そろそろ限界だ」
 ぴちゃりと零口を舐めた面影が、熱に浮かされた様に朦朧とした状態で三日月に願う。
 その瞳には、既に理性の光は宿っていなかった。
「今宵は……私の体中を…穢してほしい……内にも、外にも……たくさん…かけて…っ」
「っ!!」
「射精して…っ…私に……」
 本能のみ…欲望のみに衝き動かされて願った相手に、三日月は我が意を得たとばかりに不敵な笑みで頷いた。
「……忘れるな、面影……お前が自身で願ったのだ」
 そして俺は…お前の望みなら何でも叶えよう……
 それからは二人とも言葉を口にする事はなかった。
 まるで獣の様に互いを貪り合い、極め合っていき……そして同時に絶頂へと達していた。
「あっ! 三日月…っ、あつい、すごい…っ!」
「ああ……素敵だ…」
 二人ともが最初の一射は口の中に受け、続いての放出は顔と胸に受けていた。
 彼らを包み漂う精の匂いはまるで媚薬の様にその肉欲をより昂らせていき、二人のどちらともが歯止めになる気など、最早毛頭なかった。
「面影……」
「ん……ああ…」
 求め、覆い被さってきた三日月を、面影は拒むことなく抱き締める。
 互いの肌を重ね、その熱を分かち合いながら、二人はまた激しく求め合い、褥に共に沈んでいった………


「お前が望んだ事だからなぁ……まぁ俺も愉しませてもらったが」
「……………」
 翌日、朝日が昇り清々しい朝が訪れた本丸にて…
 いつか見た光景と同じく、三日月が呑気に布団で横になっている隣では、布団で全身を包んで一切身体を見せない面影が籠城を決め込んでいた。
「……そろそろ照れるのを止めて可愛い顔を見せてくれぬか? 面影」
『………照れてるだけではない』
 言外に「拗ねてもいる」のだと主張する恋人に、三日月はやれやれと苦笑する。
「…俺はお前の望みを叶えただけだぞ? 望むままに、お前の全身を俺の…」
『~~~~~!!!』
 あけすけな物言いをしようとした相手に、面影が即座に布団越しにばふばふばふっ!!と連撃を入れて黙らせる。
「…………」
 どうしよう、向こうは必死で本気なのだろうが、何をしても可愛い……と、三日月が明後日の方向に悩んでいるところで、のそりと布団の山が動いて、奥から面影が久方ぶりに顔を覗かせる。
「………待遇の改善を要求する」
(どこぞの時代の労働者の様なことを言い出したな……)
 そうは思ったものの、三日月は取り敢えずは黙って相手の要求に耳を傾けた。
「ふむ…改善とは?」
「お前との…その…夜の逢瀬を、これまでのせめて半分に」
「却下」
 食い気味に即断した相手に、がばっと布団を除けて面影が主張する。
「私の望みは何でも叶えてくれるのではなかったのか!?」
「俺にも出来ることと出来ぬことがある! お前に望むだけ触れられぬなど、断固却下だ。それは改善ではなく改悪と言うのだ」
「なっ…何も一切触れさせぬという訳ではない…お前に大切に想ってもらっているという事は、私にとっても喜びだ……しかし、しかしな…」
 言いながら、徐々に面影は顔を赤くして、自らの身体を眺めやる。
 かろうじて浴衣を羽織っているその身には、至る所に三日月が付けたと思しき紅い所有の証が残されていた。
 そして一見しただけでは分からないが、髪や肌の一部には、まだ三日月の精の名残も……
「…もう勘弁してくれ。毎日毎日、どうやって人目につかずに浴場に行けばいいか、行ったところで誰かにこの身体を、付けられた名残を見られないか……たかが入浴で頭を悩ませなければならないこちらの身にもなってくれ」
「俺のものなのだ、別に誰に見せてくれてもかまわ…」
「それ以上言ったら二度と抱かせない」
「………」
 ぴしりと三日月を黙らせると、面影ははぁと溜息をついた。
「兎に角、今の状況では誰の目にもつかない様に早朝に起きだすにしても、その…疲れてなかなか辛いものがある。かと言って、入浴しなければ、それはそれで任務に差し支えてしまうだろう。跡は衣類で隠せるとしても……体液までは、流石に……」
「……ふむぅ…」
 言われてみれば確かに…と納得した様子で頷いた相手の態度に、面影は内心ほっと安堵していた。
 恋人を困らせたい訳ではないが、こうでもしないと日々の任務にも支障が出てこないとも限らないのだ。
「つまり、無理に早起きをせずとも人目を気にせずにお前の身を湯船で十分に休めさせ、清潔を保てるような日々を送れるようにしたら良いと…」
「戦に立つ刀剣男士としては贅沢すぎる願いかもしれないが…そうだな」
 夜の営みを半分程度に減らせたら、少なくともこの悩みも半分は無くなるだろう。
 残り半分は……まぁ、これまで通り何とかしよう。
(別に…三日月に抱かれる事が嫌な訳ではないのだから……回数を減らすのはまぁ…あれが続いたら身が持たないし……ちょっとは、残念には思うが)
 これを三日月に言ったらまだ暴走しそうだから言う訳にはいかないが……
「……あいわかった。筆頭近侍として、善処しよう」
 そして、その場で三日月は面影の提案を素直に受け入れたのだった。

 その結果、どうなったかと言うと……
「主に早速上奏し、希望者の部屋の庭に面する一角に露天風呂を誂えることになった。予想以上に好評で希望者も多くてな。提言してくれたお前にも皆が感謝していたぞ」
 あまりにも予想の斜め上の結果になったことで、面影が珍しく大声で「違うそうじゃない!!」と叫ぶ事態と相成ってしまったのだった。
 無論……三日月と面影の部屋にも露天風呂は増設されることと相成ったが、面影の部屋の分は本人が希望したのか否かは不明である………