若月と眉月に深く激しく愛され、疲労で一時気を失っていた面影が再び意識を取り戻した時……
「ん………」
周囲は相変わらず雲の中の様な白さに満ちた世界……
遠く微かに感じる色は、そこに咲く花々の花弁だろうか……
(…まだ、三日月の神域…解かれていないのか…)
どれだけ気を失っていたのかは分からないが、その間ずっと神域を維持出来ているとは……三日月の神力は更に強まっている様だ。
このまま彼の力が増していけば……時間遡行軍との戦いですら、濡れ紙を貫く様に終焉へと導いていくのかもしれない。
「んん………ん?」
そんな事をぼんやりと思いながらゆるりと閉じていた瞳を開きつつ、小さく呻いた彼は、そこで先ず最初の違和感に気付き己の喉に手を当てた。
声が……おかしい…?
そして触れた喉にも違和感が……此処に昨日まではしっかりあった筈の喉仏が無い………
「え……?」
無意識に視線を腕のある下へ向けると、見慣れていた筈の己の腕もまた大きく変貌を遂げていた。
変貌と言っても異形のそれに変じている訳ではなく、紛れもない人間のそれだったが、明らかに見た目が異なっている。
鍛え上げられた成人男性の、引き締まった筋肉を纏った肢ではない……元々色白だった色素が更に薄くなり、筋肉の形すら追えない程に細く頼りない腕に変わってしまっていた。
そう……まるでうら若い女性のそれの様に…………
(何だ………!?)
面影はまだ自分が見ている光景が質の悪い夢の様なものだと思っていた…いや思いたかったのか……
悪夢は早く覚めるべきだとばかりに、面影は少しだけ勢いをつける形で横になっていた身体の上体をむくりと起こす。
その拍子に、申し訳程度に肩までかけられていた掛布団がするりと重力に従い下へと落ちる。
「…………」
部屋の中に拡がる沈黙。
辺りの沈黙に反し、一気に面影の鼓動が速まり、どっと冷や汗が噴き出してくる。
「んな……っ!!」
気を失う前までは、自身の胸は然程厚みはないがそれでもしっかりとした胸筋を誇る男性のそれだった。
当たり前だ、男なのだから!!
それなのに……今のこの……二つのお椀の様にふっくらと豊かな胸は……
その二つの頂に申し訳程度に存在している桃色の小珠は……
自身の身体が………女性のそれに変じている…!?
(ゆっ………夢か!?)
夢であれば醒めれば終わりだ。
そうだ、実は三日月の神域と思っていたが、夢の中の景色なのでは……!?
そんな一抹の期待を抱いた面影だったが、五感を通じてくる感覚は紛れもなく現実のものだった。
「え……」
どうして…と悩みつつも、咄嗟に面影は一度は落とした布団を急いで手に取り、胸元に当てて上半身を隠した。
それは女性としての羞恥心によるものなのか、それともあり得ない姿に変じてしまった己を認めたくないという拒絶の顕れだったのか。
どうして良いのか分からないままきょろっと辺りを見回したところで、面影は隣で横になり寝入ったままの三日月に気が付いた。
最後に記憶に残っているのは若月と眉月の姿だったのだが、いつの間に三日月の姿に戻ったのか、今の面影にはその思考に至るゆとりもなかった。
そう…そうだ…! 彼がいた……!!
「み……三日月……っ、頼む、起きてくれ……」
神域で起きた変化であるのなら、彼が何らかの解決法を持っているかもしれない。
いつもなら彼の安らかな眠りを妨げるような無粋は決してしなかったのだが、流石にこの状況だ、緊急事態として許してほしかった。
「三日月…頼む…起きて……!」
「ん……………う、む……?」
声を掛けるだけではなく遠慮がちに肩に手を置き軽く揺する事で、何とか面影は相手を覚醒させる事に成功する。
「……面影…?」
「ね、寝ているところに本当にすまない…! けど、その……い、異常事態なんだ…助けてくれ…!」
何も知らないだろう相手にいきなり『助けてくれ』と願うのも相当な無理難題なのだが、今の面影の紛れもない本心がそうだったから仕方ない。
「異常、事態………」
三日月もほんの少し前までは若月と眉月に己の身を分けていたのだから、それなりに疲労はあったのかもしれない。
いつもより寝起きが今一つ宜しくない様子で、目を覚ました後も何処か脱力している印象の三日月に面影は少しだけ躊躇ったが、掛布団越しでもはっきりと分かる肉体の変化を相手に示した。
胸だけではなく、よくよく観察したら声の高低も多少違うだろうし筋肉の付き方の変化にも気付いてもらえるだろう。
「その………私の身体が……女性のそれに………どうして、こんな……」
「……!!」
説明としては決して十分とは言えない情報量だったのだが、面影のその台詞を聞いた瞬間、三日月はは、とその双眸を大きく見開き、若者の姿を凝視した。
「…………」
「み…三日月?」
何となく不自然な三日月の反応を訝しみつつ面影は僅かに身を後ろへと引いた……が、相手の男神はそれには構わず、ぐ、と面影が胸元まで被っていた掛布団の端を掴む。
「………っ…」
三日月が何をしようとしているのかは直ぐに察せた。
今の自分の身体を見られるのには少なからず抵抗があったのだが、異常を訴えながらそれの全容を示さない訳にもいかないだろう。
面影は小さく深呼吸をして、覚悟を決めて掛布団をぱさりと下へと落とす。
「ーーーー」
目前に晒された面影の女性としての肉体に、男神は小さく息を呑んで沈黙を守った。
顔の造りは殆ど変わらないがそれでもやや小顔になり、眉も一層細くなっている。
そこからすっと下に続く首は細く長く、男性特有の隆起も認められない。
両の肩もまた軽く掴めば折れそうな程に華奢であり、浮き出る滑らかな流線型を誇る鎖骨はそれだけで艶かしかった。
しかし、そこから下に向かうにつれて身体を象る線は滑らかに左右に広がり、二つの白い果実がたわわに実っており、その頂点には薄桃色の小梅がつんと存在を強調している。
目を惹かれるそれらから無理矢理視線を下へと移すと、豊満だった胸から再びほっそりとした線が腰を象り、更にその下は……布団に隠れて見る事は叶わなかった。
主に上半身しか確認は出来なかったが、それでももう十二分に面影の身体が女性のそれに変じてしまっている事は明らかだった。
目の前にいる三日月が面影の夢の産物でない限り、この事象は間違いなく現実のものなのだ。
三日月に現実を示した後、面影は再び掛布団を持って上半身を隠したが、その頬はうっすらと赤い。
変わってしまったのは彼の肉体だけではなく、もしやしたらその心理にも影響を及ぼされているのかもしれない。
そう、うら若い乙女が男性に裸体を見られた時の様に……
「わ、私もどうしてなのか分からない……んだ……私は間違いなく刀剣男士だった筈なのに…女性になってしまっては、責務が果たせない…!」
女性に変じてからの己の体力など、しっかりとした感覚はまだ掴めていないが、この細腕では碌に本体を握って振るう事も出来ないだろう。
そうなると、存在意義である遡行軍との戦いにも参加など出来よう筈もない。
ならば、自分は一体何の為に存在しているのか……!
「三日月、私は………」
どうしたら良い?と続けようとしたところで、面影はその唇を閉ざす。
「………」
この問題に一緒に立ち向かってくれるだろうと信じて疑わなかった相手が、先程からずっと沈黙を守ったままだったのに違和感を覚えたのだ。
「……三日月?」
「……………すまん」
名を呼ぶ面影に、その美しい男は愁眉の表情を崩す事無く、頭を下げて詫びてきた。
「おそらく………いや、間違いなく……俺のせいだ」
「は…?」
「……俺が、そう望んだからだ」
「え……」
「………俺が若月と眉月であった時、彼らが共に思ったのだ……『女であるお前にも会いたい、触れたい』と……そしてそれは俺、三日月宗近の願いでもあった。だから…無意識下に俺の神力で、お前をそうなる様に変じさせたのだろう。二人の姿から今、俺に戻っているのも力を使った影響だ……彼らであることを維持出来なかった」
「!!」
ぴきっと面影の身体が今度こそ硬直する。
こんな身体になってしまったのは……三日月の、せい?
「すまぬ………俺と同じ存在でもあるのに、奴らを止める事が出来なかったのは事実だ………」
まだ本調子に戻れていない面影がぱくぱくと口を開閉させ、何とか声を絞り出す。
「な、なら……私は…私の身体は……?」
「一時的に女性になっているだけだ……若月と眉月と同様に、この神域だけでのみ維持できる変化………無論、此処から解放されたら元の…男のお前に戻るから、それは案ずる事は無い」
「………………そう、か」
一番懸念していた事がいずれは解決されるだろうという事実を聞かされ、ほっと面影が安堵の吐息を漏らした……が、無論、これでそのまま終わりという訳にはいかない。
ぎりぎりぎりぎり…っ!!
「あいたたたたっ」
「は・ん・せ・い・し・ろっ!!」
珍しく強気の姿勢で面影が三日月の左耳の耳朶を摘まんで引き上げながら相手を糾弾し、向こうは素直に痛みを訴えたが、流石に罪悪感は感じているのか抵抗する素振りは見せなかった。
「………っ?」
その中で、不意に面影が三日月の微妙な異変に気付き、耳朶を摘んでいた手の力を少しだけ緩める。
(………顔色、あまり良くない、な)
平安の貴族の様な出で立ちである三日月は元々色白ではあったが、今の彼の様子はその白さとは少し異なる……血色が明らかに宜しくない。
おそらくは今しがた相手が暴露した様に、神域の中だけでの話とは言えこの身体を自然の摂理を超越する形で創り変えてしまったのだ、かなりの力を使ってしまったのだろう。
あの二人から一人の身に戻ったのもそうだが、先程起こした際にやたらと反応が鈍かった理由もそれを考えると納得がいく。
しかし……しかしだな…………!
「……はぁ」
溜息を一つつき、ゆっくりと三日月の耳朶から手を離した面影が首を横に振りながら苦言を呈す。
「………一体何を考えている……一時的にでも私を女性にする為にどれだけの神力を使ったんだ………そんなに真っ青になって、馬鹿馬鹿しい」
彼ほどの神格を持つ付喪神がこれ程に疲弊する程の力の消費……それが己に注がれたのかと思うと何とも言えない気持ちになってくる。
「お前はそう言うだろうとは思っていたが………俺は、それでも見たかったのだ……俺と、女として番う、俺だけのお前を……この手の中に抱きたかった」
「…っ!!」
呆れの色を滲ませていた面影とは対照的に、三日月はあっさりと、しかしなかなかにとんでもない告白をかましてきた。
美しく強い、至上の美しさを誇ると言っても過言ではない付喪神。
彼が望めば、いつでも、いくらでも、望むままに男でも女でもその身を…いや、命すら差し出す事だろう。
それだけの魅力が彼にはあるのだ。
なのに、三日月はそんな戯れなどまるで興味がないとばかりに目も顔も背け、それらを自分にのみ向けてくれる。
時折、凄まじい執着を見せる事もあるのだが、それを受け止める時にすら感じるのは畏れよりも悦びだった。
その悦びが、今はより一層強く感じられている様な気がするのは……女性になってしまったからだろうか?
熱烈な告白をしながらも相変わらず青白い顔をしている三日月に、面影は小さく苦笑した。
こんなに疲弊している身体では、望んだ女性の自分に会えたところで傍で休むことぐらいしか出来ないだろうに……
「…残念ながら、本末転倒だったな」
「ん?」
「その所為で疲れているんだろう? 酷い顔色だぞ」
そっと両手を伸ばし、面影はせめてもと三日月の身体を優しく抱き締める。
「面影…?」
呼びかけてくる男に、今は女となった若者が耳元で囁く。
「仕方ない……ちゃんと反省したのなら、休んでいる間は傍にいてやる。お前の眼鏡に適う女の私であったのかは分からないが」
「…………ふ」
面影の言葉を静かに聞いていた三日月は暫し沈黙を守った後、含み笑いを漏らしながら己を抱き締めてくれた相手を抱き返したかと思うと、ぐいと重心を傾けてそのまま布団の上へと押し倒してしまった。
「え………?」
何が起こったのか分からず呆然としている面影の身体を隠していた布の塊がその勢いで剥がれ、改めてその全てが三日月の目前で露になる。
「ああ…………やはり美しい」
眩しそうに目を細め、心からの賛辞を送ってきた相手の姿にようやく自分が置かれている状況を理解して慌て出す面影だったが、仰向けに押し倒され、両手首を抑えつけられた姿では手も足も出ない。
いつもであれば、相手の愛の囁きに照れる事はあっても身体を見られても動揺する事はなかった、だって同じ男性なのだから。
しかし今の身は女性のそれ…面影本人ですら馴染んでいない肉体を愛しい男に晒すというのはあまりにも気恥ずかしかったのだろう、彼…いや、彼女は慌てて身を捩って三日月の視線から逃れようと試みた。
「や、いやだ…っ、そんなに見ないで……っ」
「………っ」
愛しい相手が、女性の細い身体をくねらせ、羞恥で頬染め、瞳を潤ませて訴えてくる………
神であってもそんな姿を見せられたら大いに昂るものなのか、月の神の瞳に妖しい光が宿り、ぞくぞくっと身震いする程の戦慄が背を走った。
「みかづ……んっ…!」
懇願する面影の唇を半ば強引に塞ぎ、それ以上の発言を許さない姿は、いつもの悠然とした三日月とはまるで違うもの。
それが彼の持つ隠されたもう一つの顔だと知るのは、夜毎、身体を重ねる面影のみだったが、その若者ですら今の三日月の強引振りには驚いていた。
(え……うそ………まさか…)
この状況は……これからどういう展開になるか最早疑う余地もない、と察せはしたが、それでも面影は何とか唇を一度離し、三日月をまじまじと見つめた。
「お、前……疲れてるんじゃ……っ」
「うん、まぁな」
「だったら…! 大人しく寝ておけ……っ」
「こんなに愛らしく美味しそうなお前を前にして、何もしない程に男を捨てたつもりはないが?」
「つ、疲れているのに、そ、そういうコトをするのは……無理、だろうっ…!?」
「そんな事はないぞ。男は疲れている方が昂ることも…」
「このすけべじじいっ!!」
「正直に答えただけなのに心外だな…」
緊迫感があるのかないのかよく分からない応酬が繰り広げられていたが、結局は三日月による力技で封じられてしまう。
「俺の神力と引き換えに得られた奇跡だ……大人しく抱かれよ」
「うん、ん……っ!!」
再び唇を塞がれ、びくびくと手首を激しく揺らしたが、押さえつけられたまま全く解放される様子はない。
(女って……こんなに弱い、のか…?)
正直、元の身体であっても相手の拘束から逃れられたかは分からない、過去にもそれが叶った経験はない。
しかし微塵も動ける気配もないとは、流石にここまで力の差があるとは思っていなかった。
「ふ、あ……っ………」
男の唇は冷たかったのに、滑り込んでくる舌は熱く濡れている。
口の中を犯すその舌の動きもとても激しく、正に蹂躙と呼ぶに相応しい荒々しさだった。
(はげし………これも……女、の身体、だから……?)
これまでも幾度となく与えられてきた口吸いとその快楽より、今の身で受けるそれらの方が強く激しいと思ってしまうのは、どうしても劣ってしまう肉体の力のせいなのだろうか…それとも……女としての、心の…変化……?
困惑し、混乱している間にも三日月の熱い舌は己のそれを絡めとっては吸い上げ、離れたかと思えば今度は口腔内の粘膜を一つの細胞すら逃さぬという様に舐め回してきた。
「ん……あ………」
どうしよう……こんなに…嵐の様に荒々しいのに……気持ち、いい………
どうしようと言いながらもどうとも出来ず、面影は唯々翻弄されるばかりだった。
先刻までの抗っていた素振りも今は全くその片鱗もなく、寧ろ濡れた唇は自ずと開かれ、潤んだ瞳はとろんと夢を見ているかの様に虚空を見つめている。
「はは………何という愛らしさだ…」
ちゅくりと音をたて、透明な糸を互いの唇の端で繋ぎながら口を離した三日月がそう言うと、今度はその口を面影の白い首筋へと移しながら片手を女の胸へと運んでいった。
「はぁ……っ!」
自由になった唇から、驚きが混じった嬌声が上がる。
反らした喉に甘く噛み付かれている一方、面影の柔らかな胸には食い込む程に三日月の片手が乗せられていた。
いよいよ始まろうとしている己の身への愛撫に、今更ながら面影は小さく震えながら慄いた。
男の身体で受けた愛撫と女の身体で受けるそれは、やはり違うものなのではないだろうか……そんな未知の恐怖があった。
刀傷等による苦痛より、心込めて与えられる愛撫の方に恐怖を覚えるなど滑稽極まりない話だが。
「柔いな……ほんの少し力を込めれば折れてしまいそうだ……ああ、大切に触れてやらねば……」
自らに言い聞かせる様に呟きながら、尚も喉に吸い付きつつ、三日月はゆっくりと手を動かして面影の豊かな乳房を堪能し始める。
「ん……っ……く、あぁん…っ、あっ、それ……だめ…」
必死に訴えている筈なのに口から洩れる声は信じられない程に甘く、雄を更に煽る結果になってしまったばかりか、無意識で行っているのか自らの指を物足りなさそうに舐めて見つめてくる面影の姿は正に『雌』の姿だった。
「これは………いかんなぁ」
言葉だけ見たら呑気なものだが、その時三日月の口から発せられたその音には、隠せぬほどの感情が渦巻いていた。
いかんなぁ、俺を煽るなど。いかんなぁ、その姿を他の誰かに見せるなど。いかんなぁ、まるで自制が効かなくなってゆく。
いかんなぁ……愛して啼かせて狂わせて……思い切り俺に縋らせ、善がらせたくなる………!
「…お前の所為だぞ?」
「え………あっ、ああぁっ!」
ぺちゃ………ちゅ……ちゅうぅ……っ……
やわやわと白く柔らかな二つの小山を優しく絞り上げる様に両手に力を込めながら、三日月はその右の頂に実る桃色の実をじっくりと舐め上げると、そのまま口の中に含み、吸い上げた。
強く、弱く、小さな桜桃を舌の上で転がす様に嬲ると、そのざらついた感触に反応して果実が忽ち固くなり、ぴんと尖ってゆく。
「い、やぁぁっ…! あっあっ…っ…! そんな強く吸っちゃ、あああんっ!!」
悲鳴の中にも蕩けた声音が混じっているのは自覚出来たが、面影本人もそれを止める事は出来なかった。
(どうして……っ……声…勝手に…媚びて、る………っ!)
そんな事を考えている間にも、相手に含まれた乳首からも、揉まれている乳房からも、凄まじい快楽が伝わってくる。
(すごい………元の身体の時と、全然、ちがう………これが…女の身体……?)
「ふふふ………気に入った様だな…?」
かり…っ
「ひゃう…っ!?」
含んだ果実に優しく歯を立て、三日月が昏い笑みを浮かべる。
「そら……もうこんなに固くなって…からかい甲斐のある果実だな…」
「ん、あ……やだ、ぁ…っ」
「嫌…なら止めるか…?」
「え……」
そう問われ、自分が発した言葉の意味を理解した面影がは、と我に返った様な表情を浮かべ、赤くなって俯く。
止めたいと思って止められるなら事は簡単だが、それが最早不可能であるという事は面影本人が分かっていた。
それなりに忍耐力はある方だと自負してはいるが、これまで三日月に開発されてしまった身体は女になってもそれを忘れる事はなく、彼から与えられる快楽にあまりにも従順になってしまっている……
そして今まさに三日月からそれを与えられている身体は、最早抑えられない程の情欲の炎に炙られているのだ、耐えるなど出来なかった。
「い、いや………やめ、ないで……」
「………いい子だ」
浅ましい願いを口にしながら恥じらう女神の姿は、男神にとっては何よりのご褒美だっただろう。
「では、たっぷりと可愛がってやろう……此処が好いのだろう?」
「ふあ……あ…みかづきぃ……っ」
小山を責める手捌きは一旦中断され、三日月の両手の指先が二つの桜桃を摘まんでくりくりと弄り回す度、魚が跳ねる様に相手の背中がしなった。
「くうぅぅんっ…! や……し、びれ…ちゃ……」
指による愛撫だけでなく三日月の舌も右に左にと忙しなく二つの山の頂を行き来していたが、まどろっこしくなったのか、徐に彼が両脇からやや強く二つの膨らみを中央に向けて押し付け合い、隣同士に並んだ果実を同時に口に含み始めた。
「ひあぁ…っ!! そんな……一緒に、なんて…っ!」
「こうした方が、より気持ち好いだろう…?」
ぴちゃ…ぴちゃ……と胸元から水音が響く度に、そこから全身の末端にまで快楽の波が押し寄せて来る。
そんな刺激に耐えながらうっすらと薄目を開けてそちらを見ると、三日月が赤い舌をそよがせて敏感な果実を嬲っている様が網膜に焼き付けられた。
(あ………どうしよう…っ……身体……とまらな……っ!)
小刻みに震える中、時折びくっびくっと大きな痙攣が面影の身体に走っている反応に、三日月が何が起ころうとしているのかを察する。
「ほう………そうか、よしよし……胸だけで達けそうだな…」
「あ、あ………やだ……も……い、いく、いく……っ!」
この、身体の奥から生まれて来る見えないうねりは覚えがある……けれどいつものと…男性の時のとはまるで違う…もっと…もっと……!
「良いぞ……そら、達け!」
促す声と共に、男の細い指先が痛い程にきつく果実達の果汁を絞る様に圧し潰した。
「っーーーーー!!!」
ぎゅうっと瞳を固く閉じ、背を限界まで反らして身体を硬直させながら面影が絶頂を迎える。
堪らずぽろっと目尻から涙が零れたが、無論、それは苦痛によるものではなかった。
(なに………これっ………!!)
今まで経験した絶頂とはまるで違う……襲ってくる波に呑まれた後もまだ浮き上がれず、波の中で翻弄されている様な感覚……
人の身を象り顕現した後で、最低限の教育を政府筋に施された際に人の男女の相違について聞いた事がある。
男性は女性より、外敵に備える為に快楽を受けた後でも覚醒するまでの時間が短いのだと。
そして女性はそれに比し、男性から愛された余韻に浸る時間が長いのだとも。
そんな聞き齧っただけだった知識を、こんな形で経験する事になるとは思わなかったが…………
「ふふ………好かった様だな…?」
「あ………」
達く時の表情を見られていた事に気付き、身体を寄せてくる三日月の顔を見られなくなった面影が俯く。
そんな可愛い仕草をする若者を揶揄する事もなく、笑みを深めた美神は再び相手の身体へと手を伸ばした。
一度は絶頂に導いてやったが、無論、ここで終わらせるつもりはない。
達かせたとは言え、胸への愛撫など中間地点に過ぎないのだ。
「……っ!!」
さわり…と下腹部へと指先を滑らせ、更にその下へと男が触れようとし途端、びぐっと露骨に面影が震えて身を固くした。
ほぼ同時に両の下肢もしっかりと閉じ合わせ、それ以上の他人の侵入を拒んだのは、彼、いや、彼女の意志と言うよりは本能的な身体の反応だった。
「……面影?」
「あ……っ…」
自身の身体の反射的な行動に面影本人も吃驚した様子だったが、その肩の震えは止まる事なく、瞳にも明らかに怯えの色が浮かんでいた。
(どうしよう………怖い……)
まるで、これから男に純潔を散らされる乙女の様な心境だ…いや、実際そういう状況なのだ。
こんなに心を乱されるなんて……最初こそ呆れていたが、三日月の神力は成る程、確かに凄まじい効果を持つものらしい。
女になってまだ数刻と経っていないのに、もう自分の内面はそういう存在として染め上げられてしまっている。
しかし、おそらくそれだけではない。
女を知らないからこその根本的な恐怖というものもあるのだろう。
知識も経験もほぼない女性の身に変えられ、碌にそれに馴染みもしないまま、もうその最奥に触れられようとしているのだ、本人すらまだ触れた事も無いのに。
無知は容易に恐怖を生む……今の自分がまさにそれなのだ。
「す…まない………あ、当たり前だが、その、全てが初めてで………どうしていいのか、分からない……」
確かに、刀剣男士…男性として顕現した存在がいきなり女性の身体になっただけでなく、その初めてを男に捧げるなど先ずあり得ないだろう。
そんな事態に追い込んだのは間違いなく自分だ、それを理解しているが故に、三日月は少しだけ申し訳なさそうに眉を顰めながら面影の頬に唇を落としつつ囁いた。
「…………俺も謝らねばならん…面影をそうしたいと願ったのは他でもない俺なのだから………だがすまぬ、お前の気持ちを分かった上でも、俺はお前を諦める事は出来ぬ………欲しいのだ、お前の全ての初めてが…」
「………っ」
普通なら、こういう事態に巻き込んだ三日月に対して数発ぐらいは鉄拳を叩き込んでも許されるだろう程の相手の暴挙だったが、面影はそうはしなかった、いや、出来なかった。
確かに暴挙ではあったが、それは憎悪に依るものではなく愛情が深すぎるが故、という事を理解していたからだ。
理解はしても納得は出来ない、という事もあるのだろうが、どうやらその鉄拳を耳朶を引っ張る罰に置き換えられる程に、自分はこの月の神に入れ揚げてしまっているらしい。
我ながら……呆れる程のベタ惚れっぷりだ。
「~~~~~」
まだ恐怖は消えてはくれない、初めてなのは変わりないのだから。
しかし……愛する者を得た人間の女が経験する事なのだと思えば………出来ない事ではない、だろう………
「……はぁ…」
溜息を一つついてから、面影は真っ直ぐに三日月を見つめた。
「………お、お前じゃなければ……絶対に、許さなかったからな……」
「っ!!」
遥かに高い神格を持つ相手を唖然とさせるという功績を成した事にも気付かないまま、面影は照れ隠しなのか、恐怖を押し隠す為か、男にしがみ付いて表情を見せない様にしながら続ける。
「い………今の私は……男を知らない生娘、なんだからな…………優しく……扱ってくれ………」
身体と同様に、声も震えていた。
「………可愛い奴め」
絞り出すような三日月の一言……それも微かに震えていた。
配慮を望む言葉で、一切の配慮を捨てたくなる程の欲情を掻き立てるとは……それを無自覚でやってのけるとは……
「俺をこんなに追い詰めておいて、それでいてなよ竹の姫の様に扱えと…………はは、あいわかった」
叶えてやろうではないか……他でもない、愛しいお前が望むのならば。
「初めてお前を抱いた時の様に、俺の全てを懸けて優しくしてやろう………案ずるな…俺に委ねよ」
「…………う、ん……」
泰然として、揺るぎない自信と共に言われては、こちらも最早覚悟を決めるしかない。
今一度、ぎゅ、ときつく目の前の男を抱き締めながら、面影は恐々とではあったが下半身に込めていた力を緩めていった。
唯一と認めた愛しい神に、自らも触れた事のない秘密の花園を晒す事を許したのだ。
そんな乙女の覚悟に、許しを与えられた男は敬意を表す様に直ぐに手を伸ばす事はなく、先ずは優しく白く細く伸びている下肢へと触れてきた。
(あ…………)
下肢の付け根から膝頭までをゆっくりとゆっくりと左右交互に繰り返し撫で上げてくる。
少しでも余計な緊張を解いてやろうという三日月の優しさなのだろう。
その位置も最初は外側だったのが徐々に内側へと移ってくると皮膚も薄くなり、刺激をより強く感じられるようになってきた。
「は………ぁ…」
むず痒い様な、もどかしい様な、微妙な感覚に声が漏れる……自分の声なのにそうとは思えない、高く細い声には明らかに艶が混じっていた。
(三日月の指………優しい……撫でられてるだけなのに、気持ち良くて……)
でもどうしてだろう……撫でられる度に身体の奥がむず痒くなって……頭までぼんやりして…………
「………」
男の劣情を煽る様な喘ぎ声と吐息を傍で聞きながら、三日月はその時が訪れつつある事を察し、いよいよ次の段階に行動を起こした。
「…………ひ…っ!!」
突然、びくんと激しく面影の全身が跳ね、喉の奥から引き攣った悲鳴が上がる。
瞳を大きく見開いた彼の姿を捉えながらも、今度は三日月は行為を止める事はなかった、代わりに……
「大丈夫だ……恐れるな………」
宥める様にそう囁き、意識をそちらへと逸らす為なのか、優しい口づけを幾度も面影の顔の至る所へと落としていった。
「お前は唯……俺を感じていればよい…」
そういている間にも三日月の細くしなやかな指先は面影の神秘の花園へと侵入を果たし、ゆるゆると淫花の花弁を撫で、擦り、絡めて戯れている。
触れる前から胸への愛撫の影響で既にその秘唇は淫らな粘液で濡れており、その液体は聖域からも溢れて太腿にまで伝おうかという程だった。
「良い子だ………女になっても、感じやすい身体なのだな……」
くちゅ………くちゃっ………
「あっ……やだ……ぁ……音、たてない、で…っ…!」
身体の奥から聞こえてくる淫らな水音が、どれだけ己が快感に反応しているのかを表している様で、面影は泣きそうな声で懇願した。
音が立つ度に花園から全身に走る快感………聞いた傍から跳ね、くねり、悶える身体……そして三日月の指が踊る度に、奥から新たな蜜が溢れてくる感覚。
嗚呼、ばれてしまう……私の身体がこんなにいやらしい事が………下の唇からこんなに浅ましく涎を流している事が………
(でも、止まってくれない………恥ずかしいところ弄られて……私の身体…悦んで、る………いい…気持ちいい……)
「………ふむ」
最初こそ緊張でがちがちに固まっていたが、与えられた秘唇への愛撫で身も心も蕩け始めてきた様だ……
察した三日月が、花弁を弄っていた指先を園の中心へと運び、その奥に埋もれていた花芯の先端を擦り上げると、甲高い声が面影の口から発され、全身が硬直した。
「ひああぁぁっ!!」
腰から下がまるで別の誰かのものの様にがくがくと揺れ、三日月が触れた箇所から雷の如き衝撃が全身に走る。
それは紛れもない快感…しかし、触れられただけでここまでのものを感じた事は男性の時にはなかった。
(なっ……なに、今の……っ!! 奥の、どこかに触られただけ、なのに……こんなに感じるなんて………っ!!)
「……好い、だろう……? 陰核………女のオ〇ン〇ンの様なところだからなぁ……」
「んああっ! はっ、はぁっ…! だめ、そんなに触らないで…っ!」
大袈裟に聞こえるが三日月の愛撫は決して粗雑なものではなく、寧ろ初めてである乙女を十分過ぎる程に気遣い、触れるか触れないかという程に繊細な指使いだった。
しかしそれでもこれ程の過剰な反応を示したのは、面影が感じた快感があまりにも凄まじく、これまで経験がないものだったからだ。
男性の時に雄楔に受けた愛撫で感じていた快楽など、比べ物にならない……!
「ひうぅんっ!! あ、そんな…っ! 摘まんじゃ……いやぁっ…!!」
優しく先端を幾度も擦っていく内にその花芯が徐々に大きく成長し、頭を表に露出させたところを摘ままれ、より大きな快楽を刻まれる。
直に見た事もない、しかし触れられる事で感じている秘密の宝玉は、決して大きなものではないのに………
三日月に悪戯を施される事によって一層大きく、快楽に対しても敏感に成長していたその器官に翻弄されている内に、面影は周囲がどうなっているのか、自分がどういう姿でいるのか、まるで理解出来ていない状態だった。
だから、ぎりぎりまで気が付かなかった。
いつの間にか、自身の両下肢が大きく左右に割られており、三日月が身体を沈めて頭を秘苑の直前まで近づけているという事に……
「え……っ!?」
気が付いたのは、指での愛撫が不意に止み、その数瞬後に宝玉に微かな吐息を吹きかけられた時だった。
「ああ…っ!!」
見られてしまっている……!!
自分でも見た事のない、女体の秘められた場所を……あられもなく脚を開いた、浅ましい、濡れた淫部を………!!
「見ちゃ……」
嫌だ、と続ける前に、一瞬早く、三日月の舌先が赤く熟れた雌芯の先端をぴちゃりと舐め上げていた。
「っあぁぁ~~~っ!」
身体が痙攣し、目の奥に光の粒が飛んでいくのと同時に、快感が四肢の末端までをも支配する。
信じられない事に、ほんのひと舐めされただけで気を遣りかけてしまった。
かろうじて頂までは踏み留まったものの、快感は依然体内に留まり凄まじい速さで全身を循環している。
「ふふ………隠れていた蕾が出てきたか……もっと可愛がれる様に剥いてやろう…」
「っ!? そっ…それは……」
駄目だ!
そう言いたかったのに、既に行動に移していた相手より先んじる事は出来なかった。
若者の淫肉の真珠は紅く淫らに染まり、まだ下半分は肉の礎に埋もれていたが、三日月の白い指に摘ままれたかと思うときゅうと真珠が圧し出された。
そして間髪入れずに三日月がその宝珠を根元から舌先でちろりと舐め上げる。
「いっ…! あああ~~! み、かづきぃっ! はっ、は、ひぁあっ!! わ、たし………おかしく、なるぅ……っ!!」
もし男性の身体のままだったら、刺激が強過ぎて失神してしまっていたかもしれない…
真っ白になった頭の中でそんな懸念を浮かべながらも、面影は続けて与えられる刺激に幾度も下半身を震わせ、甘い悲鳴を上げ続けた。
ぴちゃ、ぴちゃ…と小さな水音を立てながら、三日月は確実に面影の性感を高め、より快感を感じられる様に陰核を舌で幾度もくすぐる様に舐め続けている。
そうしている内に、秘唇の更に奥からとろとろと熱い淫液が溢れて苑をいやらしい輝きで彩っていき、その様を見ていた男神が小さく笑った。
「感じているのだな………」
「い、いや……言わないで……っ」
いやいやとむずかる子供の様に首を横に振る面影の姿を見つめ、目を細めた三日月は尚も真珠を舌で嬲りながらその下に隠されている小さな秘窟に手を伸ばし、ぬるりと人差し指の第二関節までを挿し入れた。
「あ、あぁ…っ! ゆ、び…挿入って……!」
これまでは弄られていると言っても外側の話だったが、いよいよ肉体の内側に相手の身体の一部が侵入してきた事を受け、再び面影が恐れる様に身体を戦慄かせる。
そんな面影の反応を気遣ってか、三日月はじっくりと女芯への舌での愛撫を施しながら蜜洞の入口を指の腹で繰り返しなぞり、優しく圧していく………と、洞穴の腹側の一箇所を擦った瞬間、一際強く面影が反応を返してきた。
「あっ、あふぅうっ!! そ、こぉっ……! ふああぁぁんっ!」
「ああ………そうかそうか……此処がお前の好いところ、なのだな…? では………」
目の前の女体の秘密を暴いたとばかりに、尚も淫穴の秘密のツボをやわやわと繰り返し圧しながら、これまでは舌で可愛がっていた陰核を初めて口の中に含んで吸い上げた。
「ひうぅっ!! あっあ~~~っ!!ーーーー」
がくっがくっと腰から下を激しく痙攣させ、限界まで背を反らしながら面影が声を上げたかと思うと、そのままがくりと脱力し、しどけない姿を布団の上に晒した。
その様子から、美しい乙女が相手に訴える間もなく絶頂を迎えてしまった事は明らかだった。
初めてなのに、愛しい男に誘われるままに二度の絶頂を迎えたその身体には玉のような汗が無数に浮かび、上気した肌を妖しく彩っていた。
「は………ぁ……」
「……ああ、やはり女性に変じても、お前の愛らしさは変わらぬな……全て俺のものにして、神域(ここ)に閉じ込めておきたい程に……」
惜しみない賛辞を送りながら、三日月は再び前の乙女の身体を翻弄するべく秘密の泉の奥へと舌を潜らせてゆく。
それと同時に彼の形の良い鼻の先端が女の宝珠に当たり、擦っていき、二重の愛撫を与え始めた。
ぴちゃっ……ぴちゃっ……
「ひああぁぁん! あ、あ…三日月…っ……みかづきぃ…っ…そんな、はげしくしちゃ……やぁ…っ」
三日月が顔を埋めている己の秘処の奥から、猫が水を飲む時の様な音が響いて来ると同時に、ざらついた粘膜が敏感な蜜洞を穿る感覚が襲ってくる。
幾度も幾度も繰り返し舌が蠢いては淫液を掬い取っている筈なのにその音が止む気配は一切なく、その行為の中で一度は絶頂を迎えた事で鎮められていた面影の肉欲が、再び頭をもたげて渇きを訴えてきた。
(どう、しよう……繰り返し達かされた所為で身体、敏感になってる……お、奥まで舌で弄られて…また、また…っ…)
このままでは然程時を置かずして三度目の絶頂を迎えてしまいそうだと面影が自覚したところで、不意に三日月の動きが止まった。
「………?」
「……このまま達かせてやっても良いのだが……そろそろ俺も一度、鎮めてくれぬか…?」
「え………あ…っ」
顔を離しながら身を起こした男がそのまま膝立ちになると、彼の言葉の意味を面影は即座に理解する。
(み、みかづき………あんなに大きく……すご、い…)
見せつける様に生娘に己の身を晒した三日月の男楔は、完全に腹に沿って勃ち上がり、面影からその裏筋の浮き上がりがはっきりと視認出来る程に昂っていた。
面影が二度も達する中、相手は一度も自らの欲情を解放する事もなくずっと若者の艶めかしい啼き声を聞き続けていたのだ、忍耐の限界が近くなっても仕方のない事だろう。
(あ………なに……身体の奥が…へん……)
男性だった時にも、相手の雄を見て昂った経験はあったが、今認識している身体の変化はこれまで経験したものではなかった。
下半身の中央…その奥がずくりと爛れた熱を孕んだかと思うと、無視出来ない疼きが生じてきたのだ。
切っ掛けは間違いなく、三日月の雄をこの目で見たことだろう。
どきどきと速まる鼓動を感じながらも生じた身体の変化からは敢えて目を逸らし、原因である相手の肉刀へと意識を戻す。
(……『そういう行為』なら……初めてじゃないし……)
つい数刻前(?)までは男の身だったが、男に奉仕した経験はある。
その点は生娘とは異なるが、過去の経験で動揺を避けられるのは良かったのかもしれない、と、内心ほっと安堵した面影だったのだが………
「あ…あの……どう、してほしい…?」
手でだろうか……それとも口で……?
やるのであれば相手が望む様に愛してやりたいと思った若者が三日月にそう恥じらいながら尋ねると、向こうは少し思案する様子を見せ……ひそ、と面影の耳元で何かを囁いた。
「…っ!!?」
ぎょっとした顔で見つめ返されたが、三日月は一向に引く事も怯む事もなく、逆に愉しんでいる様な笑顔すら浮かべて続ける。
「折角、女の身体のお前に愛して貰えるのだ……今しか出来ないやり方で愛されたいと思うのは当然だろう?」
「……っ…そ、れは…そう、だけど……」
三日月から望まれた行為はかなり恥ずかしいものらしく、面影の頬の赤みが一気に増していき、吃りながら答えあぐねていた。
しかし幾度か相手と視線を交わし合ったところで、絶対に引く気はないのだろうと悟り、仕方ないと覚悟を決めた様だ。
その裏には、もしかしたら疼きを長時間放置したくないという思惑もあったのかもしれないが…………
「も、もう………お前の望みなら…仕方ない…な……」
受諾の返事を返し、おず…と身を改めて布団の上に仰向けで横たえ、不安げな面持ちで三日月を見上げる。
「よく、分からない、から………やり方…教えて……」
「うむ……あいわかった」
頷き、男はぐいと相手の細く白い肢体を両脚で挟み込む様な形で上に乗り上がると、十分に大きく固く成長した熱楔を面影の豊満な二つの乳房の狭間に乗せた。
(う、わ………熱い…)
肌に触れた男性の証が岩の様に固く、皮膚を焼きそうな程に熱を孕んでいるのを感じた瞬間、背中に電流が走った。
男の時に手や舌で与えていたのとはまた異なる昂ぶりへの向き合い方により、己の中に生まれていた『女』がそういう反応を返したのだろうか。
そんな初心な反応を見せてくれた相手に、三日月が優しく言葉で促す。
「ほら……両脇から強く押えて、しっかりと挟んでくれ」
「う、あ………うん」
言われるがままに両脇から掌を乳房の側面に当てて中央へと寄せる様にすると、より一層、雄の熱楔と肌が密着し、感じる熱の範囲が広がった。
「そのまま押えて………動くぞ」
「ん、あ………っ」
ずりゅっ……ずりゅっ………
既に自身の体液でも濡れていただろう雄が、面影の肌に浮かんでいた汗の玉の助けも受けて滑らかに双丘で作られたトンネルを前後し始める。
(あ……やだ……この格好だと……オ〇ン〇ンで、乳首まで擦られて……)
肌を雄に繰り返し擦られると同時に熱い粘液を塗り込められながら、面影はじっと自らの胸元を凝視する。
微かな水音を生んでいるそのトンネルを通過する度に、赤い果実が二つ、男根に擦られくにくにと形を変えてゆく。
同時に、肉塊の先端が彼の眼前へと突き出されてくるのを、面影は視線を逸らす事も出来ずに熱っぽい瞳で見つめていた。
(こ、こんな……こんな近くまで、オ〇ン〇ンが迫って………目が逸らせない……!)
先端の窪みから淫らな雫が溢れ、茎を伝って胸に擦り付けられる度に音が響き、そんな官能的な光景に面影の頭の中が犯されていく。
「はぁ………は、ぁ……っ……」
自身の口から漏れ出る吐息にすらも脳内を乱され、面影は胸を犯してくる相手の肉棒に対して欲求が湧き上がってくるのを止められなかった。
(三日月の……なめ、たい……)
「…舌でも、可愛がってくれるか…?」
欲望が頭の中に浮かんだのをまるで読み取った様に、三日月が彼の望みに便乗する様に願ってきた。
「………っん…」
きっと請われなくても自らそうしていただろう…が、そのまま男の要請に乗る形で面影は頷き、そろりと舌を差し出した。
ぴちゃ……っ
(はあぁ………これ、好い……っ)
胸に昂ぶりを挟み込み、慰める一方で、肌を淫液で穢され、犯され、雄の濡れた先端に舌先を触れさせ雫を舐め取っていく………
追い詰めながら追い詰められてゆく……二人のこの状況を考えるだけで身も心も熱くなっていった。
「……良い眺めだな…」
自らの欲棒を胸の形が変わる程に挟み込み、擦り上げられながら、先端を繰り返し舌で貪欲に舐めている姿は、この上なく劣情を煽ってくれている。
その煽りに、三日月もうっすらと汗を浮かべながらより速度を速めて楔の前後運動を継続させた。
「んっ……ん…っ……は、む…っ」
速度と比例して、面影の舌の動きも激しく、貪欲さを増してゆく。
最初は舌を触れさせるだけで一杯いっぱいだったのが、繰り返すに従い多少のゆとりが出て来たのか、それとも肉欲が膨張してきたのか、より相手を刺激する様にわざと零口を抉る様に舌先を尖らせて捻じ込むなどしていた。
「ん……っ、これはこれは……しとやかに見えてなかなかのお転婆姫だな……では、俺も」
本気を出すか……
嘯くと同時に更に楔の動きは早く、激しく、荒々しくなり、その摩擦で乙女の柔肌が火傷を負ってしまうのではないかと疑う程であり、面影の口元に突き出される先端も、その勢いで幾度も相手の唇を打った。
「ふっ……はふっ…! うむ、うんっ…あふぅっ……!」
「……さて………そろそろ穢してやろうか…?」
その言葉の意味を悟り、面影は拒むどころか反射的に首を縦に振り、自らの望みを口にした。
「み…みかづき………かけて、いっぱい…みかづきの、あついの……っ」
「………っ!」
その言葉が終わったと同時にずりゅっと一際勢い良く楔が前へと突き出され、面影の唇と並びの良い前歯に雄刀の切っ先がこつんと当たった。
それが……引き金だった。
「ふ……っく……!」
「っ…!!」
男の呻き声が聞こえた時、は、と目の前に視線を向けた面影は、そこで構えていた男楔の先端の窪みが大きく開いたかと思うと、白い奔流がこちらに一気に噴き出してくる瞬間を見てしまう。
「あ………」
びゅっ! びゅるるるっ!!
「ふあぁぁぁんっ!!」
びしゃっ、ぴしゃっと耳を打つ音が響く度に、顔の至るところに濡れた熱が打ち付けられてゆく。
(あ、つい…っ! すごいっ…い、いつもより、いっぱい……!)
面影の感覚の通り……三日月がこの時放った白濁の量は明らかに普段より多く、その分、面影の顔面の殆どを白い樹液が穢しており、処どころには粘った雫がとろりと垂れ流れていた。
今更ながらにその勢いと量に圧倒された面影は、両手で頬に流れていた雄の液を触り、どくんと鼓動を強くする。
(これ、が………み、かづきの……本気の証………)
そして続いてまだ胸の中央に載せられたままだった男刀を見遣ると、射精をしたばかりとは思えない程に依然大きく固く怒張しており、視線を上へと移すと、こちらを見下ろす男神のそれと交わった。
口元は薄く笑っているのに……その瞳は全く笑ってはいなかった。
冷えている様に見えて、その奥には消え様のない炎が燃え盛っている……こちらだけを真っ直ぐに見据えて……
その視線の意味に嫌でも気付いてしまった面影は、それにより思い出した肉の疼きに身を震わせた。
(犯される………ああ、これから本当に……私は……犯されるのか……)
彼の逞しいあの昂ぶりを突き立てられて……きっと激しく…とても激しく………犯されるのだ。
(あ、やだ………お、思い出させないで……)
先程まで可愛がられていた女の身体が再びそれを思い出して熱を孕んでくる……
その熱に乗じる様に、三日月が全てお見通しと言うかの様に再びぬちゅりと濡れた花園へと指を伸ばし、今度はそのまま肉洞へと侵入を果たしてきた。
乙女への気遣いは忘れないまま、また入り口をじっくりとなぞりだすと、まだ潤いを保っていた秘穴から再び滾々と泉の恵みが湧き出し始めた。
「ん…あっ…あっ……やっ……んふぅ……あ、ん…」
面影は、初めて指を伸ばされた時の拒絶の色は今は完全に消え去っており、再び与えられ始めた愛撫の心地よさに素直に自らを委ね、身を重ねている三日月の耳元で甘い声を惜しみなく上げ続けた。
(恥ずかしい…声、止まらない……ああ、そんなに掻き回されたら…また、溢れてきちゃう…っ)
とくん……とくん……と、身体の奥で灼熱の塊が新たな熱の雫を生み出し始めたのを感じた彼…彼女に、思わせぶりな三日月の甘い囁きが降りて来る。
「ああ…いやらしい涎で俺の指をこんなに濡らして………これはしかと確かめ、栓をしてやらねばなぁ…どれ」
その言葉の後、入口に留まっていた悪戯好きの指達が、男の宣言を裏付ける様に少しずつ少しずつ慎重に肉壁を圧しながら奥へと侵入してゆく。
最初は一本だけだったのが、二本……最後は三本まで増えて行った。
同時に、緊張を戻さない為なのか、再び胸の果実にも吸い付きちろちろと舌で遊びだす。
それは慎重という皮を被りながら、面影の欲情を追い詰め煽っていく狡猾な罠でもあった。
(ん……みかづき……やさし……きもちい、けど……足りない…)
三日月の指と舌が蠢く度に快感が生じ、抑えられない声を漏らしているにも関わらず、面影が愛撫を最も望んでいる場所に指は至っていない。
求めるのはもっと奥……誰も触れた事のない…秘密の……
愛撫を受ける度に逆に面影の欲望がより増していくが、指の進みはあまりにも遅く、まどろっこしさに腰が揺れてしまう。
もっと奥…もっと深く……早く、早く来て……暴いてほしい……!
渇望は大きくなるばかりだったが、そんな淫らな願いを口に出すのは憚られ、せめて向こうがこちらの欲求に気付いてくれる様、面影はより激しく身体を揺らし続けた。
そんな言葉を交わさぬ秘めた攻防が暫く続いていたが、事態を変えたのは三日月だった。
「おやおや……一番奥まで塞いでやったのにまだこんなに溢れさせて……困った子だ…」
「ああ……っ…そ、んな…」
そんな筈はない……だって、疼きは間違いなく更に奥まった場所から生じているのだから……なのに、そんなところが一番奥だなんて………!
しかし、相手の言葉が嘘偽りではないという事実はすぐに分かった。
彼は尚も指を秘蜜の孔に埋めており、くちくちと内側を擦っていたのだが、孔の入口の部分に水かきの部分が当たっているのを感じたのだ。
三日月の細く長い指でも奥には至れないのか……と落胆したが、今この時にも肉の疼きは容赦なく己を攻め立ててくる。
その責苦から逃れたいと、面影は必死に三日月に縋り付いた。
「いや……いや…っ……もっと…奥、が…いいっ……みかづき…お願い、たすけ、て…っ!」
腰をどれだけ揺らしても、声をどれだけ上げても、まるで身体は許してくれない……欲しいものを与えない限り、ずっとこのまま苦しまなければならないのか……
この苦行から救ってくれるのは目の前の男しかいないのだと、心の何処かで理解していた面影がか細い声ながらもしっかりと相手に訴えると、向こうはぴたりと指の動きを止め、ずるりとそれらを三本とも一気に引き抜いてしまった。
「んあ…っ…あ、やだ…ぬ、抜かないで…」
引き抜かれた感触を一瞬だけ感じたものの、直ぐにそれらが失われた喪失感が襲ってきて面影は更に激しく動揺したが、目の前の男は全て見通していると言う様に笑った。
「おや、困ったな…指で無理ならもっと大きなもので栓をしなければなぁ……」
そう言いながら相手の忙しなく揺れる腰に己のそれをぐいと押し付けると、面白い様に面影の動きがぴたりと止んだ。
(あ……っ)
熱い……指より熱く大きな肉塊が秘蜜の花園に押し当てられ、面影は目を見開く。
そう……分かっていた…指で届かなければ別の何かでより深く奥まで可愛がって貰ったら良いのだ……
当然だが向こうはその正解を既に知っており、こちらが限界に近い事を見越して求めているものをこうして示してきた。
「…もう良かろう………欲しいか? 面影…」
愛しい者を苦しまない様に十二分に愛撫を施してきた三日月が最後の確認とばかりに問い掛け、対する面影は悩む時間も惜しいとばかりに即答する。
「うん……お願い、三日月……早く、ちょうだい…っ」
「おお……あいわかった…」
しがみ付く生娘を優しくあやす様に幾度かその頭を優しく撫でると、三日月はゆっくりと腰を動かし、自らの肉楔の先端を濡れすぼった肉壺の奥へと沈めていった。
「ん、ん……あぁ~~…っ」
挿入ってくる…絶対的な熱と質量に気を失いそうになりながらも、面影は三日月の身体に縋って初めての経験に耐えていたが、その勢いが余って握り締めていた男の肩に爪を立ててしまった。
「あ………っ」
ぐっと固く閉じていた瞳を開くと、肩に走る幾筋かの生々しい傷跡…そこから滲む深紅の血が視界に飛び込んでくる。
何という事を……自分が、愛する男の身体に傷を付け……血さえ流してしまった……!
どうしよう、止めなければ…と内心慌てるものの、当然、今は身体を勝手に動かせる状態ではない。
そうしている内にもじわじわと血は滲んできて、それを凝視していた面影は唇を傷口に寄せた。
傷を付けたのは紛れもない自分……罪悪感が湧き上がる一方で、白い肌に浮かび上がる生々しい傷がまるでこちらを誘っている様に見えてしまい、夢中で口を付けた。
「……っ」
艶めかしい感覚が肩に生じた三日月が首を巡らせてそちらを見遣ると、そこにはうっとりとした表情の面影が、濡れた舌を覗かせて自らの傷付いた肩にそれを這わせていた。
ぴちゃ……ぴちゃ……
瞳に理性の光は宿っておらず、恍惚に満ちた表情で水音を立てながら自らの傷を慰撫するその姿に、三日月の抑えていた獣が覚醒した。
「お前は……本当に……」
困った様に苦笑を浮かべたのも一瞬。
直後には雄の顔をした彼は、緩やかに進めていた腰をずんと一気に前へと圧し出していた。
「くふぅぅぅんっ!!」
肩を舐める為に俯けていた顔を仰け反らせ、面影の苦し気な声が響き、同時に三日月の興奮を滲ませるそれが重なった。
「何故それ程に俺を煽るのが上手いのだか……!」
一度も雄を受け入れた事のない女としての面影の秘泉を圧し通り、三日月の肉刀は更に奥へ奥へと分け入っていく。
「んくっ! あっ! あぁっ! やっ、おおき…っ!」
処女を失う際には破瓜の痛みを伴うというのはよく聞く話だったが、面影が今その時を迎えた時、感じたのは苦痛よりも寧ろ圧迫感だった。
痛みが全く無かった訳ではないが、それよりも圧倒的な圧迫感によって痛みを感じる余裕がなかったというのが正しいだろう。
三日月が勢いをつけ少しずつ奥へと侵入を果たす度、面影は肺内の空気を圧し出される様に声を上げていたが、ほぼ全てが肉壺に納まったところで一旦腰を止めて侵入者の男が尋ねた。
「面影……辛くはないか…?」
「ん……うん……へ、いき……」
多少の苦痛はあったものの、訴える程ではなかったので首を横に振り、面影は否定する。
おかしな話ではあるが、刀剣男士だった事で痛みに対する免疫が高かったのかもしれない。
勿論苦痛を避けられた一番の理由は、三日月が慎重に慎重を重ねて面影の花園を優しく解してくれていたからだろう。
「そうか………大丈夫だ…直ぐに好くしてやるからな…」
ずちゅ………ぐちゅ………
「あ、あ……っ」
ゆるゆると腰を蠢かして面影の秘壺の内を擦り始めると、その圧迫感に加えて肉襞からもたらされる感覚に、ぴくんと小さく肩を揺らし、小さく甘い声を漏らす。
その声音には確かに苦痛を窺わせる様子はなく、少しずつ肉襞を擦られる度にそこから生じる快感の細波に素直に応え始めていた。
(あ…っ…身体の内……三日月で、いっぱい………ああ、オ〇ン〇ンが擦れる度に…だんだん…気持ち良く、なって…)
初めてでもこういうものなのか……それとも…私の身体が……淫らだから……?
擦れば擦る程に高まる快感に、まるでそれを伝える様に面影の蜜壺の壁が本人の意志とは関係なしにきゅうきゅうと男の証を締め付けた。
「おお……初めてなのにもうこんなに嬉しそうに頬張るとは……よしよし、腹いっぱい食べさせてやるぞ…?」
三日月の愛撫のお陰で潤滑油代わりの愛液が十分に溢れていたためか、彼がより強く激しく抽送を始めてからも苦痛はそれ以上増す事もなく……
「はあぁん……っ…あっ、んっ…い、いいっ…! おっ、奥に、届いて…っ! ああん、そこ、もっとぉ!」
「うん、ここか…? そぅら…」
肉襞を掻き分けて最奥の扉をとんとんと叩かれると、面影は全身が悦びに戦慄くのを感じながら夢中で三日月にしがみ付いた。
「ひぃんっ! あっあっあっ! オ〇ン〇ンでたたかれてっ……な、か…悦んでる……っ!」
男の身体でこうやって身体を繋いだ時の快感以上のそれに、悦ぶと共に驚くしかなかった。
こんなに気持ち良くなるものなのか……
確かに男の時に受け入れる器官は、そもそもそれが目的である様な構造ではない。
しかし、当然女性の身体は違う……雄を受け入れる場所はそれによって満たされると、その精を求める為に本能に従い、副産物としての快感が伴ってくる。
今の自分は正に初めて雄を受け入れ、女の悦びを刻まれ、教え込まれているのだ。
(……三日月の、女に……なって、いる………)
神域にいる時だけのこの身体……それでも、彼だけのものになれるという事実は嬉しい……
「ああっ…三日月……もっと…お前だけの…私に…して……っ」
「!……今更だ」
短く答え、三日月はいよいよより激しく腰を前後させ面影の快感を高める一方で、密かに向こうが与えて来る刺激を愉しんでいた。
(これは……油断ならんな…)
面影はどうやら、俗に言われる『名器』の持ち主らしい。
通常の男性であれば、この絡みつく無数の襞から与えられる快感に耐えられず、直ぐに達してしまっていただろうが、幸い自分はその快感を愉しみつつ相手を善がらせる程度の甲斐性は持ち合わせているつもりだった。
「…女のお前も、俺でなければ満足出来ない身体にしてやろう……覚悟せよ」
そろそろ限界も近いだろうと察していたので、三日月は相手をそこへ導くべく、より速く勢い良く女芯を貫き始めた。
「あ、あああああっ!! すご、いっ、はげしい…っ! なか、こわれるぅ…っ!」
壊れる、という言葉の一方で、腰を揺らして無数の襞を蠢かせ、雄を貪欲に締め上げながら快楽を貪る己の姿に気付いていない面影は、最早生娘の衣を脱ぎ捨てた『女』だった。
「壊してやる………そして俺好みの女に成れ…」
「み、かづき……っ…みかづきぃっ!! ああぁ~~~っ!!」
間近で覗き込んで来た雄獣の瞳の奥に輝く三日月が愉悦に揺れ、必死に相手の名を呼んだが、そこまでが限界だった。
嗚呼、呑まれる………身が焼ける程の快楽に………!!
「~~~っ!! っ! う、ぁ…っ!!」
「ふ…ぅ……っ…!」
どく……っん!! びゅっ、びゅくっ…!!
放たれた精の奔流が女の秘苑の最奥に叩きつけられた。
(あああ……!! あつい…っ! いっぱい、いっぱい内に注がれて……達っちゃうぅ…!)
内腔が灼熱の白濁に浸されていくのを感じながら、身体の痙攣を抑えられず面影が女性としての絶頂を迎える。
ずっと見たかった景色を、美しい肌に珠の汗を浮かべながら三日月は瞬きもせずに見つめていた。
己と交わり、昂ぶり、精を受け止めながら絶頂に至る愛しい女性の姿……
「綺麗だ………面影…」
「あ…………」
そっと額に口づけを落としながら囁く三日月の声は酷く優しかった。
しかし、面影はまだ気付いていなかった。
疲労色が強かった筈の三日月の血色がいつの間にか改善し、肉楔がまだ萎える気配も無かったという事、そして図らずも自らの艶姿がより一層相手の欲望を掻き立て、獣へと変じさせているという事実に……………