ある日、遡行軍の動きと思しき歴史の異変が生じたことが確認され、本丸から一期一振を含めた六振りが遠征へと出陣することになった。
「日向君も行くんだ。短刀は日向君一人だけなんだね?」
「うん。今回は偵察と言うよりは、裏で動いている遡行軍の殲滅が第一目的だから、僕が行くのはこっちが掴んでる情報の確認のためってとこかな。勿論、戦闘でも出来るだけ頑張るよ」
出立の前の時間、鯰尾や薬研は兄である一期一振を含めた全員の見送りに正面玄関まで出向いていた。
「そんなに長い期間の遠征でもありませんが、暫し本丸を離れます。鯰尾、薬研、私がいない間もしっかり本丸の…主の守護を頼みますよ」
「俺達も同行したかったけど…主の采配じゃあ仕方ないな。確かに今回は俺達より太刀や打刀の方が適任だ」
「いち兄なら心配要らないとは思うけど…でもやっぱり心配はしちゃうよ。気を付けて、早く帰って来てね!」
薬研鯰尾のそれぞれの見送りを受けて、一期一振は朗らかな笑みを浮かべてこくんと頷いた。
「ええすぐに……二人とも、周りの皆さんにご迷惑をかけないようにしてくださいね。では、行ってきます」
そして彼ら六振りは、揃って本丸の正門を潜り、転送装置へと向かって行った。
「………」
「ははは……一期一振は、お前達の前ではやはり剣士である前に兄なのだなぁ」
鯰尾達が兄の出陣を見送っていると、その後ろから同じく見送りに出ていた筆頭近侍である三日月が笑いながらそう呼びかけてきた。
「三日月さん…」
振り返って青の衣の男を見遣ると、彼はさして問題ないという様にゆるりと頷いた。
「心配は要らぬだろう、一期一振以外の者達も腕の立つものばかりだ。それに…兄としての注意をする余裕があるという事は、今回の遠征、自信があるという事なのだろう」
「…そう、ですね」
「ま、三日月さんが言う通りだろうな。此処に残る俺達が色々気を揉んでも仕方ない、その分しっかりと本丸を守る方に意識を向けようぜ、鯰尾」
薬研が前向きな発言をしたことで鯰尾もようやく吹っ切れたのか、三日月宗近に続いて頷いた。
「だね、俺達も出来ることを頑張ろう」
そして、皆は再び本丸へと戻りその日、自分達へと割り振られていた任務や内番をこなすべく動き出していった。
その夜……
「ね~~~~~、薬研~~~~、暇だよ~~~~」
「だからって何で俺の仕事場に来るんだ……」
昼間は至極真面目に任務に取り掛かっていた鯰尾だったが、夜になり、夕餉も終わって自由時間になると、内番姿のラフな格好で薬研の私室へ特攻をかけていた。
特攻と言っても特に何をしに行った訳でもないらしく、部屋についたらそのまま相手の部屋の机前を占拠し、座り込んで頭を机の上に乗せてぐだぐだと管を巻いている。
対し、部屋の持ち主である薬研は、私服に自前の白衣を羽織った姿で、山から採取してきた薬草の乾燥具合を確認している真っ最中。
上手く乾燥が進んでいたらそのまま破砕して粉にしようと考えていたところに、同じ兄弟分の鯰尾が訪室してきたのだが、それに構わず彼は真面目に薬草を見分けつつ冷静な言葉を相手に投げかけた。
「だって一人だと暇なんだもん」
「ここに来たって暇なだけだろ。そんなに暇を潰したいなら三日月さんとこにでも行けばいいじゃねぇか」
「そんなことしたら二時間は離してもらえないよ」
「暇は潰せるだろうが」
けんもほろろな相手に、鯰尾はぐにぐにと机に頭を乗せたまま身体を手持無沙汰に揺らしてみせる。
「そうじゃなくてさ~~~……同じ悩みを持つ者同士で話したいと思って来たんだけど」
「同じ悩み?」
自分と鯰尾が?と、ふと薬草を弄っていた手を止めて薬研が視線をそちらに移すと、向こうの悪戯っぽいそれが合った。
「ん~~…欲求不満?」
「怒るぞ」
にへっと笑った相手に即答すると、薬研は溜息をつきながら再び薬草の選別へと意識を向けたが、鯰尾も引き下がらずに食い下がってくる。
「けどさぁ! いち兄がいなかったら実際暇になっちゃったでしょ!? いち兄がいつも通り本丸にいたら、今頃三人で愉しめてたのに…」
「大声で言うことじゃないぜ…ここは本棟から外れてるけど、あまり下手な事は言うなよ」
はぁ、と息をついて薬草を机に置いて手放すと、薬研はかけていた眼鏡を外して軽く首を縦に振った。
「まぁ……いち兄がいたらもう寝所に居るだろっていうのは同感だけどな」
薬研が認めた通り、一期一振が本丸に在籍している時は、彼を含めた三兄弟は夕餉が終わって暫くしたら割と早めに寝所へと引っ込む規則正しい生活をしていた。
傍目から見たら、一期一振が部屋で兄弟達の勉強などを見ていたり早寝早起きを奨励したりと、非常に面倒見の良い兄として管理監督している様子であり、周りの刀剣男士達もそんな彼らを微笑ましく見守っていた。
しかし、実は……
「…やっぱり欲求不満だ……いち兄を抱けないなんて…」
ぼそりと呟いた鯰尾の言葉そのままの通り、三兄弟は秘密裏に身体を重ねる関係にあった。
兄弟だから惹かれたのかそれとも他の理由があったのかは分からないが、一期一振が二人に対して兄弟以上の情愛を抱いている事を知った鯰尾が、薬研と共に相手を抱いた事が契機だった。
一期一振はそんな二人の行為を拒む事もなく彼らを受け入れ…それからずっと弟達に抱かれる生活を送っていたのである。
「……いち兄も同じ事を考えてるかもな」
昼間の清廉潔白を描いたような一期一振とは違う、淫らな夜の彼の顔は二人以外は知らない。
毎日弟達に啼かされていたあの兄が、遠征で彼らと離れたら、果たして何日耐えられるだろうか……
もしかしたら今頃、他の男士達の目から離れたところでこっそりと自身を慰めているのかもしれない…と思ったところで、薬研は頭を振って鯰尾に部屋を出るように促した。
「鯰尾、用事がないなら部屋に戻れって。こっちはまだ薬草の加工とか残ってるんだ」
「用事~?」
「怪我でも病気でもないなら此処に来る必要もないだろ? 先に寝所に行ってたらどうだ?」
「んー…そういう意味でなら用事はあるんだけどな…薬研センセ?」
「? 畑仕事で虫にでも刺されたか?」
確か昼間は畑当番だったよな…と思い出している薬研に、机前から立ち上がった鯰尾は相手の方へと歩み寄り、すりっと身体を擦り付けつつ耳元で囁いた。
「虫に刺されてはいないんだけど……腫れちゃって苦しいんだ…ココ」
言いながら、薬研の右手を取ってその掌を己の股間に押し付ける。
そこに潜んでいる器官が、内番服の布地を押し上げ固く腫れているのを知らしめると、鯰尾が熱い吐息を薬研の耳へと吹き込みつつ、その耳朶を軽く噛んだ。
「ねぇ……治して…? 薬研センセ…」
「……欲求不満が過ぎるんじゃねぇか?」
「俺を追い出してから、一人でしようと思ってたでしょ? どうせなら二人で気持ちよくなった方が良くない?」
くすくす、と笑いながらそう指摘され、はぁ、と薬研は仕方ないと息を吐いた。
やはり兄弟か……考えていた事をあっさりと見透かされてしまった。
「……では、診察台へどうぞ? 患者さん」
部屋の隅に置かれていた黒い革張りの診察台へと促され、鯰尾は素直にそちらへと歩いていくと、身軽な動きで上に仰向けに寝そべった。
薬研から見て左側に鯰尾の頭が来る形で、寝台の奥は部屋の壁に密着していた。
そして薬研が、診察台の周りの空間を隔離する為に設置されていたカーテンを引いて周囲から自分達を隠す。
元々部屋への障子なども閉められているので外部から見える事はないのだが、万一誰かが踏み入って来た時の予防措置だった。
「へぇ、こういう風に診察してるんだ」
「まぁ殆どは直接手入れ部屋行きだけどな……さて、じゃあ患部を見せてもらおうか」
「ふふ……はぁい」
薬研の手も手伝いに加わり、かちゃ…かちゃ…と腰のベルトを緩めた後、鯰尾が腰を浮かせてそのまま下着ごと下の服を取り去ると、その股間には既に勃ち上がりつつある男性の証が存在を主張していた。
「ああ……こりゃ結構酷いな」
生理現象としては普通の光景なのだが、敢えて薬研は相手のお医者さんごっこのノリに合わせるようにそう診断を下しつつ、相手のものを右手で軽く握り込んだ。
「ん、ああっ……センセ…」
「毒が溜まっているから、しっかりと絞り出さないといけない……処置を始めるぞ」
ほんの少しだけ力を込めてしゅっしゅっと茎を上下に扱き始めると、見る見るうちにその傾きが急になってきて、先端からは透明な液体がぷくりと半球を作り出してきた。
「毒が出てきたな…」
呟いた薬研の前で鯰尾は甘い声を幾度も上げながら腰を揺らし、右手を伸ばして薬研の白衣を掴んで引っ張った。
「あっ!……ああんっ、ああんっ! や、げんセンセ…、胸、も…胸も苦しい…です」
「胸…ああ、そっちにまで毒が回ったのか…?」
くす、と笑みを零して、薬研は相手の促しに乗る形でそう言いながらシャツの前のボタンを起用に外していくと、全部外したところで前を大きくはだけさせた。
健康的で瑞々しい肌質が明らかな、滑らかな胸が現れ、その左右には小さな蕾が既に膨らんだ状態で息づいていた。
「ああ、こっちも随分と腫れてるな。毒を吸い出してやらないと…」
ちゅう…っ
寝台脇に立ったまま腰を屈め、薬研は相手の肉棒を右手で慰めながら、唇でその右の乳首をきつく吸い立てた。
「ひああんっ…!」
「キツイだろうが我慢しろよ…ちゃんと治療しないといけないんだから」
まるで正規の治療を行っている様にきつく患者に言い渡す態で鯰尾に注意すると、薬研は続けて左の蕾に口を移して同じくちゅうっと吸いついた。
そこから走る甘い衝撃にびくびくと背を反らして喘ぎながら、鯰尾もまた医師に身を委ねる患者として振舞う。
「は……は、い…っ…が、まんします…しますから、もっと…強く、して…っ」
「………いつもこれぐらい素直だといいんだけどな」
くすりと笑ってつい本音を零した薬研は、相手の希望に沿うべくそれからも一層激しさを増す形で二つの紅い蕾を責め立てた。
固く尖った乳首は吸われ、舌で転がされ、歯で軽く噛まれたりとあらゆる刺激を与えられ、その度に更に頑なになってゆく。
「ん、ふあぁんっ…! ああ、センセ…きもちい……」
ぴくっぴくんっと身体を震わせて反応する鯰尾の胸の蕾が敏感になるにつれて、そこから快感が伝播した様に、下の昂ぶりも一層大きく固く育っていた。
胸への愛撫と同時に、薬研はそちらの茎も手放さずに引き続き上下に扱き上げていたが、今や手を離しても立派に自立出来る程に固く角度を持ち、先端からは先走りの雫を溢れさせ、薬研の手をすっかり濡らしてしまっていた。
最早、後は内で燻っている欲望の証を放つだけ、というところまで来ており、その時を今か今かと待ちかねている様に、鯰尾の腰が無意識の内に揺れていた。
「ああ、こりゃあしぶといな…手だけじゃなくてしっかり吸い出した方がいい」
相手の限界を察した薬研が、その胸から顔を離してそのまま股間へと移動させる。
「あ…っ」
彼の動きに、これから起こるだろう事を予測した鯰尾の胸が期待で早鐘を打つ。
そんな鯰尾の見ている中で、薬研は相手の怒張したものを改めて手で支え持ちながら躊躇いなく口をその先端に寄せると、ちろっと舌を覗かせて見せつける様に舐め上げた。
「ああ、んっ! センセ…いいっ!」
「ほら、動かないで…じっとしてな」
ぺちゃ、ぺちゃ、と頭を動かし様々な角度から鯰尾の分身をひとしきり舐め回すと、薬研はそのままくぷりと相手の雁首までを口腔内へと含み入れた。
「は、あ、あぁぁ~~」
溜息と共に甘い声が漏れ、ふるっと鯰尾が艶やかな髪を揺らす。
「ああっ…センセ……もっと、吸ってぇ…」
「熱いな……ほら、いつでも出していいんだぜ?」
追い立てる様に、薬研がぬぷぷ…と喉の奥まで深く相手を呑み込み、そのまま激しく上下に頭を動かして口腔内の粘膜で鯰尾の楔の表面を擦り始めた。
それだけではなく、きゅうっと軽く陰圧をかけて相手の射精も促してやると、面白い程に鯰尾の腰が激しく揺れて声が上がった。
「んあ、あっ! や、げんセンセッ! で、るっ! 毒、がっ…いっぱい出るぅっ!!」
引き攣った悲鳴にも似た嬌声が上がり、鯰尾の両脚がぴんとつま先まで突っ張った。
「っ……」
自らの口腔内で鯰尾の怒張がびくっと激しく痙攣し、その先端が膨らんだのを感じた薬研が、引き金を引くべくより一層きつく陰圧を掛けると同時に雁を甘噛みすると、向こうはあっけなく絶頂を迎えた。
「あああんっ! センセッ、センセェ~~~ッ!」
瞳を潤ませながら鯰尾が夢中で相手を呼び、腰を上へと突き出して硬直する。
瞬間…
「ん…っ」
どくんっどくんっと激しい勢いで、薬研の口中に白い精の証が幾度も注がれた。
二人が毒と揶揄したものだが、薬研はそれらをそのままこくこくと飲み下し、鯰尾の射出が全て終わったところでぬぷ…と唇を離した。
その唇と相手の先端の間に白い糸の橋が架かり…あっけなく切れる。
「随分と溜まってたな……派手にイッちまって、そんなに良かったか?」
ぺろっと、相手の体液が付着した己の右掌を舐め上げて薬研が笑う。
その欲情の彩が秘められた瞳が見つめる先では、達したばかりの鯰尾がまだ息を荒くしたまましどけなく身体を横たえていたが、やがてゆるりと動き出し、薬研へと視線を向けてくる。
「センセ……奥も、診察して……」
「え…?」
思わず聞き返す薬研に、鯰尾は己の射精したばかりの雄…の、その下の奥に息づく秘蕾へと指を這わせる様を見せつける。
「ココ……気持ち好く、して…」
相手の意図する事を察した薬研が、困った様に首を傾げた。
「……お前は、まだそこは…」
「うん……経験ない、けど……薬研は嫌? 初めての男、面倒くさい?」
「そんな訳じゃないが……」
今まではずっとあの兄を抱く側だったのに、と訝しんだ相手に、鯰尾はだって…と頬を染めながら答えた。
「…興味湧くよ……あんなにいち兄が気持ちよさそうにしてるの見たらさ、どんな感じなんだろうって……俺だって、相手が誰でもいいって訳じゃなくて……薬研なら…」
自分も含めての三人での交わりは、毎夜毎夜めくるめく淫欲の世界。
鯰尾は初めての相手が一期一振であり、彼によって雄として征服する悦びを教えてもらったのだが……毎夜、その兄が犯されながら悦びの声を上げているのを目の当たりにしたら、その快感は如何程のものなのかと気にならない筈がない。
しかも鯰尾は人間として該当する年齢からいっても性欲が旺盛な時期でもあり、更に好奇心旺盛な性格もあって、後蕾を弄られる事に然程強い拒否感は抱かなかった。
無論、相手が誰でも良いという節操無しでもなく、やはり身体を許すなら憎からず想う相手の方が良いに決まっている。
鯰尾にとっては、それはやはり兄弟刀の一期一振や薬研藤四郎だった。
「そりゃ……光栄だが…」
まだ相手の初めてを貰う事に躊躇いがあるのか言葉を濁している薬研に、上半身を起こした鯰尾がそっと手を伸ばして彼の股間のものを服越しに触れた。
そこは既に立派なテントを張っており、中のものが窮屈そうに己の存在を示していた。
「……っ!」
手で触れると、布越しでも明らかに分かる固い感触が返ってくる。
「ほら……薬研だってもうガチガチじゃない……俺のを弄ったから、でしょ?」
「…まぁ、な…」
渋々ながら認めた薬研に、くすりと笑った鯰尾が抱き着いて耳元でひそりと囁いた。
「ねぇ薬研センセ……俺のお尻に…センセのお注射、ちょうだい…?」
その台詞の後で誘う様にかぷ、と耳朶を噛まれた薬研は、やりやがったな…と言うかの様に、据わった目で相手を至近距離から見つめた。
「…好すぎて意識が飛んでも知らないぜ」
「凄い自信……流石、いつもいち兄を善がらせてるだけあるね……いいよ」
寄せられる唇が己のそれを塞ぐ直前に、鯰尾は薬研に甘くねだった。
「俺も……あんな風にしちゃって…」
くちゅ……っ
塞がれた唇同士の間で、互いの舌が絡み合う音が響く。
「ん……っ」
頭の位置を動かしながら貪るように薬研の舌を絡め捕ろうとする鯰尾が甘い声を鼻から漏らしている傍ら、相手の男は視線を横に逸らし、その先にあった小物台へと手を伸ばした。
寝台の側に置かれていたその上には、緊急時に使う薬品や、使う頻度が多い一時的処置に必要な物品が整頓された状態で乗っており、薬研はその中から液体が入っている瓶を一つ取り上げると、器用に片手で上蓋を外した。
「…ほら、足を抱えて…そう、そのまま」
促し、鯰尾を再び寝台に横たえると、薬研はそのまま相手の両腕を掴んで相手が自ら己の両脚を抱えて秘部を晒す様に誘導した。
「あ、あっ…! この格好…っ、恥ずかしい穴まで見えちゃうっ……!」
はーっ、はーっと激しい息遣いをしながら、自らの格好を認識した鯰尾が羞恥に声を上げた、が、その姿勢を己から解くことはしなかった。
混乱して、自身で姿勢を崩すまで意識を向ける事が出来なかったのか…恥ずかしくても、相手に隷属する快感の中にあったのか……視姦される悦びを感じていたのかは分からない。
「こら動くな。しっかり患部を診ないと治療出来ないから、そのままだ」
「あ、あ……は、い……センセ…」
再び始まるお医者さんごっこ……その従順な患者を演じるべく、鯰尾は自分自身でその膝裏を抱えて、相手の望むように姿勢を構えて次の『処置』を待ち望んだ。
「センセ……はやく……なおして…」
「患部が固いままだと、注射しても薬液が浸み込んでいかないからな……先ずはマッサージで柔らかくしていくぞ」
言いながら、薬研は先程手に取って蓋を開けた薬瓶の中に中指と人差し指の二本を突っ込んで浸すと、そのまま引き抜いて相手の秘蕾へと宛てがった。
「あ…なに……濡れ…」
「丁子油だ。医を修める以上、どんなに激しくしても傷つけるなんて以ての外だからな…そこは心配するな」
「!……ほんと、憎らしいくらいイイ男なんだから…」
「今更気付いたか」
くっくと面白そうに笑ってから、薬研が気を取り直してそっと指先に力を込めてゆっくりと、先ずは人差し指だけを蕾へと埋め込んでいった。
「あ……っ」
初めての経験…そこに異物を受け入れる感覚に、やはり緊張は完全に打ち消せるものではなく、微かに鯰尾が眉を顰めて身体に力を入れた。
「まぁ最初だからな…緊張するなって言う方が無理か…」
仕方がない、と言いながらそれを責める事もなく、薬研はゆっくりゆっくりと時間をかけて解す様に、埋めた指先で蕾の周囲の粘膜を刺激してゆく。
それはまるで泣く子をあやすように、徐々に徐々にと………
「ん……あ、ん……」
やがて、解れた蕾の粘膜からこれまで感じた事のない感覚が生じてくる。
じんわりと、異物感しか感じていなかった箇所から湧き上がって来る快感は、初めての鯰尾を混乱させるのには十分だった。
「ああ……なに…ヘンな感じ……」
(抵抗が少なくなってきたな……さて…)
くちっくちっと潤滑油の力も借りた指先は淫らな音をたてながら鯰尾の蕾を思う儘に乱し、固かったその場所が柔らかく息づいてくると、薬研は新たな目的を持って指を動かし始めた。
「んっ…あ、ああんっ……! あっ、はぁ…」
「痛いか?」
「う、ううんっ……ん、あっ!」
尋ねながら、ふと薬研が差し入れた指先の腹が奥の粘膜の一か所を擦った瞬間、びくっと鯰尾の身体が跳ねると同時に声が上がった。
悲鳴…というよりも嬌声だ。
「ひ、あぁぁぁっ!!」
「…成程…此処か」
見つけた…とばかりに幾度も同じ場所を擦り上げると、鯰尾の歓喜の悲鳴が繰り返し上がり、同時に一度は萎えていた彼の雄の証が再び勃ち上がってきた。
「ああああ! センセ…ッ…そこっ! もっともっと擦って、ぐりぐりしてぇっ!」
「当たりだな…」
粘膜の向こうに位置しているだろう男性の性感帯を探り当てた薬研は、密かに唇を歪めて、指を蠢かせ続けつつ、そっと唇を蕾近くへと這わせる。
そして蕾と二つの宝珠の間の部分…『蟻の戸渡り』に舌を触れさせ、固く尖らせたそれで幾度もその両者の間を往復させると、びくびくと鯰尾の雄が跳ねて透明な甘露を迸らせ、彼自身の胸を濡らした。
「あっあああぁぁ~~~っ!! っひ…! い、ひぃっ!! すご、いっ!! センセ!! それっ、くるっ! オ〇ン〇にジンジンきちゃうっ!! もっと、もっとしてぇっ!!」
「初めてなのに凄い反応だな……俺としては嬉しいが」
舌と指での二重の性感帯への責苦を与えながら、薬研はこっそりと蕾を犯す指を中指も加えて二本…そして続け様に薬指を併せて三本にしていたのだが、それにも気付かない程に鯰尾は快感に啼き叫び、己の雄を打ち震わせていた。
「や、げんセンセッ! もっ、いいから…! 指じゃ、たりないからぁ…っ! お注射ぁ! オ○ン○注射でズポズポしてぇ!」
「お前……何処でそんなの覚えて来るんだよ」
いやらし過ぎるだろ…と、笑いながら、薬研は一度相手の身体をその脇に立つ自分の方へ向け、寝台の短軸に平行になるようにした。
そして相手が膝裏を抱えたM字開脚に近い姿で背中を壁に付けた状態にして、脚の間に自分の身体を割り入れると、素早くベルトとホックを外して下着ごと服を下ろして怒張を露わにする。
「ああ、センセ…早く…お注射、はやくぅ…!」
「これは…もう病巣の一番奥に注射しないと手遅れになっちまうな…」
ずぐ……っ
「ふ、あぁぁっ…!挿入ってくるぅ……薬研センセのオ○ン○ォ……!」
「く…っ、締まる…」
ずぷぷ…と肉楔を埋めていくと、その周囲を淫肉がやわやわと包み込んで締め付けてくるのを、薬研は腰を進めて払い退けつつ奥へ奥へと侵入を果たす。
「はぁぁ、すご、い……お腹の内……薬研センセでいっぱい……」
「ああ…ほら、ちゃんと根元まで挿入ったぜ、お注射…」
ずちゅ…っと薬研が相手の股間に自らの腰を強く押し付けると、二人の身体の間で勃ち上がっていた鯰尾の雄の先端から、ぴゅるっと白い軌跡が宙を舞った。
「んああぁっ! あっ……今、ちょっとだけ…イッちゃった…」
「おやおや、堪え性のない患者だな………治療の本番はこれからだぜ?」
ククッと笑いながら鯰尾の腰を両手で掴んだ薬研は、最初はゆっくりと小刻みに内で己を蠢かせ、その粘膜を擦り始める。
圧倒的な存在感を誇る肉棒の圧迫感……そこから生み出され始めた小さな感覚に、徐々に内が慣らされ始めていくと、ただ締め付けるだけだった肉壁がほんの少しずつ緩んでうねり始めた。
「ん…あ、はぁ……っん」
「馴染んできたな……動くぞ」
僅かな動きだった腰の律動が徐々にしっかりとしたそれになり、ずちゅ、ずちゅ、と水音が耳を犯し始めると、よりしっかりと薬研の分身が己の内を強く擦り、奥を突いて来るのが分かった。
「は…っ…あ……あん…あっ…なか…なんか、ヘン…」
ひくんと喉を反らして鯰尾が体内で生じてきた異変を訴えたが、そこに苦痛の色が無いことを察した薬研は、寧ろ腰の動きを速めて相手の身体を更に追い詰めていく。
「少し、速めるぞ?」
僅かな振幅だった腰の動きは徐々に大きくなり、いよいよ根元から雁まで最大限の幅で内を犯しだすと、小さかった鯰尾の呻きが徐々に大きさを増していき、肉壺の動きも明らかに薬研の分身を奥に引き込むような動きをし始めた。
「好くなってきたんじゃないか…?」
「あああ……ああっ! なんか、擦れるの、いいっ! もっと激しく…お注射してぇ!」
問いに素直に答えながら、鯰尾は開いていた足を動かして薬研の腰に絡みつかせ、ぐいと自身に寄せるように力を込めた。
同時に、内の薬研の肉棒を奥へと引き込み、締め付ける力も一層強くなり、その樹液を搾りだそうとするかの如く蠢き始める。
「奥…もっと奥まで突いて…! オ〇ン〇で犯されるの、気持ちいい…っ!!」
「お前……コッチも素質あるな…」
薬研の笑みを含んだ呟きを聞いて、鯰尾はそこでこれまでは自分が犯す立場であった事を思い出していた。
一期一振…兄を毎夜抱いて、好い声で啼かせていたこと…幾度もその身体の内へ精を放ち、快楽へと堕としていたこと……
しかし今は全く逆の立場で、薬研から兄と同じ様に犯されている……
(ああ、でも……こんなに気持ちいいの、逆らえない…っ! いち兄があんなに乱れてたのも…わかる……!)
思い出す兄の淫らな表情は、おそらく今自分が浮かべているそれとそう変わりないだろう…
こんな快感を覚えてしまったら…もう、戻れない……
「や、げんセンセ……もっ、イ、かせて…っ…」
「ああ…俺もそろそろイキたいからな…」
今でも快楽に呑まれつつあるのに、これが頂点に達してしまったらどうなってしまうのか…不安すら感じてしまったが、それ以上に心と身体が求めてしまっていた。
そんな鯰尾の望みに答え、薬研は腰の動きを一気に速めていき、二人ともが共に絶頂へと最速で駆け上がっていった。
「ああ……イイぜ、鯰尾…っ」
「は、ああああっ!! 一番、奥っ、ゴリゴリされて…っ、好いっ、イイよぉ!! センセ、薬研センセ…ッ、達って、一緒にイッてえぇぇぇ!!」
先に達したのは鯰尾。
びくんびくんと派手に全身を震わせ、開いた口から舌を覗かせて喘ぐ姿のままに、その分身から幾度も精の飛沫を放った。
それと同時に一際きつく強く薬研のものを締め付け、彼の射精を促し、内へとその欲望を吐き出させる事に成功した。
「ん…っ…すごっ…射精る…!」
予想以上の締め付けだったのか、薬研も自らの射精の量に驚いていた様子だったが、そのまま腰を最奥に打ち付けて全てをそこへ注ぎ込む。
「ふあぁぁぁっ!! あっつい…!! お注射の中…あああ、どぴゅどぴゅって出てるぅ…」
初めて雄の射精を身体の奥で受け止めた鯰尾は、それが終わるまでぴんと身体に力を入れて背を反らせていたが、全てが終わって暫くするとぐったりと脱力して寝台に身体を捩る形で横たわった。
「…なかなかのイキっぷりだったな」
自身にもうっすらと汗を滲ませていた薬研がゆっくりと腰を引き、ぬぷりと相手の蕾から萎えた己を引き抜くと、同時にとぷっと白い樹液が零れ落ちた。
「あん…っ」
その感覚に鯰尾が声を上げる脇で、薬研は本来であれば病人を診察する筈の場所を自分の体液で汚してしまった事を今更ながら気にしている様子だった。
「ああ、ぐちょぐちょだ…後でちゃんと清潔にしておかないと…」
「………薬研」
脱力していた身体をゆるゆると起こすと、鯰尾が薬研にするりと手を伸ばして抱き着いた。
「!……おい?」
「…薬研、センセ…もう一本……お注射打って」
「!?」
おかわりを要求された薬研は、相手を拒む様子こそなかったが、すぐに反応を返す事もなく冷静に相手を見つめていた。
「……初めてなんだろ? 身体、大丈夫なのか?」
「抱いた薬研が一番分かってるでしょ…? 大事にしてくれたから、気持ち好いだけだったよ……それに薬研も、一回だけじゃ治まらないんじゃない?」
「………ったく、兄弟だから誤魔化しがきかないってのも厄介だな…」
その通りの事だと男ががしがしと頭を掻くと、対する鯰尾が言質を取ったとばかりに一層肌を密着させた。
「毎日、あんなに射精してたもんね………でも」
「………っ」
さわりと鯰尾が片手を下へと伸ばして薬研の分身を軽く握り込み、そうされた相手は小さく息を呑んだ。
一度は萎えていたその器官は、鯰尾に握られたからかそれともそれより前からか、再びその固さを増しつつあった…が、まだ完全に勃ち上がったという訳でもなかった。
「……まだ、大きくなるよね?」
「…お前が好くしてくれたらな?」
煽るように言った相手に、鯰尾がくすっと笑って頷いた。
「もちろん…」
そう答えると、鯰尾は寝台の脇、薬研の前に立つとそのまま腰を屈めて相手と向き合い、頭の位置にきた彼の分身を手で支えてみせる。
「直ぐに元気にしてあげる……ふぅ、ん…」
くちゅ…ちゅぷっ…
支えた肉棒に唇を寄せて躊躇いなく半ばまでを呑みこむと、鯰尾は口腔内で舌を躍らせ、水音をたてながら相手を愛撫し始めた。
つい先日までは、兄の痴態を見るまではこういう性的な行為そのものに疎かった筈の鯰尾だったが、今はもう何の躊躇もなく、口へと雄を迎える事が出来るようになっていた。
「ん…っ…えっちな涎が出てきた…」
唾液の他にも、薬研の先端から滲んできた先走りが鯰尾の口中を潤して、彼は何度も先端を舌で刺激してそれを舐め取ってゆく。
「すごい、薬研……ううん、薬研センセ……もう、こんなにガチガチ…」
ぬぷっと相手を口から一度離すと、先程までは下を向いていた頭が立派に上へと持ち上がり、その茎も明らかに太さと大きさを増していた。
自分の口淫で育てた証を示された様で、鯰尾はうっとりとした表情で横からそれの根元へと舌を這わせ、まるでハーモニカを吹くようにぬるる…とそのまま舌を先端へと滑らせてゆく。
そして先端に達したら再び根元へと同じ様に滑らせ、それを幾度も繰り返してゆくと、びくびくと応えるように相手が震えるのが唇越しに伝わった。
「あ……んっ…」
相手の猛々しさを直に感じ取り、ぶるっと鯰尾が身を震わせる。
(欲しい………コレ……)
育ち切った相手のこの丈夫(ますらお)を、また、己の身体の奥の奥まで激しく突き込んでもらいたい……
突いて、抉って…滅茶苦茶にしてほしい……獣みたいに……
「薬研センセェ……俺、もう…だめ……」
見せつけるように薬研の茎にしゃぶりつき、こり…と甘噛みしながら鯰尾がねだった。
「センセのコレ……ちょうだい…っ」
「っ……おねだりのやり方は合格だな」
肉棒がはち切れそうな程に膨らんだ感覚に耐えながら、薬研ははぁ、と息を漏らして笑い、鯰尾に尋ねた。
「いいぜ、挿れてやる…どうやって犯してほしい?」
「ん……うんっ…」
急くように立ち上がり、鯰尾は寝台の縁に両手を着く形で薬研に背中を見せ、相手を振り返った。
「後ろから……お注射、挿して…っ」
体勢から味わえる快感がどうの、という話ではなく、本当に一刻を争う様に相手を欲していたのだろう。
準備など不要で、すぐに受け入れる事が出来る姿勢を取った鯰尾に、薬研は苦笑しながらもその望みを叶えてやるべく腰を密着させた。
「続けざまにお注射二本か……なかなか重症だな、しっかり奥まで挿してやらねぇと」
ずんっ…!!
「ひぁうっ!!」
勢いよく、薬研の『注射』が、下から相手の腹部に斜め上に向かって一気に突き入れられた。
腸壁を擦られ、その過程で壁の向こうに存在している男の弱点も強く刺激される形になって、鯰尾の悲鳴と呼吸が一瞬止まる。
脳天まで突き抜けた快感のあまりに、脳髄が呼吸のやり方を忘れてしまったかの様だった。
「ひっ……いっ…ひんっ…」
ぶるぶると背中を震わせ、食いしばった歯列の脇から溢れ出た涎が端から零れ、ぽたぽたと体幹へと伝ってゆく。
「さっきまでも呑みこんでいたからな……慣らさなくてもずっぽり根元まで挿入ったぜ? 好いか?」
尋ねても、鯰尾は顔を上へと向け、はく…と口を開閉させるのみで言葉にならない。
それでも彼の身体の内はしっかりと薬研を咥え込んでおり、離そうとしないので、明らかに快感を感じているのは間違いなかった。
「はは……好すぎて声も出ないってか? それはそれで光栄…」
「……や、げん…」
丁度、快感の波をやり過ごしたのか、ようやく鯰尾の口からまともな言葉が紡がれる。
「……センセ……お注射…で…激しく…内、擦って…」
「鯰尾……っ」
艶を増した鯰尾の瞳に見つめられた薬研は、相手の望むままに、熱に浮かされた様に激しく腰を律動させた。
腰と腰が打ち付け合う小気味良い音と、その奥から同じ調子で響いてくる濡れた音が二人の耳を犯していく。
「っ…ふ……くっ」
「あっ…ああっ…! つよ、く……もっと…!」
そして、鯰尾の声に押され、一際強く薬研が腰を打ち付けた時…
「あ……っ!?」
不意に己の分身に触れてきた固い感触に、鯰尾がひくんと身体を止めてそちらへと視線を遣った。
二度目の挿入に反応を示し、勃ち上がりかけていた分身が、その先端を寝台の縁に偶然にも擦ったのだった。
(あ…固くて、擦ると自分でやるよりドキドキする……)
一度だけの経験で終わらせるには惜しい快感に、浅ましいと思いながらも、薬研に後蕾を貫かれながら己も腰を動かして肉棒が寝台に擦り付けられるように持っていく。
最初は先端で、つんっつんっと縁を軽く突く様な動作だったのが、やがて物足りなくなったのか、縁の角に雁首の下の部分を押し付けそのままずるぅっと裏筋を根元まで擦るそれへと移っていった。
(んんっ! これっいいっっ! 角っこでオ○ン○マッサージ、すごく効いちゃうっ!)
ずりゅっずりゅっと往復させながら分身を慰めていると、程なく彼が不自然に腰を振っているのと妙なタイミングの喘ぎ声に、肩口から覗き込んだ薬研が相手の秘密の遊戯に気が付いた。
後ろではしっかりとこちらの楔…お注射を咥え込んでおきながら、前では自ら刺激を求めて寝台を使って自慰に耽っている淫らな兄弟に、薬研は一気に性欲を高めさせられた。
背後から両手を前に回して両の乳首をきゅうっと限界まで引っ張り、今までより更に激しく速く、ずんずんと奥の奥までを突き上げ始める。
「犯されながら一人遊びするって、どれだけ淫乱なんだよっ!」
「あっあっ! だってぇ、裏スジ、ゴリゴリ擦られるのっ、気持ち好いんだもんっ! ああんっ、つよいぃっ!」
ぴゅっぴゅっと先端から小さく先走りを吹き上げなから、乳首への刺激に連動する形で鯰尾の肉壁がより強く薬研の注射を締め付ける。
その刺激をやり過ごそうと周囲の景色を見て気を逸らせようとした薬研が、ふと、丁子油を乗せていた小物台の上に、薬草を吊るす際に使っていた木製の洗濯バサミに気付いた。
すぐに何かを思い付いたように彼はにっと笑うと、それを二つ取り上げて、先ず一つで鯰尾の固く膨らんだ右胸の蕾をそれで挟んだ。
「っひぃいっん!」
きゅうぅっ…!
千切る程の力ではないが、物を吊り下げる程度の十分な力を持つ道具に挟まれ、赤い蕾はぺたりと平坦に潰された形に変わった……と同時に、薬研を締め付ける力が更に強まった。
「反対にも付けてやるぜ……そら」
左にも同じ様に洗濯バサミを挟み込み、鯰尾は両胸に創られた前衛的なオブジェによってもたらされる痺れ、痛み…そこから湧き上がって来る奇妙な感覚に悶えた。
二つの道具の所為で、相手を締め上げる力が強まった事が彼の内から生じる快感をも強めていた。
「あっあっ…! ヘン…これ、ヘンだよぉっ、乳首っ、い、たいのに…っ!」
鯰尾の啼き声を愉しみながら、薬研はずちゅずちゅと激しく相手の肉壺を掻き回した。
そしてあと一押し、というところで、
「痛いけど好きなんだろ? 取るな、とも言ってないのに、付けたままにしてるんだからさ…」
囁きながら、両方の洗濯バサミの力点が掛かっている所を指で強く押し、バチンッと弾かれる形でそれを外した。
「っああぁ〜〜〜っ!!」
一際強い痛みが引き金になり、鯰尾は絶頂へと至り、ほぼ同時に薬研も追う形で己を解放する。
「あああ〜!! オ○ン○ッ! オ○ン○注射すごいいぃ!! イクッイクッ!! 俺のオ○ン○から、いっぱい、どくがっ、びゅくびゅく出てるぅぅっ!!」
「っく…うっ」
息を詰めた薬研の、どくんっどくっと内に打ち付けられた精の奔流を受け止め、鯰尾が恍惚とした表情で身を震わせた。
「ああ…薬研センセの熱いおくすり……奥に浸み込んでくる……」
「はは………本当に全部搾り取っちまったか」
けれど、また後で寝所に移ったら移ったで、二人で激しく睦み合う事になるのだろう、と思いながら、薬研は己の分身をぬるっと引き抜いて脱力した鯰尾の身体を抱き留める。
「………いち兄が帰ってくるのが楽しみだな」
雄に犯される悦びを知ったお前が兄を犯しながら俺に犯される……そんな夢の様なひとときを早く過ごしたい………
今宵の二人での夜の営みも楽しみではあるが。
「ふふ…」
そんな遠くない未来の事を思いながら、薬研は鯰尾の温かな体温を感じながら密やかに笑っていた。
そして、数日後、無事に戻ってきた一期一振から、彼らの夜の淫らな宴に新たな参加者が増えるかもしれないという話を聞くことになるのである………